15-ちびっ子だった
「よみが、あめーな」
「ベル、偉そうに言うのではない。黙ってなさい」
「あい」
また親父に叱られちゃった。もう果物はいいかな。ふわっふわなパンケーキとか食べたいぞ。ないのかな? ないなら作るぞ。
「おじょう、パンケーキたべたくね?」
「まあ! ひちゃちぶりに、ベルのパンケーキをたべたいわ!」
おし、作ってきてやるよ!
「ベル、私も欲しい」
「あら、私も食べたいわ。ベルの作るパンケーキはふわふわで美味しいもの」
「ベル、僕もだ」
おやおや、俺って人気者だ。違うか? パンケーキが人気なだけなのか?
「ベル、お前ちびっ子になってることを忘れてないか?」
「あ……ちょうらったぁッ!」
親父に言われて、ガビーン! とショックを受ける。この小さな手でどうやってフライパンを握るんんだよ。どうやって、パコーンとひっくり返すんだよ。
このひ弱な腕で、混ぜ混ぜできるのか? いや! なんでも気合いだ!
「よち、がんばるじょ!」
「ベル、料理長に手伝ってもらいなさい」
「あい、だんなちゃま」
そうだね、それがいいや。と、席を立った時だ。
「ベル、待ちなさい」
フラン爺に引き止められた。そして、おもむろに抱きしめられちゃった。
おいおい、どうした? ぶ厚い筋肉が暑苦しいぞ。どうせ抱きしめられるなら、お嬢がいいぞ。
「ベル、感謝する! ネネを、皆を助けてくれてありがとう!」
「ああ、そうだな。まずは礼を言わなければいけなかった。ベル、感謝する」
「本当だわ。ベル、ありがとう」
「仕方ないな、ネネを助けてくれたのだからな。ありがとう」
「ベル、あたちをまもろうと、ちてくれて、ありがと」
えっとぉ、ちょっと俺、照れちゃうんだけど。
「きにちゅんな」
フラン爺にふんわりと抱きしめられ、俺は照れてその腕の中に顔を埋めた。良かった。皆そう思ってくれるんだ。
俺の一存で時を戻した。それが最善だと、あの時は思ったけど。巻き戻り過ぎた感があるから、ちょっと心配だったんだ。
「我家はベルに救われた。これからもネネを守ってやってくれ」
「もちろんだ。おれのヨメにちゅるからな!」
「ワッハッハッハ! 嫁か!? まあ頑張りなさいッ!」
そう言ってフラン爺は俺の背中をバシコーンと叩いた。いや、普通に痛いから。俺って今ちびっ子なんだぞ。手加減してくれよ。
さて、俺はパンケーキを作りに厨房へ行こう。久しぶりだな。前の時もよく色々作っていた。
奴隷商に捕まった時に前世を思い出しちゃったからさ、食べたくなるんだ。前世にあったアレコレを。だから自分で作ったんだ。
俺って、料理の才能があるとは思わなかった。前世で作っていたのか、何歳で死んだのか全然覚えてないのだけど。
やっぱ才能ってあふれ出るものなんだよ。ふふふん。
上機嫌でトコトコと厨房へ向かっていると、親父が追いかけてきた。
「ベル、待ちなさい。お前まだ邸の使用人に紹介してないだろう」
「あ、ちょうらった」
つい勝手知ったる家だから、何も考えていなかった。
記憶のない使用人たちにしてみれば、お邸の中を見慣れないちびっ子が歩いていると思われる。
どこのちびっ子だ? てさ。まずは料理長に紹介してもらった。
「料理長、私の息子になったベルだ。料理を作りたいそうなんだ。よろしく頼むよ」
「ええー! ゲイブさんの息子さんですか!? さっきラッパを吹いて走り回っていた」
「ああ、バカ息子だ」
「ばかじゃねー」
本当に口が悪いぞ。親父、素直になろうな。
「ベル、迷惑かけるんじゃないぞ」
「めいわくなんて、かけねー」
「何言ってるんだ、まだちびっ子なんだぞ」
おっと、それをすぐに忘れてしまう。だって久しぶりのちびっ子だ。しかも今はまだガリガリで、体力も戻ってない。
「おやじ、ちょっと、ふらふらちゅるじょ」
「だから言っただろう」
「どうした? ちゃんと食べてんのか? ガリガリじゃないか」
「つい3日前まで奴隷商にいて、私が助け出してからも寝込んでいたんだ」
「奴隷ですか!? こんな小さな子になんてことを!」
え、3日前? てことは俺は3日も気が付かなかったのか? マジで? 3日も? え? 今更か?
「おやじ、おれ、みっかもねてたのか?」
「そうだぞ。だからまだ体力がないだろうよ」
「あー、ちょうがねー」
厨房に置いてある丸い椅子に座ろうとするけど届かない。こう、足をあげてな、座ろうとしているのだけども。
「お前は何をしているんだ」
呆れながら親父が座らせてくれる。悪いね、まだちびっ子だから届かないんだ。
さて、料理長。俺は偉そうに短い人差し指を顔の横で立てて言った。
「これから、ふわっふわなパンケーキをちゅくる」
「なんだって? パン……なんだって?」
「だから、パンケーキら」
料理長が疑いの目をしている。まあ、そりゃそうだろう。こんなちびっ子が、聞いたことのない料理を言っているのだから。
「ざいりょうあるか?」
「こら、お前偉そうなんだ」
え、そうか? これが普通なんだからいいじゃないか。
「アハハハ、ゲイブさん大丈夫ですよ。よく分からないですけど、一緒に作りますよ」
「すまないな、頼む」
料理長に紹介して、親父はさっさと戻って行った。
「ベル、そのパンなんとかって本当に作れるのか?」
「おれは、ちゅくれねー。だって、まだちびだから」
「アハハハ、だよな。俺が代わりに作るから、してほしいことを言ってくれ」
「おー、たのんら」
料理長とは時を戻す前の時にも、仲良くしていたんだ。
俺がしょっちゅう厨房を使うから自然に仲良くなった。料理長が俺の作るものに興味を持ったのもある。
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今日ももう1話投稿します〜!




