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生真面目な男だった。
社会的な常識はまもろう、法律は軽くとも違反しないようにしよう。
自転車に乗る時はヘルメットをしよう。
夏は水分補給をするようにしよう。
課題を出し忘れている教師がいたら、指摘しよう。
つねに時と場に合った声で挨拶をしよう。
そう心がけ、そしてそれを実践しすぎていた男だった。
生真面目な男は、嫌われていた。
ガッツリと嫌われるのではなく、うっすらと「こいつキチィな」と思われるくらいのレベルで嫌われていた。
同級生だけでなく、教師からも舐められていた。
そんなことは自分でもわかっていた。
しかし、間違ったことはやっていないつもりなどは当たり前だが、いっさい存在していない。
どうして自分が嫌われなければならないのか。
どうして自分ばかりが損をしなければならないのか。
生真面目な男はいつか得をできる日が来ることを薄々「ないな」と分かりながらも、毎日の生き方を変えずに生き続けた。




