三話(蜀)先を見越す部下は優秀ですね
蜀視点になります。
今話は、ただ一刀が調子に乗るだけです。
月「ありがとうございます、ご主人様」
一刀「大変そうだったからな。こういう時ぐらい力にならないと」
散歩中、徐州の屋敷で、洗濯物を川へ運ぶ月を見かけた。
いつも詠が一緒にしているのだが、今日は軍師郡で今後の方針を決めるため会議をしている。
そこに俺も参加しなきゃいけないわけだけど、朱里気を使ってくれたおかげで自由時間を得られたわけだ。
まぁ、夜になったら会議の結果について、俺の仕事があるわけだけど。
月「いえ、ご主人様には命を救っていただいた恩があります。これぐらい、些細なことですから」
一刀「俺としてはそこまで気負って欲しくはないんだけどね。まっ、月は良い子だから」
月「へぅ・・・」
そう言って、空いた手で月を撫でる。ここに詠が居たら、ブッコロされたかもな。
荷物で手が塞がっている月は、されるがまま川まで撫でられたまんま歩いた。
一刀「さぁて、やるか」
月「ご、ご主人様!? こういう事は私が───」
一刀「いいじゃん。正直、自由時間をもらったけど暇なんだよね、俺」
月「は、はぁ・・・」
せっせと始める俺を見て、諦めたように月も洗濯を始めた。
しばらく無言であったが、月がおそるおそる口を開いた。
月「あの、ご主人様。一つご質問よろしいでしょうか?」
一刀「ん、なんだい?」
月「あの衣服のことなのですが・・・」
俺はそれを言われ、動揺して手が止まった。
月が言っているのは、月と詠を保護したときに得た"黒ジャージ"のことだ。
以前、曹操の方が言っていた代物に違いない。
月「じゃーじ・・・と言いましたか。あれを見てから、ご主人様が執務室に篭るようになったと、お聞きしましたので」
一刀「そうなんだ。実は、愛紗にその事で怒られてね。もう大丈夫だよ」
月「そうなんですか! 皆さん、喜ぶと思います!」
一刀「そうか。喜んでくれるなら、やる価値ありだな」
月「はい!」
さて、月のお墨付きももらったことだし、行動に移すとしましょうか
一刀「と思ったけど、やっぱなし!」
愛紗と月には悪いが、せっかくの休みなのだ。
日頃の疲れを存分に部屋で取らせていただこう───
[バァンッ!!]
鈴々「お兄ちゃん! 大変なのだー!」
と思ったけど、やっぱ無理そう・・・。
一刀「おおぉ、これはすごいな」
鈴々に連れ出されてみたら、城の離れに"噴水"が・・・これは間欠泉か。
よく掘り当てたものだ。
一刀「これ、鈴々が掘り当てたのか?」
鈴々「そうなのだ!」
一刀「まじか・・・」
胸を張る鈴々がどうして離れを掘ったのかは聞かないでおこう。
星「ほぉ、本当に掘り当てるとは」
どうせ、この人が関わってるんだ・・・。
星はメンマをつまみながら、偶然を"装う"ように現れた。
一刀「鈴々に何を吹き込んだんだ?」
星「人聞きの悪い。私はただ「疲れている主のために、温泉でも掘り当てたらどうだ?」と」
一刀「ありのまま伝えてるよね!? 完全に誘導してますよね!?」
星「言葉のあやですよ。ほら主殿、鈴々が報酬を待っておりますぞ」
鈴々「鈴々、ダメなことしちゃったかな?」
一刀「そ、そんな事はないぞぉ! よーしよしよし! よくやったな、鈴々!」
鈴々「にゃ~~」
わしゃわしゃと頭を撫でてあげると、気持ちよさそうに目を細めた。
くそぉ・・・星は何を考えてるんだ。
星「では、主。せっかく鈴々が掘り当てたのだ。ここは、主殿の天の知識を使って良い案を思い浮かべてくだされ」
一刀「そりゃ勿論、ここを大衆浴場に整備して───まさか、今やれと」
星「ここに主殿がいるということは、手が空いていると見受けられる。家臣の努力を、このような形で残すのは悲しいではないか」
一刀「もっともなこと言って、ただ自分が早く温泉に入りたいだけでしょ」
星「おや? 良いではないですか。そうなれば、乙女のあられもない姿を拝めるのだぞ・・・勿論、私も主のために人肌脱ごう」
一刀「・・・」
いや、こんな誘惑に惑わされるな。
星はいつもこんなやり方で俺を───
一刀「やる気にさせてくれるからなっ!」
気付けば、陽は水平線近くまで降りてきていた。
御使いという立場をフルに使い、協力的な民に頼み込んだりして、
急ピッチではあるが、大衆浴場(混浴)施設が完成した。
何より、一番貢献してくれたのは、お昼寝後で通りかかった恋である
一刀「恋、ありがとな! すごく助かったよ!」
恋「ん・・・ご主人様の、役に立てた・・・嬉しい」
星「さすが主殿。その人徳の高さは、家臣である私にとって鼻が高いですぞ」
一刀「あーはいはい。嬉しい嬉しい」
星「おや、冷たい。では───」
一刀「おわぁっ!?」
恋「?」
突然、星が脱ぎだした。
慌てて背を向けて、首を傾けている恋と向き合ってしまった。
星「安心されよ。以前、主殿が贈ってくださいました"みずぎ"というものを、着ておりますゆえ」
一刀「そ、そうか・・・」
星「鈴々と恋の分もある。勿論、主の分もあるぞ」
コイツ・・・ここまで用意周到だと、突っ込む気力も失せるわ。
だが、そんな星に感謝しか湧いてこないのは、男の性なのだろうか。
鈴々「でっかいお風呂なのだぁ!!」
ざっぶ~ん!と鈴々が浴場に飛び込む。
今日は、愛紗はいないし大目に見よう。せっかくの一番風呂だ。
一刀「ってなわけで俺も!」
[ざっぷ~ん!]
星「はぁ、愛紗にバレた雷が落ちそうだな・・・ふぅ~、中々の湯加減だ」
恋「あったかい・・・」
おおぉ、美少女三人の入浴なんて見られる日が来ようとは・・・眼福眼福。
と思っていると、鈴々が俺の懐に背中を預けてきた。
鈴々「お兄ちゃん、あたたかいのだ~」
一刀「暖かいのは温泉と鈴々でしょ~」
鈴々「にゃはは~」
星「では、私も失礼して」
一刀「せ、星!?」
ピトっと俺の左肩に頭を乗せてきた。
丁度、上から見下ろす形になるから、自然と瑞々しい胸元が───
星「気になりますかな?」
一刀「・・・もう星きらい」
星「あっはっは、それは困りましたな」
完全に遊ばれている。
星は自前の熱燗を傾けて、おちょこでチビチビ飲み始めた。
一刀「はぁ・・・[ピトッ]・・・ん?」
この自由人にため息をついていると、反対の肩にさらさらな髪の感触。
そちらを向くと、いつも無表情の恋が顔を仄かに赤らめていた。
恋「ご主人様・・・あったかい」
一刀「あ、あはは~、そだね・・・」
これまた視線に困る状況に。
丁度、上から見下ろす形に(以下略
一刀(でもまぁ、こういうのもいいなぁ)
休みは突貫工事で無くなってしまったが、こういう平和な一日が一番だ。
この世界に来て初めて、こんなにゆったり出来たと思う。
しかも、三人も少女と一緒に入浴とか、偉くなったもんだ・・・あっ、今の俺は偉いんだった。
恋[ノソッ]←さらに密着度を上げていく。
一刀「れ、恋?」
恋「・・・だめ?」
一刀「いや、ダメって訳じゃないけど」
・・・ォォォォ
一刀「ん?」
・・・ォォォォォドドドドドドドッ
一刀「何の音───」
音々「ちんきゅーキィックゥ!!!」
気付いたら、俺の視界は音々の靴の裏で埋まっていた。
一刀「ぶほぉっ!?」
俺は痛みを感じぬまま、意識が途絶えた。
一刀「ん・・・」
桃花「ご主人様!」
目が覚めると、見慣れた俺の部屋の天井と、涙目の桃花が視界に入ってきた。
確か、三人で温泉に入っていたら・・・あれ、何があったんだっけ?
桃花「よかったぁ。一日経っても起きなかったから、みんな心配してたんだよ」
一刀「一日も眠ってたのか。それは悪かった」
桃花「ううん、大丈夫だよ・・・ただね」
一刀「ただ?」
何かを言いかけた時、部屋の扉が開け放たれた。
入ってきたのは、愛紗・・・なのだが、何故か青龍刀をお持ちです。
愛紗「ご主人様、お目覚めになられたのですね。よかったです」
柔和な笑顔。だが今、その笑顔が怖い。
後に聞いた話だと、俺が気絶して運ばれた当初は過保護になるほど、心配してくれたらしいのだが、
まぁ・・・理由があれだし。
愛紗「では、ご主人様。こちらが眠られていた間の執務でございます」
一刀「はい・・・?」
愛紗がそう言うと、朱里、雛里、詠が順々と部屋に入ってきて、俺の机に山のような資料を持ってきた。
一刀「あ、あの~、愛紗さん? こんなにあったら、ぼく死んじゃう」
愛紗「では私達はこれで失礼致します。桃花様、他のみんなも参りましょう」
桃花「あ、あはは~、ごめんね。ご主人様」
朱里「し、失礼致します」
雛里「・・・ごめんなさい」
一人ずつ、また一人ずつと部屋を退室していく。
一刀「待って! 見捨てないでぇ!」
詠「自業自得でしょ」
ちなみに、俺が仮建設した大衆浴場は、愛紗と音々の指示のもと完璧に完成させたようだ。
今でも武将や軍師たちが毎日のように通っているそうだ・・・。
俺だけ、出入り禁止されたのは、とても悲しい。
次話は、"独編"になりますが、更新は不定期となります。
申し訳ございません。
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メッセージの方、お待ちしております。




