二話(魏)一応、警備兵だからな
前話の続きになります。
三姉妹「「「専属歌手???」」」
洛陽で俺の行きつけの店に三姉妹を集め、俺は考えたプランを説明した。
つまり、彼女達を商売道具として店に貸し出すというシンプルな商い。
あんなオンボロ小屋で公演するより、百億倍マシだからな。
圭吾「そのために、最初の舞台を用意している。店主には交渉済みだ」
店主「よろしくね、嬢ちゃん達」
人和「よ、宜しく御願い致します」
圭吾「詳しい打ち合わせは、人和がやってくれ。天和と地和は俺と来い」
人和だけを店内に残し、俺は二人を連れて外に。
地和「どこに連れて行く気よ、アズマ?」
圭吾「衣装関係で来てもらいたいんだよ」
天和「衣装?」
圭吾「せっかくの初公演だ。印象的な衣装でキメたいだろ。丁度、それ関係に強い優秀な部下がいるからな」
天和「さっすが けいご~!」
地和「なるほどね~・・・って、"けいご"ー!?」
叫ぶ地和を置いておいて、俺は近場の屯所に顔を出す。
そこに俺が待たせていた"優秀な部下"が、大量の衣装をメンテしつつ待機していた。
圭吾「待たせたな、沙和」
沙和「あっ、たいちょ~。待ってたの~」
俺は二人を沙和に紹介した。
急遽、真桜と共同制作した"木製のパイプハンガー"一式を有効に活用してくれているようで、
十何着もの沙和が保存していた衣装が並んでいた。
圭吾「それじゃ沙和、後のことは頼んだぞ」
沙和「はいなの~!」
地和「え? アズマいないの?」
圭吾「アホか。俺が居たら着替えられないだろ」
天和「もぉ~、けいごのへんた~い」
「っるせぇ」と返して、屯所から退散する。
その際、沙和がジト目をしていたが、気付いてないフリしておこう。
圭吾「さて、確かこの辺に・・・おっ、おい凪!」
凪「っ!? あっ、隊長」
市場の離れ近くを警邏中だった凪に声をかける。
呼びかけたのが俺だと分かると、迅速に俺の下まで駆け寄ってきた。
凪「隊長、今日は確かお休みのはずですが」
圭吾「お休みだと、声をかけちゃいけないのか?」
凪「そ、そういう訳ではございません! 失礼致しました!」
深々と頭を下げる凪を見て、真桜と沙和がちょっかいを出すのが分かる気がする。
俺がやるのは可愛そうなのでこの辺りにし、凪にある"御願い"をした。
凪「───はい。では、・・・分かりました。すぐに警備隊全員に共有します」
圭吾「おう。言うだけ無駄だと思うけど、あんま張り切んなくていいからな」
凪「ハッ!」
返事からして張り切りすぎてるんだよなぁ・・・と思いつつも黙って、そこで凪と別れた。
これで初公演で出来る俺の仕事は終わった。
圭吾「後は、当人次第だな・・・」
そして、翌日の夕刻。
店の開店前、俺と三姉妹は店内で待機していた。
天和「見て見てけいご~」
くるっと回る天和が着ているのは、今日の公演の衣装。
中々露出が多くて、目のやり場に困る衣装だというのに、満足げに天和は喜んでいた。
それは、地和と人和も一緒だった。
人和「すごい・・・たった一日で、仕立てが完璧」
地和「あはっ! ちぃ、これ気に入っちゃった!」
まぁ喜んでくれたなら、沙和に感謝だな。
思ってたより、三人は緊張してないようだし、これならパフォーマンスに問題が起きることはないだろうな。
天和「ねぇ、けいご!」
圭吾「ぅわっ!? な、なんだよ?」
気付けば、座っていた俺の目の前に天和がいた。
うぐっ・・・前かがみの姿勢はヤバイっつうに・・・。
天和「衣装どう? って聞いてるのに、無視するんだもん。どうなの?」
圭吾「あ、あぁ。似合ってるよ」
天和「かわいい?」
圭吾「あーかわいいかわいい」
天和「気持ちが篭ってなぁい!」
圭吾「俺が、んな感想持っても仕方ないだろ。俺は警備の仕事に戻るから、本番がんばれよ」
そう言い残し、店主に挨拶をしてから店を出た。
満足な感想がもらえず、天和は頬を膨らませていたが・・・まぁ今度、飯でも奢って機嫌を取ってもらうとしよう。
圭吾が店を後にした後、地和と人和はお姉ちゃんである天和に詰め寄った。
内容は、圭吾を名前呼びにした件である。
人和「天姉さん、アズマさんといつの間に仲良くなったの?」
地和「そうよ! ビックリしたんだから!」
天和「ん~、けいごって口悪いけど、そこら辺の男よりカッコイイし~、悪くないかなぁって」
地和「・・・姉さん、本気で言ってる?」
天和「うん! 本気だよ!」
地和・人和「「・・・」」
二人は見合って、姉の態度に難儀していた。
相手は曹操の家臣とはいえ、何故か牢屋で寝泊まりしている人物。
しかも、その理由は秘匿にされ、バラすものなら打ち首とまで言われている。
そんな訳もわからない男に惚れる?なんて・・・二人の妹からすれば、気が気じゃない。
天和「さぁて、頑張るわよー!」
店は開店になり、続々と洛陽の民たちが入店していく。
その様子を、俺は凪と共に眺めていた。
凪だけではない・・・店の周囲を取り囲むように、昼番の警備兵が配置されている。
圭吾「急な依頼だったのに、よく集められたな」
凪「隊長の命であれば、招集に応じるのは当然です」
圭吾「あぁ、ありがと」
凪「っ・・・い、いえ。恐縮です」
凪は俯いて、赤面した顔を見せないようにする。
ちょっと、臭すぎただろうか・・・。
凪(よかった・・・元気になられたようで)
「そういえば、あの三人は何者なのですか?」
圭吾「魏の看板になる三人さ。今日の公演がうまくいけば、大将から正式に紹介されるはずさ」
凪「そうですか。では、私は巡回してまいります」
圭吾「ああ、俺は入口でずっと見張ってるから、何かあったら来てくれ」
凪「ハッ!」
相変わらず真面目なことだ・・・。
走り去っていく凪の背中を見送って、再び入店する客を監視する。
そこに見知った人物が声をかけてきた。
秋蘭「今日は警備隊の仕事ではなかったはずだが?」
圭吾「夏侯淵こそ、こんな所で何してるんだよ? まさか俺の監視か?」
秋蘭「ふっ、どうだろうな。ただ感心しているよ。お前は、私や華琳様の予想を簡単に超えてくる」
圭吾「伊達に平和ボケしてないから。戦争が終わったら、あのクソ猫耳以上に頭がキレるかもな」
秋蘭「面白いことを言う・・・楽しみにしておこう。さて私も、あの三姉妹の晴れ舞台を見せてもらおう」
圭吾「何でも、書き溜めた歌を全部披露するらしい。聴き入って、大将の元に帰れないかもな」
秋蘭「それは困るな」
微笑みながら入店する夏侯淵は、ブレずにクールであった。
おそらく大将に言われて評価しに来たのだろうな。
圭吾「・・・はぁ、暇だ」
人拐い1「で、どうだった?」
人拐い2「上玉でしたで。しかも三人ときた!」
人拐い3「よし。何としても成功させるぞ」
後日・・・。俺は、三人とオンボロ小屋に集まっていた。
そして、大将に渡された小袋を三人に配る。
天和「けいご、これは?」
人和「・・・お給金ですか?」
圭吾「そうだ」
夏侯淵の報告を受けた大将が、どうやら絶賛してくれたようだ。
初公演の後も色んなお店でも活動し、それに見合った給金を用意してくれたのだ。
圭吾「あれから、三人の依頼が殺到してる。これが軌道に乗れば、他の地域でも出ても心配はないな。
さすが張三姉妹と言ったところか」
地和「あ、当たり前でしょ! ふんっ!」
人和「ちぃ姉さん。報酬がもらえるのは、圭吾さんのおかげなんだから」
地和も人和も、徐々に打ち解けてきたようで、俺のことを認め始めている。
かくいう俺も、三人のカリスマ性を俺は認めつつあったのだ。
圭吾「今日は休みをもらったから、一日ゆっくりしてくれ」
天和「ほんと!?」
地和「圭吾のくせに気が利いてるじゃない!」
圭吾「"くせに"は余計だ。俺は警邏があるから、何かあったら近くの警備兵に言えばいいから」
人和「ありがとうございます。ここまで、良くしていただいて」
改めて礼を言われると恥ずかしいもので、俺は適当に答えて小屋を出た。
天和「けいご照れちゃって、可愛いなぁ~」
れんほーちゃんにお礼を言われた途端、顔を真っ赤にするあたり、けいごは初心なのだと思う。
普段、ぶっきらぼうな態度と相反して、余計に可愛く思えてくる。
人和「・・・私、圭吾さんのこと見方が変わりました」
れんほーちゃんも、けいごの魅力に気付いたみたい。
だって、けいごを見る目が完全に惚れてるんだもの。
地和「ま、まぁ、ちょっとは認めてやってもいいかな」
ちぃちゃんは、こう言ってるけど明らかに以前よりは好印象を持っている。
もっと素直になれば、けいごも優しくしてくれると思うのになぁ・・・。
天和「さぁて久々に三人で遊びに行こ! どこ行く?」
地和「あっ、沙和が前に言ってた呉服屋に行きたいと思ってたの! せっかくお給金があるから、贅沢してもいいわよね!」
天和「さんせ~い! れんほーちゃんもいいでしょ?」
人和「うん。私も新しい服ほしかったから・・・でも、私達だけで大丈夫? 最近は人拐いが出てるって噂よ」
天和「だいじょうぶ だいじょうぶ! だって───」
人拐い1「な、何故ここがバレたんだ・・・?」
ある空家に潜伏していた人拐い三名。
三名とも、屈強な警備兵によって取り押さえられ、それを指揮をする凪が人拐いリーダーの髪を掴み上げた。
凪「"隊長"は、既にお前らの存在を嗅ぎつけていた。隊長の目が黒いうちは、勝手なことができないと思え」
天和「かっこいい警備兵様だもの♪」
天和ってこんなに良い子だっけ・・・いや、良い子だよね!
だって、お姉ちゃんだし!
次回は、蜀側の閑話になります。
投稿は明日中に行いたいと思っております。




