12ー意味不明
「はぁ~……お前はどうしてそう馬鹿なんだ」
「おやじ、ばかばかいうな」
「馬鹿なんだから仕方ないだろうが。少し黙ってろ」
「あい」
仕方ない、ここは大人しくしていよう。だってお嬢に嫌われたくないもの。
お嬢の涙で濡れた桜色のほっぺを、優しく拭いてあげたい。なんならそこにチューしたい。
いやいや、ここは我慢だ。今そんなことをしたら、それこそ親父に本気で殴られるぞ。
身体が小っさくなっちゃって、自制心が利かなくなっちゃったか? いや、俺はお利口なちびっ子なのだ。
黙ってソファーに座りなおす。両手をお膝の上に揃えて置いて、足も揃えてお行儀よく座る。
そんな俺を親父が呆れた目で見てくるけど、ここは大人しくしていよう。
「話を戻そう。王妃に目を付けられないようにするにはだ」
「そうですわね、とにかく一線から引きましょう」
「ああ、そうだな」
「ですが、父上、母上。公爵家として、それは大丈夫なのですか?」
「ネネが婚約者に選ばれなかったら、侯爵家から何人かの候補者が選ばれるだろう。今四家には年齢の釣り合う令嬢はいないからな」
「ああ、そうですね。男の子ばかりですね」
「そこで、ブレイズ。お前もだ」
「僕が何ですか?」
「第1王子に仲良くしていただいているだろうが」
「あら、それは大丈夫じゃありませんか?」
「そう思うか?」
「ええ、第1王子ですから。むしろ第1王子と仲良くしておく方が、良いかも知れませんわね」
ほうほう、奥様の腹黒さんの部分がそう思うらしい。で? どうしてかな?
「馬鹿息子は黙って聞いてろ」
「おやじ、わかんねーじょ」
「だからだな、第1王子と仲良くしていれば第1王子派だと思われるだろう」
「ちょれで?」
「第1王子派だから、第2王子の後ろ盾にはなってもらえないだろうと考えてくれたら儲けものだ」
「なるほろな。けろ、ぎゃくもあるじょ」
「逆か? なるほどな。お前にしてはよく考えたじゃないか」
「なんでだよ、おれはいちゅも、おりこうら」
「そうかよ」
俺と親父の会話を、旦那様と奥様が聞いていた。微笑ましいだろう?
「父上、母上、ベルの言い分ももっともですね」
「そうね、どうしましょう?」
俺が『逆もある』と言った理由だ。ブレイズ様が第1王子と仲良しだから、妹のお嬢を第2王子の婚約者にして権力が偏らないようにと、考えられるかも知れないということだ。
な、俺だって考えているんだ。
「とにかく、決定的に婚約者に選ばれなければ良いのでしょう? せめて婚約者候補ですね」
「ブレイズ、それは無理だわ。ネネが選ばれるとしたら、それはもう婚約者に決定だわ」
「そうだな。さっきも言ったように、他の公爵家に年齢の釣り合う令嬢がいないのだからな」
「なら、ほとんどネネに決まりみたいなもんじゃないですか」
「そうなんだ」
「そうなのよね~」
おいおい、どうするんだ? お嬢にまたあんな思いをさせるのか? それは絶対に回避しないといけない。
だから俺が嫁にするって。竜人の国に一緒に行こうぜ。
「ベル、また突拍子もないことを考えているだろう」
「おやじ、ちょんなことねー」
「黙っていろよ」
「わかってるっての」
本当、信用がないな。
「おれと、こんやくちたら、いいんだ」
ポロッと一言言っただけなのに、親父にポコンとげんこつを落とされた。酷いな、俺の純粋な気持ちなのにさ。
「お前とは立場が違いすぎるだろう!」
「おやじ、ちょんなの、わかんねーって」
「分かるわ!」
「なら、おじょう。おねちゅだちゅ?」
はぁ〜っと大きなため息をついて、親父は俺を見た。
「本当にバカ息子が」
「だって、おねちゅを、だちたことにちたら、いかなくてもいいじゃん」
一番手っ取り早くて、有りがちなことだろう? なのに、旦那様や奥様までため息をついている。あれれ? そんなにおかしなことか?
「ベル、それは一時凌ぎにしかならない」
「そうね、逆に目立ってしまうかも知れないわね」
一時凌ぎでもとりあえず時間を稼いで、作戦を考える時間があればな。と、思ったんだ。
それまで黙って成り行きを見ていたお嬢が、決意したように言った。
「あたち、いきまちゅ。いって、おあいちてきまちゅわ」
「ネネ!」
「ネネちゃん、無理をしなくても良いのよ。辛いでしょう?」
「おかあちゃま、だいじょぶでちゅわ。がちゅんといってやりまちゅ!」
いかん、こんなところでお嬢の体育会系気質が出てしまっている。一体誰に似たんだ? 旦那様も奥様も、そうじゃないのに。
緊迫した空気の中、ドンドンと元気なノックの音がしていきなりドアが開いた。
「ネネ! ブレイズ! 元気にしておったか!?」
ああ、いたよ。体育会系の元が。大きな声でお嬢とブレイズ様を呼びながら入ってきたのは、旦那様の父親の前公爵だ。
この国では爵位は家に与えられ、家督と共に移動する。だから今は旦那様がホルハティ公爵だ。
その大旦那様は、旦那様が学園を卒業し奥様と婚姻したら早々に引退して領地に引っ込んだ。
前公爵家当主のフランオーネ・ホルハティ。フラン爺とか大旦那様と呼んでいる。
お嬢の体育会系気質の元だと俺が思うくらいに、ムッキムキで人より頭一つ出ているくらいに大きい。
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宜しくお願いします。
毎度お馴染み、元気な爺ちゃんの登場です。
イケオジとかイケ爺(?)とか好き(^◇^;)




