103ー突然の来客
「では、皆様。そろそろ昼食のご用意ができておりますので」
「あら、そうね」
皆が食堂へ移動する。俺は使用人用の食堂だ。
部屋を出たところで、フラン爺に話しかけられた。
「ベル、昼寝から起きたら親方の手伝いだ」
「おー」
親方の手伝いは楽しいからいいよ。さて、今日のお昼ご飯は何かな~?
最近やっと、皆と同じものが食べられるようになった。
間食で食べるのは、相変わらず蒸しパンなんだけど。
あれはきっと料理長が気に入ってるんだ。プレーンなものから、りんごにバナナにさつまいも、どんどんバリエーションが増えている。だけど、やっぱ蒸しパンだ。
お昼を食べて、親父の部屋でお昼寝していると邸が騒がしくなって目が覚めた。
「んん……あれ? なんら?」
「ベル、なんか騒がしいな」
「ちょうらな」
いつも俺が起きるのを待っている親父が、部屋にいなかった。きっと対応に出ているのだろう。
ヨイショとベッドから降りると、部屋の外へ出る。どうやら玄関の方が騒がしい。
急なお客でもあったのかな? ちょっと見てみようと、トコトコと玄関へ向かう。
「なあ、ベル。おやつは食べへんのか?」
「ちょっとまって。みてからね」
ガンちゃんを肩に乗せて、玄関が見える場所までやって来た。誰が来たのか、離れた場所でも分かった。
「なんれら?」
そこにいたのは、またまた第1王子だった。しかも今日は、護衛の数が多い。そして令嬢の姿もある。
一体何なんだ? と思いながらトコトコと歩いて行く。
「やあ、ベル。遊びに来ちゃった」
こらこら、来ちゃったじゃない。ほら、後ろにいる護衛のティムがとっても申し訳なさそうにしているぞ。
「シュテファン殿下、とにかく中へ」
「いや、夫人。今日は親方に会いに来たんだ」
親方なのか? じゃあ裏の作業場だ。
「父に聞いたんだ。魔導具を改良しているらしいですね」
ああ、それが目当てか。改良前の物をシュテファン殿下も持っているから。
「クフフフ」
あ、今俺を見て笑ったぞ。なんだ? 感じ悪いな。
「ベル、毎朝聞いているよ」
「え……」
そうだった。俺のお嬢へのモーニングコールを、あの魔導具を持っている王子も聞けるよな? て思ってたんだ。
「あら、なにかしら?」
状況が分からないカリーナ様だ。他の皆は、あぁー……みたいにちょっと引いている。何故に? 俺の純粋なラブだっての。
「ベル、せやからやめときって言うたやん」
「だってガンちゃん、おれの、らぶ」
「まあ、またベルのラブなの? ふふふ」
この手の話を逃さないのがブレイズ様だ。王子の対応に出てきていたのだろうけど。
「お祖母様、ベルが毎朝ネネにつまらない通話をしているのです。もう馬鹿らしくて」
「ちっ」
「こら、ベル! だから舌打ちするんじゃない!」
だって、馬鹿らしいとか言うのだもの。純愛を馬鹿らしいとか言うんじゃない。
「では殿下、裏へ行きましょうか?」
「ああ、ブレイズ。そうそう、今日は彼女も一緒なんだ。よろしくね」
そうして紹介してくれたのが、第1王子の婚約者のブリジット・クァンイン。侯爵家のご令嬢だ。
「初めまして。突然お邪魔して申し訳ありません。突然お伺いするのは失礼だと、お止めしたのですが」
「なんだ、リジーも見てみたいと言っていたじゃないか」
「そうですが、急にお伺いするなんて思いませんでしたわ」
「だって、気になるだろう? それに、とっても楽しいんだよ」
あらあら、仲が良いことで。リジーだって、なに? 自分たちはもう愛称で呼び合う仲なのよってか?
俺にはお嬢がいるからいいもん。お嬢はまだ寝ているのかな? 姿が見えないけど。
「お気になさらなくても大丈夫ですよ。裏へ参りましょう」
ブレイズ様が、王子御一行を裏へ案内する。
しっかりしてるね。第1王子の側近にと、声がかかるのも分かる。前の時のことだけど。
王子たちが移動すると、メイドさんたちも動き出した。親父が指示を出している。
きっと裏にお茶をとか、色々言ってるんだ。おやつもあれば良いのになぁ。
「ベル、お前は調理場だ。料理長が用意してくれている」
「え、またむちぱん?」
「アハハハ、そうだな」
「またかいな、あればっかやな」
「アレンジしていると、言っていたぞ」
確かに中に入れるものを変えてくれているけど、でも蒸しパンには変わりない。
「ちかたねー」
「なんだ?」
「オレンジのケーキちゅくる」
「作るなら殿下方の分も頼む」
「おー」
仕方ないね、俺がオレンジをたっぷり使ったパウンドケーキを用意してあげよう。
「ガンちゃん、いこう」
「おー」
調理場へ行こうとした時に、天使が舞い降りた。
「あら、ベル。おきゃくちゃまだったの?」
「おじょう、てんち」
マジで! 背中に真っ白な翼が見えちゃった。これって隠しておかないと、神様に連れていかれちゃうぞ。
「はいはい、もうええって。はよ、調理場に行こうや」
「ええー」
だってせっかくお嬢が起きてきたのにぃ。
「ベル、さっさと行くんだ」
「おやじー、らっておじょうがぁ」
だってぇ、天使がそこにいるのだもの。
「ベル、どこにいくの?」
「ちょうりば。オレンジケーキちゅくる」
「あたちも、いっちょにいってもいい?」
「おー」
お嬢が一緒なら張り切っちゃうぞ。いつもよりオレンジを多くのせよう。
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