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田舎の町興しにダンジョン民宿を提案された件  作者: マルルン
2年目の秋~冬の件

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994/1012

1月の青空市は業火のとんど祭りで幕を下ろす件



 見事勝利をあげた陽菜(ひな)に対して、ムッターシャ師匠は難しい表情。スキル無しのハンデでは、対人特化したギルド『日馬割』に有利過ぎるのがその要因らしい。

 いや、別に山の上のメンバー達が、日夜模擬戦ばかりやっている訳では無い。ただ気が付けば、ムッターシャとザジの指南がそっち方向に作用していたのだ。


 結果、護人や姫香は習った事のない剣術を上級者から吸収、今やいっぱしの剣士である。その英才教育を、現在モロに受けているのが“勇者”久遠(くおん)だったり。

 ザジと香多奈に連れて来られた桃井姉弟は、何があったのと戸惑いを隠せない。それもその筈、こんな場所で探索者同士が模擬戦など前代未聞の騒動である。


 地元の協会職員にバレたら、大目玉を喰らってしまう事請け合いな案件だ。能見さんに叱られるのは本意では無いが、売られた喧嘩は買わなきゃ女が(すた)る。

 しかも友達でライバルの、陽菜が華麗に勝利をあげたのだ。それを見ていた姫香は、次は私だねと張り切りながらムッターシャ達の作った円の中へ。


 それに応じて、やや年上の美人な女性が赤毛の若者に代わって前へと出て来た。今から“舞姫”の二つ名を懸けた戦いが始まると、子供達は大いに盛り上がっている。

 その子供達だが、今は食べ損ねたお昼を皆で呑気に食べている所。テーブルにいた大人達を追い払い、戦いを観賞しながら遅い食事を取っている。


「さあっ、次は姫香お姉ちゃんと向こうの女の人との、“舞姫”の名前を懸けた模擬戦だねっ! どうしよう、こっちはみんなでおかずを賭けようか?

 私は取り敢えず、姫香お姉ちゃんに賭けるけど」

「えっ、みんな姫香お姉ちゃんに賭けるでしょ……いつもお世話になってるし、知らない女の人に大事なおかずは賭けれないよねぇ?

 コロ助ちゃん、あっちの女の人におかず賭ける?」


 キヨちゃんのその問いに、コロ助は全力でNOのそっぽ向き。そんな賭けの成立しない中、“舞姫”の名を冠する女性同士の戦いの幕が切って落とされた。

 相手の島津(なぎさ)も、手にするのは長棍で流麗な動きで牽制して来る。姫香も同じく、訓練中に使う長棍をクルクルと回転させて相手を挑発している。


 ともすれば『旋回』が発動しそうなのを抑えながら、緩急をつけてのお試しの打ち込み。その姫香の動きも流麗で、さすがネットで“舞姫”と評されるだけはある。

 ところが(きょう)が乗って来た姫香は、段々とその撃ち込みも激しくなって来た。耐える渚の技術もまずまずだが、その表情にはハッキリと(あせ)りの色が。


 そして最後には、陽菜の評した“暴風娘”の勢いそのままの勝利となってしまった。やったーと(はしゃ)ぐ子供達は本気で嬉しそう、ご近所さんの姫香の人気の高さが窺える。

 それはともかく、2連敗した『赤い旋風』チームは凄く悔しそう。特に自信満々に対決を希望した渚は、納得が行かないようでもう1度と再戦を希望している。


 それを後でと素っ気なく却下するムッターシャは、次の対戦者を(つの)ってとっても楽しそう。若い才能を間近で見るのは、彼の趣味にも合致している模様。

 その呼びかけに出て行く、3人目の選手はみっちゃんだった。女性ながらも体型に恵まれた彼女は、前衛も後衛もこなせるオールマイティ探索者である。


 対する『赤い旋風』チームは、雰囲気のある剣士が満を()しての登場となった。仲間からは一番強いと評されるこの若者は、“剣客”武蔵(むさし)との二つ名で呼ばれているそう。

 実際、その居合い風の所作に間合いを決めかねるみっちゃんに対して。不用意に近付いた隙を狙っての一閃は、見事に相手の胴を斬り抜いた。


 あ痛っと思わず叫ぶみっちゃんだが、負けたと気付いてとっても悔しそう。師匠のザジは、相手の力量を褒めつつも弟子に励ましの言葉を送っている。

 そんな中、2敗した向こうも納得が行かずに再戦希望の声が。


「こっちは構わないが、集客の多い中で負けるのはチーム評価に傷がつくぞ? それで構わないなら……そうだな、次は双子と対戦して貰おうか」

「おっ、出番が来たぞ姉ちゃんっ……相手はあの赤毛の兄ちゃんか、2人で相手して卑怯だってんなら俺1人で出るけど?」

「はっ、ガキが何を生意気言ってやがるっ! 今度こそ勝ち名乗って、次はS級のリーダーとやらせて貰うからなっ!

 ここの全員が証人だ、俺が駄目でも武蔵なら勝てるっ!」


 他人を頼ってる時点で駄目じゃんと、お昼を食べ終わった天馬(てんま)は弟の龍星(りゅうせい)と共に簡易演習場に進み出る。スキルは使用不可だが、まぁ龍星の棍棒術はスキル無しでも充分に強い。

 そんな時は、天馬が(おとり)役を担って相手の隙を作ってやるのが双子の常套手段である。現に防御的な動きの天馬に、相手の“朱雀”亜煉(あれん)は苛立ちを隠せない。


 そこに、狙いすましての龍星の、棍棒での(すね)撃ちがヒットした。弁慶の泣き所に痛烈な一撃が見舞われ、後は天馬が首筋に木剣を置いてやれば勝利は確定。

 その勝利には、子供達どころかいつの間にか集まっていた観衆からも喝采が。少し照れながら席に戻る双子に、次は僕が行くと元気な(りょう)が挙手をする。


 それを止める香多奈は、遼君は後衛でしょと正論での切り返し。その代わりに久遠兄ちゃんがいるよと、その到来に盛り上がるキッズ陣営である。

 探しに行ったザジと香多奈は、2分も掛からず桃井姉弟を発見して連れて来ていた。そのお陰で、香多奈も1戦目から観戦出来て最初から騒ぎまくっている。


 良く分かっていない久遠だが、師匠の言う事に逆らう度スレていない。そんな訳で木剣を構えての、2度目の戦いの場の渚と対戦する事に。

 今度こそ勝利をと、渚の長棍はさっきより随分と激しい乱舞となっていた。その斬りや突き技を、冷静に処理する久遠は年齢不相応な落ち着き振り。


 それはそう、普段は格上の護人やザジやムッターシャと訓練をこなしているのだ。それより遥かに劣る相手との対戦に、途中から少年はアレッと言う表情に。

 攻撃してとのキッズ達の支援に、勝っちゃうけど良いのかなと戸惑いの表情の久遠である。訓練で負け慣れていた少年だが、実力はいつの間にか上昇していた模様。


 その事実に気付いた久遠は、5分以上の熱戦の勝利者となって周囲から喝采を受ける。これで弾みがつくなと、この舞台を演出したムッターシャも内心ニンマリ。

 相手チームには悪いが、このままサンドバッグになって貰う予定。



 そうはいかないと、2度目の“剣客”武蔵(むさし)の登場に誰が行こうかと話し合う面々。『ライオン丸』や『坊っちゃんズ』チームからも立候補の声が上がるが、さすがにA級が相手をするのはズルいと言う意見が。

 それなら私が行こうかと、申し出たのはB級の土屋だった。後ろには柊木(ひいらぎ)もにこやかに立っていて、どうやらずっと一緒に観戦していたようだ。


 どうでも良いが、その土屋女史の腕にはスタッフを示す腕章が。騒動を収める立場なのに、人見知りの彼女が名乗りを上げるなんて珍しいと言うか破天荒。

 土屋女史も、どうやら山の上の生活を経て、ギルド『日馬割』の流儀に染まって来たらしい。それはともかく、彼女も夕方の訓練では既に実力者の1人である。


 そう言う意味では、その腕前を試してみたいと言う気持ちはよく分かる。相手の武蔵も、この小柄な女性と対峙してさっきと違って緊張気味のようだ。

 そうして始まった対戦だが、今までと一転して斬り合わずの静かな立ち上がり。子供達の熱心な応援が響く中、まず動いたのは“剣客”武蔵(むさし)の方だった。


 いや、恐らく知らぬ内に土屋が攻撃範囲に入り込んだのだろう。その足(さば)きも凄いが、何と必殺の居合いも防いでしまう土屋であった。

 その時点で決着はついており、次の瞬間に武蔵の手から木剣が弾き飛ばされていた。それで勝負は決定して、結果山の上のメンバーの勝率は爆上がり。


「やったね、これで相手チーム3人全員に勝ったよっ! 特に久遠兄ちゃんは、格上のB級ランクに勝ったし大金星だったね!」

「本当だねっ、さすが来栖家チームのギルドのメンバーは強いよねっ。毎日夕方の特訓を頑張っているだけあるよっ!」

「それで、甲斐谷さんとかとも模擬戦するのかなっ……今日は『ライオン丸』と『坊ちゃんズ』チームもいるから、強い人もより取り見取り赤黄色だよっ!

 観てる人もいっぱいいるから、盛りあげて欲しいよねっ!」


 そんな子供達の言葉に、いやこれ以上の混乱は避けてくれと護人の呟き。向こうも精神的に大ダメージを受けてるし、更なる追撃は武士の情けでやめて欲しい。

 ムッターシャも心得たって表情で、山の上へ遊びにおいでと『赤い旋風』チームを夕方の特訓に誘っている。彼らがそれに同意するかは別として、その程度なら被害はまだ少ないだろう。


 土屋女史を始めとした青空市運営スタッフも、これ以上の混乱は不味いと感じた模様。この場の解散を指揮して、観衆に3時までに小学校に移動してと告げ始める。

 どうやらとんど祭りと同時に、ぜんざいの無料配布が行われるらしい。混雑が予想されるので、観客には早めの移動を呼び掛けているみたい。


 それを聞いた子供達も、もう2時になるねと時間の経過に改めて驚いた様子。模擬戦騒ぎで(はしゃ)いでいたら、あっという間にイベントの時刻となっていた感じ。

 それでもお昼もしっかり食べ終わって、後はとんど祭りで盛り上がりながらぜんざいを食すだけ。多少計画は狂ったが、それもお祭りの要素の1つである。


 この集客力がお祭りの醍醐味、それを含めて楽しむのが(つう)である。何しろ田舎に住んでると、人が混むと言う現象自体がまず見れないのだ。

 子供達のテンションも、そりゃあ上がろうと言うモノだ。そんな訳で、来栖家ブース奥の騒動が終わった途端に、香多奈たちは小学校に移動してしまった。

 それを期に、今回の騒動は終焉(しゅうえん)の流れに。




 そうして3時からのとんど祭りは、相当な盛り上がりを見せてくれた。訪れた人も軽く5百人を超えて、田舎の小さな小学校は人が入りきらない程。

 そのグランドの中央では、派手にとんどが燃え盛っていた。空高くまで燃え上がる勢いのある炎と、竹のパンと爆ぜる音はまさに醍醐味(だいごみ)である。


 そしてその小学校に通う低学年の子供達が、習字の半紙を燃やすお祭りパフォーマンスを敢行。香多奈の後輩達は、そんな大任も和気藹々(あいあい)とこなしている。

 飛び散る火の粉が心配されたが、幸いにも今日は風も少なくて本当に良かった。来ているお客さんも、声援を飛ばして場は良い雰囲気。


 そしてもちろん、振る舞われる焼いたお餅やぜんざいは大好評だった。参加した他所の地域の子供たちも、とんどの炎でのお餅焼きに参加して楽しそう。

 炎は危ないので、竹の先に挟んだ普通サイズのお餅を焼くのだが、これがなかなか火加減が難しい。巨大な鏡餅も焼かれており、その頃にはとんどの炎もあらかた落ち着いている。


 幸いにも、大きな混乱もなくイベントは進んでくれて何より。やはり腹持ちする食べ物を早めに与えたのが、(いさか)いが起きなかった大きな要因かも。

 そうして、1月の青空市も大いに盛り上がって終了の運びに。





 ――運営の人達も、頑張った甲斐があったと言うモノ。







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