表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
田舎の町興しにダンジョン民宿を提案された件  作者: マルルン
2年目の秋~冬の件

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

993/1013

若者たちの腕試しが1月の青空市で催される件



 来栖家所有のキャンピングカー内では、なおも話し合いが続いていた。今は岩国チームの鈴木と三笠(みかさ)が、交替で岩国の現状を集まった皆に報告している所。

 それによると、アメリカから来た戦闘空母の艦長との交渉は、もはや脅迫レベルらしい。武力行使も辞さないのではと、現在の岩国市は緊迫状態との事。


 来栖家チームに応援を頼みたいとの話だが、空母相手に探索者が敵うとは思えない。護人はそう断るが、お宅のペット達なら可能性があるのではと、揃って外野からの他人事な推薦が。

 護人は冷や汗を掻きながら、そんな事は無いと一応否定するのだが。脳内では、巨大な戦艦を破壊し尽くすミケとレイジーの姿が去来する。


 その2匹は、まるで頑丈なオモチャを与えられたように、楽しそうに破壊工作に励んでいる。そんな幻想を振り払い、護人は冬の予知はなかなか来ないねと話を強引に変える。

 それに反応して、“巫女姫”八神は改まった表情で最新の予知が巡って来ないと愚痴をこぼした。どうも厄介な案件が、未来に広がっている感覚は視えている模様。


 普段は視える具体的な展開が、何かに邪魔されて昏い雲が掛かった状態なのだそう。そう言われると、何だか大ゴトが起きそうで不安になるこの場の一同。

 そんな事なら、オーバーフロー騒動が起きるとか新造ダンジョンが出来るとか、ハッキリ言って貰った方が数段は気が楽だ。大まかな場所も言って貰えるので、それに備える事が出来るからだ。


「春は毎年、何か大変な騒ぎが待ってるよな……こっちもチーム同士で連絡を密にして、皆でそれに備えたいな。ここにはいないが、異世界チームも随分と形になって来たんじゃないかい、護人のダンナ?

 今後も戦力として、大いに期待しても平気かな?」

「彼らも協会にA級認定して貰って、その意味はしっかり把握しているよ。最近は遠征にも積極的に同伴してくれるし、ウチのギルドでは一番頼りになるんじゃないかな?

 こうやって青空市にも参加してるし、世間にも受け入れられ始めた気もするね」

「それは何よりだな、まぁ……この地元じゃ、来栖家チームが変に目立ってるから、いいカモフラージュになってるのかもなぁ。

 ……おやっ、外が妙に騒がしいね。何かあったかな?」


 岩国チームの鈴木のその言葉に、扉の近くにいた三笠が確認に向かう。同時に、窓の近くに座っていた『ヘリオン』の翔馬が、外の景色を見てあっと声を上げた。

 どうやら騒ぎの原因は、広島市で現在勢いのある『赤い旋風』チームだった。来栖家のブース前で派手に啖呵(たんか)を切っていて、何て命知らずなと翔馬の呟き。


 まだ若いチームで、相当な速さでB級まで上り詰めて来た実力は周囲も認めている。とは言え、A級の来栖家チームに喧嘩を売るなんて失礼過ぎる。

 そう翔馬が口にすると、目の前で信じられない事が起こった。護人の膝の上で丸まっていた老猫(ミケ)が、車の壁をすり抜けて外へと出て行ってしまったのだ。


 どうやら、ウチの子供に狼藉(ろうぜき)を働ていてる存在に腹を立てたらしい。不味いと止める暇もなかった護人が、その介入を(はば)もうと慌てて車外へと飛び出て行く。

 次の瞬間、窓の外を真っ白な迅雷が埋め尽くした。




「あ~あ、そんな口汚く啖呵(たんか)を切るから、ミケが聞きつけて怒っちゃったよ……香多奈っ、アンタ一体どこの誰を連れて来たのっ?

 一般客のいる青空市で、危ない騒動は起こしたくないんだけど」

「知らないよっ、本人たちは広島市から来たB級チームだって言ってたけど。確か姫香お姉ちゃんの、“舞姫”って二つ名に文句があるんだって。

 何か、自分のと(かぶ)ってるから変えろって文句言いに来たらしいよ?」

「おおっ、姫香の“舞姫”の二つ名は確かに違和感はあるなっ。もっとこう、“暴走娘”とか“嵐を呼ぶ少女”とか、そんな感じの方がいいんじゃないか?

 まぁ、だからと言って、二つ名を知らない奴にくれてやる必要は無いがな」


 そんな事を顔色を変えずに口にする陽菜(ひな)は、喧嘩は是非(ぜひ)買えってスタイルらしい。そして出来るなら、自分も参加するぞって鼻息の荒さである。

 友達から“暴走娘”と(そし)られた姫香だが、今はそれに突っ込むどころでは無かった。何しろペットの暴走で、見知らぬ探索者が半死半生の状態なのだ。


 今は慌てた紗良が、ぶっ倒れた赤毛の若者に『回復』スキルを掛けている所。そのスキルを隠すために、側にいた星羅(ルナ)がポーションをぶっ掛けてアリバイ工作をしている。

 自分も過去に有用なスキルを持っていたせいで、各方面から(かつ)ぎ上げられた星羅(ルナ)だからこその機転である。実際、探索者のスキルはあまり他者に公言すべきでないと言う風潮は確かにある。


 幸いな事に、赤毛の亜煉(あれん)はすぐに意識を取り戻して起き上がった。その頃には、何となく野次馬が周囲を取り囲んでいる状況に。

 ホッと安堵の吐息をついて、大丈夫ですかと訊ねる紗良は責任を大いに感じていた。何しろ身内の不始末なのだ、それを勘違いして顔を赤らめる赤毛の若者。


 それを間近で見ていたムッターシャは、昼食を終えたばかりで娯楽がやって来たと嬉しそう。それから冒険者稼業に、二つ名は確かに重要だと持論を述べる。

 それは異世界ではそうでしょうけどと、納得のいかない表情の姫香はすかさず反論。その頃には、キャンピングカーからも野次馬がぞろぞろと出て来る始末。


「幸い、ブースの奥には何とか暴れられる程度のスペースがあるな。四隅に指導者が立ってれば、安全に若者同士の腕試しも可能だろう。

 無論、武器は木製で過剰なスキルの使用はナシだ。これで若者たちのガス抜きと、二つ名の権利を賭けての模擬戦をすればいい。

 ザジ、済まないがクオンを連れて来てくれないかい?」

「オッケーだニャ……ってか、若者が参加ならウチにも資格はあるニャ! カタナ、ちょっとクオンを探すのを手伝うニャ!」

「ええっ、良い所なのに……キヨちゃん、これで撮影続けててねっ! ついでに双子ちゃんや(りょう)君も、今回の対人訓練に参加する?」

「えっ、いいのっ……それじゃ、ムッターシャ師匠の許可が出たら参加しようかな? たまには知らない人と対決するのも、面白そうだし訓練に張りが出るよねっ!」


 そんな前向きな子供達は、例の騒ぎの元の『赤い旋風』を招き入れた張本人。それを敢えて突っ込まれずに、いつしか対人戦が行なわれる事が前提となる流れに。

 そうして、闘技場の輪っかを作り始めるムッターシャと、面白そうだとそこに詰め寄る各チームの客人たち。広島市のメンバー達は、もちろん『赤い旋風』チームの面々を知っていた。


 彼らは、売り出し中と言えば聞こえは良いが、市内でブイブイ言わせてる跳ねっ返り集団だ。順調にB級に昇格して、要するに天狗状態なのは皆が知る事実。

 来栖家チームが鼻をへし折ってやれと、無責任に声援を送る甲斐谷や淳二に対して。護人はこんなシチュエーションは前にもあったなと、岩国チームの周防(すおう)大島での合同訓練を思い出す。


 岩国チームの鈴木と三笠も、同じだったらしく何となく悟った表情に。若い彼らを気の毒な目で見ているのは、この後の運命を完全に見透かしているからか。

 そんな『赤い旋風』チームの面々は、いきなりの雷落としにかなりビビっていた。それは仕方無いのだが、前衛3名は未だヤル気の炎は(つい)えていない。


 特に赤毛の若者の“朱雀”亜煉(あれん)と、“舞姫”を自称する島津(なぎさ)はここまで来たんだからとヤル気は充分。むしろ、模擬戦を準備してくれるなら願ったりである。

 ただし懸念として、周囲に野次馬が多いのは負けた時の噂の広まりに関してアレかも。逆に勝てれば、証人が多いって意味で文句のつけようはない。


 しかも、良く見れば背後のキャンピングカーから、S級の甲斐谷チームが出て来たではないか。一緒に、ギルド『ヘリオン』と『麒麟』のギルマスの姿も見える。

 後は良く知らないが、著名なチームが話し合いでこんな場所に集まっているようだ。これは『赤い旋風』の名前を売るのに、恰好な場面となってくれそう。


 何より、彼らのチームには実力ナンバー1の“剣客”武蔵(むさし)がいる。彼らのチームのルールでは、魔石販売の名声アップは等分なので皆が同じB級ランク。

 ただし、戦闘能力に関しては頭一つ抜け出しているのが武蔵である。寡黙な剣客(けんかく)気質なので、あまり主張をしない人物だが剣を持てば超一流である。

 それこそ、A級ランクの探索者にも負けないと仲間から推しの人物である。


 一方の『日馬割』ギルドの面々も、対戦相手が続々と名乗りを上げ始める。女性率が高いのは良いとして、何故か子供達も楽しそうに戦う準備を始めている。

 それがやや気掛かりではあるが、全部勝つつもりの『赤い旋風』チームの赤毛の亜煉(あれん)はトップバッターを名乗り出る。それに対するのは、何故か女性でも子供ですらなかった。

 そこにいたのは、巨大なハンマーを咥えたハスキー犬だった――。




「こらっ、コロ助っ……アンタが対人戦で、力の調整出来るわけがないでしょ! 治療する紗良姉さんの身になってごらんなさいっ、駄目だよっ!

 それにアンタが出たら、茶々丸や萌まで出るって言い出すでしょ」

「茶々萌くらいならともかく、レイジーまで出るってなったらこの場は地獄じゃないか。可哀想だけど、コロ助は今回は出番ナシだな。

 頼むから、大人しく子供達の護衛をしてなさい」


 姫香と護人にそう言われ、ガッカリしながら退去するヤンチャなワンコであった。それを安堵しながら見送る亜煉(あれん)は、まともな奴出て来いと心で強く念じる。

 その思いが通じたのか、今度出て来たのはブースの売り子をやっていた小柄な女性だった。その間にも、対戦場の四隅に安全対策のメンバーが呼び込まれる。


 ムッターシャに指名された、護人や甲斐谷は言われるままに対戦場の四隅へ移動。要するに、危ない事態になったら各々がそれに対処しろとのオーダーみたい。

 例えば、対戦相手が吹っ飛ばされて観客に突っ込みそうになった場合とか。誤って飛ばしたスキル技が、観客に被害を与えそうになった時とか。


 そんな配慮が必要なのが、探索者と言う職業だったりする。この程度の保険は、幾ら掛けてもかけ過ぎると言う事は無いのはムッターシャも分かっている。

 自身も審判役をしながら、周囲の安全には最大限に配慮する異界のベテラン師匠である。実際、ギルド『日馬割』は随分とムッターシャやザジには、日頃から指南役にお世話になっている。


 そうして二本の木刀を持って前へと出て来た陽菜は、生意気そうな赤毛の若者に挑発を入れる。相手は売り出し中のB級ランカーらしいが、こっちだってB級だ。

 そして毎月、地獄のザジ師匠のしごきに耐えて練り上げた剣技がある。向こうもそれなりの実力は有しているっぽいが、受けた修羅場の数はこちらが上だ。


 実際、向こうの剣技は大したことは無かった。恐らく探索中は、炎属性のスキルや腕力上昇系のバフ効果を上手く操って敵と斬り結んでいるのだろう。

 ところが、こんなスキルを極力控える模擬戦となると、隙だらけで話にならない。まぁ、何度殴られても立ち上がるスタミナだけは褒められるかも。


「そこまでっ、勝者はヒナで構わないな……う~ん、これはスキル解禁させた方がいいのかもな。でないと、余りにハンデが付き過ぎる」

「やめてくれ、ムッターシャ……すぐ近くに、一般客の通行人もいるんだ」





 ――勝った陽菜もそう思う、本当に探索者の(さが)と来たら厄介過ぎる。







『ブックマークに追加』をしてくれたら、香多奈が歓喜のダンスを踊ります♪

『リアクション』をポチッてくれれば、姫香がサムズアップしてくれます!

『☆ポイント』で応援すると、紗良が投げキッスしてくれるかも?w

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ