メリーゴーランドの仕掛けが浮世離れしていた件
「うわぁ、銃と弾丸のセットがかなり溜まって来ちゃったよ、護人さんっ。ワイバーン肉の集まりはどんな、紗良姉さん?」
「お肉の塊なら、もう5個は回収したかな。後は、風船のセットと風船ガムも1ダースずつくらい? スキル書も追加で、エルヴィスちゃんが拾って来てくれたね。
さすが新造ダンジョン、太っ腹なのは有り難いよね、香多奈ちゃん」
「そうだねっ、この調子でガンガン稼がないとねっ! 何しろ昨日のC級ダンジョンじゃ、ちっこい魔石ばっかりで儲けもほとんど無かったもんね。
2号ちゃんに迷子ちゃんっ、落ちた魔石は残らず拾うんだよっ!」
休憩がてら、そんなやり取りを行なう子供達はまだまだ元気。探索を始めてまだ1時間余りとは言え、来栖家チームは昨日も探索を行なっている。
その辺の疲れも鑑みて、なるべくこのダンジョン探索も素早く終わりたい護人。ハスキー達も心得たモノで、周囲を気に掛けながらの休憩に余念がない。
紗良の毎度の怪我チェックも滞りなく終わり、間引きの終わったエリアは静かなモノ。とは言え、まだ完全制覇には至らず次の層へのゲートも未発見だ。
最初の戦いに10分以上掛かったが、3層の探索はまだこれからと言った所。景観だけは和やかなこの遊園地ダンジョン、難易度が高いのは皆が知る事実。
そんな訳で、休憩を終えた来栖家チームは気を引き締め直して探索を再開する。銃持ちの敵や、空中モンスターの警戒も怠らずこなす面々である。
派手なタイルの歩道は歩きやすいけど、テーマパークは遊具施設の数も多いので死角が多い。先を進むハスキー達は、それを踏まえて慎重に進んで行く。
ちなみに、この層で新たに見掛けたモンスターは特に無し。逆に死霊系の敵がいなくなったのは、やはりアレは複合ダンジョンの弊害だったのかも。
そんな事を話し合う子供達は、この層にもそんな仕掛けがあるかもと興味津々。その推論にも一理あって、あの死霊エリアが1層だけだったのが腑に落ちない。
「確かにそうだな、2層のゲート奥は複合化が半端だったのは事実だし……だとしたら、この層にもゲートが2つあるのかな?
それとも、他の複合ダンジョンみたいに侵食し合ってるとか?」
「どっちでしょうね……まぁ、ここも空母の甲板と遊園地の複合化とも取れますけど。さっきみたいに、明らかに種類の違うモンスターが出れば少しはわかりやすいのかなぁ?」
「ふむふむっ、例えばあの丘の上のメリーゴーランドの仕掛けとか? あの遊具って、私達が近付いた途端に回り始めたよねっ!
あからさまに怪しいけど、あの回ってる馬はモンスターじゃないかって思うの」
そんな鋭い末妹の指摘に、なるほどと思わず納得する姫香と紗良であった。先行するハスキー達&護人も、もちろんその異変には既に気付いて臨戦態勢に。
何しろ音楽付きで、派手に起動した回転木馬は目立つなって言う方が無理!
クルクルと回るメリーゴーランドの馬は、角持ちもいれば翼持ちもいてとっても派手な容姿。騎乗者はいないと思っていたが、黒い靄が発生してそれぞれがオーガの姿へと変化する。
それらがいつの間にか木馬に騎乗して、鳴り響くBGMと共に丘の上から飛び出して来た。次々と丘を駆け降りる騎乗兵は、長槍を手に武者の佇まい。
オーガたちは上半身裸で、赤い肌の者もいれば青い肌の奴もいる。総じて筋肉隆々なのが共通点で、体長も恐らく2メートル超えの手強そうな敵集団である。
それを確認して、ハスキー達もヤル気マックスで迎撃態勢に入る。護人もルルンバちゃんと共に、防衛ラインを構築すべく前へと出て行く。
「おっと、強そうな奴等が群れを成して突進して来たなっ……ルルンバちゃん、ここは後ろに通さないよう踏ん張りどころだぞっ!
ハスキー達も、馬の蹄に巻き込まれないよう注意してっ!」
「みんな頑張れっ、オーガは手強いから怪我しないようにねっ!」
「私もフォローに行くね、ヒバリはお留守番だよっ」
後衛の姫香も盾役にと移動して、今回とっても影の薄いヒバリは寂しそう。相手の突進は相当な速さで、既に来栖家の前衛陣と衝突して凄い有り様。
さすがのハスキー達も力で挑まず、馬の足を狙っての一撃離脱を行なっている。ただしコロ助や茶々萌コンビは、敵の挑発にまんまと乗っかって割と悲惨な目に。
茶々丸に付き合わされた萌は、良い迷惑だが仕方がない。槍での突き合いに、何とか『全能のチェーンベルト』を活用して致命傷を避ける器用な萌であった。
ところが茶々丸は、敵の馬の突進を受け止めて体格差に吹き飛ばされる始末。コロ助も同様で、巨大化しても丘を駆け降りる勢いには抗えなかった模様。
そんな感じで、戦線に大穴が開いて来栖家チームの前衛陣は大慌て。姫香は逆に、騎乗兵の突進を圧縮空気の壁での自滅に誘ってナイスプレー。
ルルンバちゃんも、体格を生かしての壁役は任せておけって感じ。それから魔銃も使って、器用に後方の騎馬兵の相手までこなしている。
近付いて来た奴は、近接武器を振り回して次々と転がして行く。槍で少々突かれようが、AIロボの魔導ボディは何の痛痒も感じない頑丈さ。
まさに無敵ロボである、そして転がった敵は素早く護人が止めを刺して回っている。軟体幼児もそれをお手伝い、ノリノリで弱った敵を魔石に変えて行く。
一方の姫香は、コロ助と茶々萌コンビのフォローに大忙し。レイジーとツグミも頑張ってくれているが、飛翔するペガサス騎乗兵なんかも出て来る始末。
後衛の護りは2号ちゃんもいるし、いざとなればミケが何とかしてくれるだろう。少々頼りないが、迷子ちゃんことエルヴィスもいるので頭数だけは揃っている。
そう思って前へと出た姫香だったけど、そのお陰で素早く前衛のフォローに回れた。良い機転だったと、こっそり自分を褒めてあげたい所。
それはともかく、宙を飛ぶペガサス騎乗兵は『天使の執行杖』のラケットモードで無理やり撃ち落とす。堂々となど戦っておられず、その辺は勘弁願いたい。
その墜落した敵は、きっちりツグミが『土蜘蛛』で始末してくれていた。さすがソツのない動きは、裏(動画)で忍犬と呼ばれるだけはある。
後衛のフォローもソツが無く、地上を突進して来る8本足の騎馬兵を、紗良が《氷雪》で氷漬けにしている。そんな中、未だに回り付けるメリーゴーランド。
いや、回り続けるだけなら良いのだが、未だに敵を生み続けている厄介仕様。さすがにパペット木馬は産み出されてないが、黒い霧が一定のペースでオーガに変身している。
騎馬兵でないそいつ等は、総じてアーミー服を着て手にはサブマシンガンを所持していた。それに気付いた後衛陣が、慌ててその異変をチームに知らせる。
「うわっ、みんな大変っ……丘の上の回転木馬の仕掛けが、全然止まって無くて敵が新しく出て来てるよっ!
しかも銃持ちだっ、紗良お姉ちゃんにミケさん、何とかしてっ!」
「うわっ、本当だ……これは大変っ、魔法スキルを撃ち込んでも良いのかなっ?」
判断の付きかねる長女だったが、範囲魔法を撃ち込んで仕留めきれなかったら大変だ。そんな躊躇をしてる間にも、新たに生まれた兵団は銃撃戦での戦闘参加を決め込んで来る。
陽気なBGMを背に、戦況は何とも複雑化の様相を呈して来た。標的になった姫香は、慌ててルルンバちゃんの影に隠れて事なきを得る。
一方のハスキー軍団は、未だに騎馬兵団との混戦で標的から外れて今の所は安心。とは言え、コロ助は派手に出血しているし、茶々丸も未だに目を回している。
肝心の萌は、そんな2匹の介護に大忙しで超大変そう。何とか2匹を後衛へと連れて行こうと、孤軍奮闘する優等生振りはちょっと泣けてくる。
その萌のフォローをしていた護人も、回転木馬の異変には気が付いていた。そして、魔法を撃ち込もうとしている後衛陣に素早くオーケーサインを送る。
それから肩の上の軟体幼児にも、併せて氷系の魔法の指示を出す。これ以上の銃持ちの敵の増加は、さすがに不味いとの判断だ。
ハスキー軍団は、守りの要のコロ助がダウンしているので銃弾の掃射を浴びたら本気でヤバい。焦る護人だが、紗良の渾身の《氷雪》は見事メリーゴーランドに命中。
ついでに、周囲に散開していた銃持ちオーガ兵のタゲを取ったが、すかさずレイジーが《咆哮》スキルでタゲを取り返す。ついでにルルンバちゃんのレーザー砲が、敵兵を2体纏めて駆逐した。
肝心の回転木馬だが、ムームーちゃんの《氷砕》も加わり動きがあっという間に鈍くなった。ちなみに薔薇のマントも、氷系の魔法を一緒に撃ち込んでくれた。
どうやら過去に『雪竜の鱗マント』を食べた事で、その能力も受け継いだみたい。出来る事が増えて素晴らしいが、勝手な暴走は勘弁して貰いたい。
そんな護人の内心はともかく、今や丘の上の回転木馬は氷まみれで活動に風前の灯火状態。ダメ押しに、騒がしい銃射音が癇に障ったのか、ミケの『雷槌』が振る舞われた。
それが止めとなって、派手に壊れて行くメリーゴーランドの仕掛け。そして最後に、魔石(大)とオーブ珠をドロップして派手な戦闘は終了の運びに。
その間にも、レイジー達はタゲを取った残りのオーガ兵士を片付けて行く。そしてようやく周囲の安全を確保して、指揮を執っていた護人もホッと一息。
そうして地面には、やっぱり銃や銃弾や魔石のドロップが散らばる有り様。
「ふうっ、またもやミケに手伝って貰っちゃったね……そんだけこのダンジョン、難易度が高いって事なんだろうけどさ。
コロ助と茶々丸は大丈夫そう、紗良姉さんっ?」
「見た目ほどには傷は深くないけど、失った血までは回復出来ないから微妙かなぁ? 茶々丸ちゃんも、ダメージが脳に入ってると怖いかも?
取り敢えず、上級ポーションも一緒に飲ませるねっ」
「3層でこの敵の密度と、2匹も怪我人が出たのは確かに心配だな……意地を張らずに、岩国チームにヘルプを頼むべきだったかな?
香多奈は、ドロップ拾いは魔石だけにして銃関係は触らないようにな」
「は~いっ、そんじゃ2号ちゃんと迷子ちゃんも手伝って。それにしても、落ちてる魔石は小サイズしか見当たらないよねっ。
3層から微小サイズが出ないって、やっぱり異常かもっ?」
確かに末妹の言う通り、そしてボス級召喚装置のメリーゴーランドのドロップ魔石は大サイズである。そんな常識外れのこの“空母ダンジョン”も、ようやく道半ばと言った所。
いや、中身を見れば“遊園地ダンジョン”と言い直すべきか。
――その内容は、楽しいと言うよりスリリングに過ぎるかも?
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