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ビカットマン  作者: 蟹谷梅次
1 序章
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1

 生真面目な男だった。


 社会的な常識はまもろう、法律は軽くとも違反しないようにしよう。


 自転車に乗る時はヘルメットをしよう。


 夏は水分補給をするようにしよう。


 課題を出し忘れている教師がいたら、指摘しよう。


 つねに時と場に合った声で挨拶をしよう。


 そう心がけ、そしてそれを実践しすぎていた男だった。


 生真面目な男は、嫌われていた。


 ガッツリと嫌われるのではなく、うっすらと「こいつキチィな」と思われるくらいのレベルで嫌われていた。


 同級生だけでなく、教師からも舐められていた。


 そんなことは自分でもわかっていた。


 しかし、間違ったことはやっていないつもりなどは当たり前だが、いっさい存在していない。


 どうして自分が嫌われなければならないのか。


 どうして自分ばかりが損をしなければならないのか。


 生真面目な男はいつか得をできる日が来ることを薄々「ないな」と分かりながらも、毎日の生き方を変えずに生き続けた。



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