5層の中ボスの間を抜け佳境に差し掛かる件
「それにしても、風変わりなボス部屋だったねぇ……自滅する敵に加えて、ボス蛙も大した事無かったし。あれじゃ、外にいたドラゴンの方が強かったんじゃ?
ってか、パッと見た感じだとダンジョンコアも次の層へのゲートも無さそう?」
「そうみたいだな……って事は、ここは外れで奥のもう1つのドームが当たりかな? 複合化しているせいか、このダンジョンは妙な仕掛けが乱立しているね」
「そっかぁ、それじゃもう少し探索は続くんだねっ……それじゃ、お腹空いたしお昼にしようよ、叔父さんっ!
多分だけど、この層じゃお仕事は終わらない気がするかなっ」
そんな末妹の言葉に、何となくそうだよねって周囲の視線が注がれる。それじゃお昼休憩にしましょうかと、長女は呑気に話しを進めている。
幸いにも、このドーム内の敵は全て駆逐して周囲の安全は確保済み。ボス部屋での休憩は、ある意味来栖家チームの十八番でもある。
お腹が減っては戦は出来ないよと、香多奈は飽くまでハスキー達の代弁者を気取って交渉に余念がない。子供に甘い護人は、それじゃお昼にしようと折れる破目に。
やったぁと無邪気に喜ぶ末妹と、それじゃ用意をするねとお昼の支度を始める紗良。テーブルや椅子の設置を姫香が手伝って、この辺はいつも通りで抜かりはない子供たち。
ペット勢も休憩の気配に、それぞれ家族の近くで寛ぎ始める。もっとも、遼の姿に変化した茶々丸と萌は、夢中になってトランポリン遊びを続行中。
よっぽど気に入ったのか、とても楽しそうなので護人も子供達も放っておいている次第。ルルンバちゃんも羨ましそうに眺めているが、彼の体重ではまず無理。
ハスキー達やミケは、そんな遊技には目もくれず省エネモード。この後の戦いに備えて、体力の温存は経験に裏打ちされたハンターの所作に他ならず。
そんな感じで、紗良のお昼の支度も整っての昼食タイムの始まり。そこにすかさず寄って来る、この時ばかりはハイエナに成り下がるハスキー達であった。
この食いしん坊スキルは、幾ら熟練のハンターでも抗えない。
「それにしても、2日連続でダンジョン探索するとは思っていなかったよねぇ。岩国の情勢も、このダンジョンのコアを破壊したら少しは良くなるのかな?
そうしたら、晴れて来栖邸に戻れてメデタシって感じだよね、護人さん?」
「ああっ、そう言う事になるのかな……最初の依頼じゃ、アメリカ軍の空母を相手にしなきゃと思っていたからね。そう言う意味じゃ、この新造ダンジョンに感謝……なのかな?
まぁ、多少は不謹慎かも知れないけどね」
「確かにこの外じゃ、今も銃で撃ち合いやってるかもですしねぇ……でもウチは関わらないようにして、この探索が終わったら家に帰らせて貰いましょう。
ウチのチームには香多奈ちゃんもいるし、教育にも悪いと思うから」
そんな紗良の言葉に、護人も思わずそうだねと頷きを返す。来栖家は探索チームだが、例えA級と言えど兵士相手の荒事には付き合う義理も無い。
薄情な気もするが、そこは長女も口にしたようにチームには未成年者も在籍している。情操教育に悪い案件には、積極的に関わるべきではないってのが護人の本音。
そんな事を話し合いながら、休憩する事1時間近く……茶々萌コンビも、ようやく飛び跳ねる遊びに飽きてくれた様子。ついでに巻貝の通信機で、外の情勢を確認すると意外にも朗報が舞い込んで来た。
ヘンリーによると、湧き出した野良モンスターの討伐もほぼ終了したそうだ。3時間も経っているのだから、この辺はまぁ順当と言えるかも。
ついでに、米兵さんの生き残りも順次投降してくれてる最中だそうな。
その辺は、ヘンリーやギルなど元米軍基地の古強者の呼び掛けが功を奏した模様。同胞からの悪くはしないからとの説得は、指導者を失った兵卒たちに深く刺さったのかも知れない。
そんな訳で、空母に接舷したフェリー船は生き残りの兵隊さんの運搬に使用するとの事。来栖家チームとしては、それには全く否は無い。
まぁ、自分たちの帰りの船が無くなるとちょっと困るけど。その辺は、しっかりもう1隻はキープしておいてくれるみたいで良かった。
そんな感じで、空母の外の騒動は沈静化に向かっていてまずは一安心。後は来栖家チームが、この“空母ダンジョン”のコアを破壊して脱出するだけ。
たっぷりと昼食休憩を取った一行は、午後の探索にようやく意識を向け始める。恐らく残りのエリアは少ないだろうが、油断をして痛い目になど遭いたくない。
何しろここは、推定A級ランクの複合ダンジョンなのだ。エリアボスでないのに、ひょっこりと竜種が姿を現す危険な場所に間違いはない。
ドローン騎兵もボチボチ出現して来て、そもそも雑兵が銃を持っている時点で要注意。そんな感じで気を引き締めて、来栖家チームはいざ探索の再スタート。
そうしてドームを出て向かう先だが、いかにも怪しいのはもう1つの黒っぽい色をした隣のドーム。姿形は2つともそっくりで、違うのはドームの色位だろうか。
「それじゃあ、ここがボス部屋なのかなぁ……あっ、青い鳥の使い所をどうしようっ!? ここって5層目だっけ、次があると信じて取り敢えずスルーかなぁ?」
「6層目は確定じゃ無かったの、香多奈……アンタのちゃらんぽらん予知に、付き合わされるこっちの身にもなって御覧なさいよっ。
でもまぁ、新造ダンジョンだし終わりはもうすぐでしょ」
「そうだと良いけど、ここは妙な仕掛けが多いし最後まで気を抜かずに行こうか。パッと見た感じ、他に怪しい場所も無いし次はこっちのドームで良いかな?
それじゃあハスキー達、進んでいいよ」
姉妹のいがみ合いを制して、護人はハスキー達にゴーサインを送る。今回は中衛にいるリーダーの号令に、前衛陣は意気も高く怪しいドーム内へ。
そちらはよく見たら、入り口はゲートタイプでは無く普通の開閉式の扉だった。と言う事は、この施設は最初からこのエリアの一部って意味である。
果たして入れるのかなと、護人はドアに戸惑っているハスキー達を手伝って建物内へ。ルルンバちゃんも苦労しながら、何とか突破に成功出来た。
そんな巨大な入り口の建物内だが、予想通りに中ボスの間の雰囲気に満ちていた。少し進むと再び扉があって、その奥はすり鉢状のド真ん中に舞台の設置が。
つまりは球技場とか闘技場みたいな造りになっていて、その中央には立派な魔動機兵が佇んでいた。かなり大きなその形状は、いかにも戦争に役立ちそう。
おおっと驚く一行だが、アクションは向こうの方が早かった。バカッと魔動機兵の前面の扉が開いて、中からアーミー服を着たオーガ兵が飛び出して来る。
中ボスはどうやら装甲車仕様だったようで、しかも上の部分が分離して飛び上がる始末。上部は大型のドローン機兵で、近代兵器の類いがわんさかくっ付いている。
いかにも強そうな魔動機兵だが、末妹が感心したのは2つに分離したアクションだった。こっちも負けないよと、香多奈はAIロボにアレやってとの指示出し。
疑う事を知らないAIロボは、末妹に言われた通りにドローンを切り離して宙返りを披露する。アクロバット飛行は、今やルルンバちゃんの十八番である。
ところが、それにショックを受けたっぽい敵のドローン機兵は、自分もその位は出来ると対抗意識を燃やし始めた。同じく宙返りを実行して、そして盛大にバランスを崩す破目に。
結果、宙返りをミスって墜落してしまうボスエリアの主であった。それに巻き込まれた、勇んで銃撃の準備をしていたオーガ兵達はちょっと哀れ。
兵士を吐き出していた魔動機兵も、少なくないダメージを受けて割りと悲惨な状況だ。或いはその魔動機兵は、スポーンだったのかも知れず破壊は大歓迎。
と言うか、ハスキー達は敵のアホな自滅にも我関せず。むしろ今がチャンスと、揃って遠隔スキルを放って畳み掛けて行く。
さすがに銃持ち兵士がたくさん出て来た中、接近戦を挑むのは得策ではない。その作戦はもっともで、炎のブレスや『毒蕾』や《咬竜》スキルが派手に舞う。
鉄壁を誇る敵の装甲だが、ハッチが開いたままの自滅は不味かった。装甲も意味をなさず、放った兵士共々ダメージを蓄積していく敵のボス。
それを見た紗良や姫香は、何だか可哀想なモノを見る眼差し。末妹は容赦せず、ルルンバちゃんに止めを刺してとご機嫌に指示を与えている。
「ルルンバちゃん、敵の開いたハッチの中を狙ってね! ドローンは完全に動けなくなってるから、アレは無視でいいからねっ。
それじゃ、波動砲の発射~~っ!!」
「ああっ、容赦とか哀れみって言葉を知らないのね、香多奈……まぁいいか、次の層もあるっぽいからね。ここは完全に中ボスの間だね、見た限りダンジョンコアも置いてないみたい。
中ボスの奥に、しっかり宝箱と次の層へのゲートもあるね」
「あっ、本当だね……それじゃあ、大ボスに向けて体力温存出来て良かったって思おうか。こっちはお昼休憩もたっぷり取ったし、少し休んだら次のエリアに進めるねっ」
そんな紗良の言葉に、そうだなと護人も哀れみの表情のまま返答する。もはやサンドバッグと化した中ボス騎兵は、反撃も出来ずにとうとう没してしまった。
組織だって抵抗されたらきっと強かった、銃持ちオーガ兵も何も出来ずに後を追う。そうして、高難易度のダンジョンでは有り得ない楽さで中ボス戦は終了。
後はMP回復に休憩して、宝箱をゲットして次に進むだけ。
その前のドロップ品だが、ボスのお馬鹿な魔動機兵は魔石(大)とオーブ珠1個を落としてくれた。オーガ兵は魔石(小)で、加えて既にお馴染みの近代兵器と弾丸類をドロップ。
ついでに手榴弾や魔玉のセットも、あちこちに転がって気前は良い感じ。
それから宝箱の中身だが、鑑定の書(上級)や薬品類、魔玉(炎)や魔結晶(中)が10個と大盤振る舞い。ついでにお決まりとなった、銃火器や医療キットやレーション類も割とたくさん。
後は変わったもので、ランチャーやロケット弾も入っていた。その他で言うと、乾電池で動く玩具やオリハル製の武器防具と、バラエティに富んでいる。
妖精ちゃんが反応したのは、大振りの魔導パーツと防弾ベストだった。アーミー服も何着か入っていて、シックな色合いの戦闘服は欲しがる人がいるか不明。
ついでに魔銃もあったみたいで、そう言う意味では魔法アイテムも複数個入っていて大当たり。それらを魔法の鞄に放り込む、紗良や香多奈はとても楽しそう。
ハスキー達もMP回復ポーションをお皿に注いで貰って、最後の戦いに向けて英気を養っている。今回は相手の自滅だったので、怪我の確認もせずに済んで何より。
とは言え、大ボス戦が同じように楽勝となるとは限らない。
――どちらにせよ、この“空母ダンジョン”探索も恐らくあと少し。
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