100ーおしどり夫婦
そのフラン爺が小さな声で俺に言い訳をしてきた。俺に言っても仕方ないぞ。
「ベル、今回は仕方ないだろう? なにしろ、ほら。記憶がだな」
「あー、ちょうらった」
フラン爺だけ前の時の記憶があったのだものね、そりゃあ困惑するだろう。
でも一言言ってから来ような。
「いってくるね~って、カリーナちゃまに、いえばいいんら」
「言えば、行かせてもらえないだろうが」
ああ、確信犯だ。これはいけない。でも今回だけは、慰めてあげよう。お嬢のピンチだと、飛んできてくれたのだから。
自分だけが持っている未来の記憶は何なんだ? と思いながらも。
仕方ないなぁ。フラン爺はカリーナ様には弱いから。
「それで、あなた。すっきりしたのですか?」
「カ、カリーナ!」
「あなたが何か悩んでいることくらいは、分かってましたわよ。柄にもなく、考え込んでいたじゃないですか」
「カリーナァッ!」
皆が見ている前だというのに、フラン爺はカリーナ様を抱きしめた。
体育会系のフラン爺が、愛しみが溢れるような繊細な手つきで。
なんだ、バレバレじゃん。フラン爺ってカリーナ様の手のひらの上で、クルックル踊らされてないか?
「ふふふ、おばあちゃまと、おじいちゃまはいちゅもああだわ」
そうだね、本当は仲良しだものね。オシドリ夫婦って感じだ。
俺はフラン爺もカリーナ様も大好きだ。また会えて嬉しいよ。
「そういえば、ブレイズ。あなた外に出ていて平気なの?」
「え? あ、お祖母様。もう完璧ですよ」
「おれのおかげ」
「ベル、それは言うな」
今回は何もしてないけどな。でも前の時に、俺が制御する手伝いをしてやったことは本当だ。
カリーナ様にとっては、まだその頃のブレイズ様のままなんだ。
本当なら別邸にこもっていた頃だ。なのにいつの間にか、普通に外に出ている。一緒に遊んでいるのだから、そりゃ驚くだろう。
「ブレイズは天才なのね」
「お祖母様、それは大袈裟ですよ」
「ふふふ、そうかしら。だってまさか、こんなに早く制御するなんて思わなかったわ」
「おれのおかげ」
ボソッと言っておこう。それより親父、お喉が渇いたぞ。
「なんだ、ベル」
「おのどがかわいた。じゅーちゅねえ?」
「そうだな。大奥様、取り敢えず中に入りましょう。お茶をご用意しますよ」
「そうね、そうしましょう」
じゃあ、俺の出番だな。ちょっと簡単なお茶請けでも作ってこよう。
「おやじ、りょうりちょうのとこいってくる」
「ああ、何か頼んだぞ」
「おー」
ガンちゃんが大人しく俺の肩に乗っている。ニコニコしているから、もう期待しているんだ。
お昼ご飯前だから、かる~い物がいいな。爽やか~な感じのが。
トコトコと調理場へ向かう。先にジュースを貰おうっと。
「りょうりちょう、おのどかわいた」
「おう、ベルか。オレンジジュースでいいか?」
「おー」
ヨイショと丸椅子に座ると、料理長がジュースをくれた。コクコクと飲む。
前のテーブルで、ガンちゃんも貰っている。ポテッと足を投げ出して座っている。お行儀が悪いぞぅ。
「なに言うてんねん、ワイはこうしか座られへんっちゅうねん」
「大奥様が来られたんだってな」
「ちょうちょう」
だからさ、ちょっと小洒落た軽いものを作ろうかなって。おっと、料理長がもう準備している。何も言わないのに、鍋を持っていたりして。
「何作るんだ?」
「ちょうらな~、くだものある?」
「おう、果物はいつも色々用意してあるぞ」
「おじょうが、ちゅきらから」
「アハハハ。お嬢様だけじゃなくて、奥様もお好きだからな」
ふむふむ、じゃあその果物を何種類かカットしてもらって。
「苺はあれか?」
「おじょうのだけ、おれのらぶ」
「アハハハ」
苺はもう覚えてくれた。ハートに見えるようにカットしてくれている。
オレンジもいいな、あとはキウイとか。一口大にカットして、冷やしておいてもらおう。
「えっちょ、かためるの」
「ゼリー寄せみたいにするのか?」
「ちょうちょう。ちょれの、ちゅめたいの」
「ああ、いいな。爽やかだ」
「うん」
この世界ではゼラチンがあるんだ。といっても、俺の前世にあったような使いやすい物ではない。
まだまだ原始的なものだけど、貴族が野菜のゼリー寄せみたいに見た目に拘って作っていたりする。
こんにゃくみたいに、プルンプルンしていて固形だ。それを必要な分だけ湯で溶かして使う。原料はきっと同じだと思う。
「ちょこに、ちょっとおちゃとうと、レモンをちぼってまぜまぜ」
「おう、混ぜるんだな。少し甘味を感じる程度か?」
「ちょうちょう」
フルーツも甘いから、ゼリーまでしっかり甘くすると甘すぎる。だからほんの少しだけ。
「とかちたら、ひやちて」
「これだけで、冷やすのか? フルーツは入れないのか?」
「あとで」
見た目も可愛くだ。今日は早く作りたいから裏技を使って冷やそう。
「ばっとにうちゅ~く」
「深い容器じゃなくて、浅いのか?」
「ちょうちょう」
そして俺の魔法で冷やす。あんまり一気に冷やすと、透明にならなかったり硬くなりすぎたりするから、少しずつソヨソヨ~ッと冷たい風を送る。
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100話です!あともう少しで追いつきます!




