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真・恋姫†無双~三人の御使い~  作者: 泣き虫
董編
30/35

第七話「終結へ・・・決着」

投降だいぶ遅くなり申し訳ありません!

麗羽「顔良さん、文醜さん。どうして、わたくし達は囲まれているのですか?」


猪々子「麗羽様、これはあれですよ。あたいら、敵の罠にかかったぽいです」


斗詩「ぽいじゃなくて、敵の罠にかかっちゃったんですよぉ!」


関に入った瞬間に囲まれた袁紹軍の後方で、馬を走らせる曹操軍の面々が視認した。

先頭の春蘭と秋蘭、季衣、流琉は苦笑する。


秋蘭「華琳様のお考え通り、伏兵は用意していたようだな」


春蘭「ふんっ! 私にだって罠だと分かるぞ」


季衣「本当にバカなんですね、袁紹軍って」


流琉「あはは・・・ですが、思ってたより兵が多いですね。どうしますか、秋蘭様?」


秋蘭「作戦は継続する。助ける義理はないが、袁紹軍と共闘して敵を退けるぞ。季衣と流琉は左右から挟撃。私と姉者はこのまま突っ切る」


春蘭「おう!」


季衣・流琉「「はいっ!」」


元気な返事を聞き、秋蘭は満足げに微笑む。

しかし、秋蘭達が関を通過する前に董卓軍は後退していく。


秋蘭「なぜ退く?・・・まだ何か───」


春蘭「このまま突撃だあ!」


秋蘭「お、おい姉者! それでは袁紹と一緒だぞ!」


妹の静止なんて耳に入らず、春蘭は猪のごとく馬を走らせていく。

そこで、秋蘭は思い出す・・・私の姉は、袁紹に引けをとらず馬鹿なのだと。


春蘭「張遼ぉ!!」


麗羽「むっ、華琳さんに負けるわけにはいきませんわ! わたくし達もまいりますわよ!」


斗詩「えぇ!? また罠だったら、どうするんですかぁ!?


猪々子「いいじゃねぇか。斗詩は、あたいが守ってやるからよ!」


斗詩「そういう問題じゃないよ、文ちゃん!」


猪突猛進で駆ける春蘭を筆頭に、袁紹軍がその後に続く。


秋蘭「くっ、私達も早く向かわな───[ッッッ]───」


突然の地鳴り。

その震源を辿ると今、通ろうとしていた関内部からだった。


秋蘭「っ!? 全軍、退けぇ!」


呼びかけに応じた魏軍が引き下がると、関に残された爆薬が一斉に炸裂し、瓦礫が洛陽に繋がる道を塞いだ。


秋蘭「何ということだ・・・姉者」






霞「音々音の予想通りや。さすがやで・・・全軍、反転! 突撃やぁ!」


霞が率いていた軍は、撤退姿勢から一転し攻勢にでる。

先頭を切る霞は、猛進してくる春蘭を捉えた。


霞「曹操軍の夏候惇・・・相手にとって不足なしや」


春蘭「張遼! 私と勝負しろぉ!」


霞「望むところやっ!」


[ガキィンッッ!]


霞「ぅっ、なんちゅう力・・・!」


春蘭 (あと少し、剣を振るのが遅かったらやられていた・・・。馬上じゃ不利だ)


春蘭は霞の馬に蹴りを入れた。

驚いた馬を霞は諌めようとしたが、諦めて馬から飛び降りた。

春蘭も馬から降りて、愛用の大剣を構える。


霞「なんや? 馬の上じゃなかったら、うちに勝てるとでも思ぉてるのか?」


春蘭「ふんっ。慣れない戦い方では、加減ができんのでな。貴様を華林様のもとに連れて行くっ!」


霞「言ってくれるやんっ!」


心臓を狙う霞の長槍の突きを、春蘭は大剣でいなし、お互いの力を押し合う。

霞の方が、じりじりと押され始めて、同時に長槍の柄から嫌な音が鳴る。


霞(ちっ、力負けする前に得物が先にいってまう・・・)


春蘭「この程度とは興醒めだ。もっと打って───[ビュッ]───っ!?」


風切音とともに、春蘭の挑発は途中で止まった。

大剣に篭められた力が解けると同時に、春蘭はそこで膝をついた。

───片目を何者かによって射られたのだ。


霞「っ!? 誰やっ!? うちの決闘に水を差したんわ!?」


霞は叫んだが、矢を放ったのが自分の兵なのか、袁紹軍によるものなのか分からない。

すでに、それを確認できないほど乱戦状態に突入していた。

だが───




春蘭「全ての兵よ、よぉく聞けぇ!!」




戦場に木霊した一声に、乱戦していた両軍がピタッと止まった。

その全員の視線の先は、矢の刺さった片眼を抑え、歯を食いしばって立つ春蘭の姿。


春蘭「この五体と魂、全て華琳様のもの! 断り無く失ってはならない!」


そう宣言し、刺さった矢ごと左目を抜き───


春蘭「永久に我と共にあらん!」


霞「なっ!?」


春蘭「むぐっ、もぐっ・・・!」


おもむろに口に頬張った。

噛みづらそうに目玉を食べる春蘭に、兵士達は気分悪そうに眺めている。

───ごっくん、と春蘭の喉が鳴った。

兵士の一人が「本当に、食べやがった・・・」と呟く中───


霞「っ・・・っ」


霞だけが春蘭の行為にわなわなと震えていた。

・・・こんなバカな奴がいるのかと。


霞「ええやん・・・ええやんええやん! これが"魏の大剣"かいな。こんなアホォな奴やったとはなぁ!」


春蘭「むっ、馬鹿にされている気がするが・・・そうだ! 私が華琳様の"魏の大剣"だ!」


ふんっと胸を張る春蘭の後方・・・袁紹軍より向こうから、瓦礫を乗り越えた曹操軍の姿が見える。

合流されれば、確実に霞の部隊は壊滅。

だが、霞は引くことはなかった。


霞「手加減なんてせぇへんで」


春蘭「当たり前だ。全力で・・・来い!」


霞はにやっと笑い、槍を切っ先を向けて飛び出した。

二人の距離が縮まり、神速と揶揄される突きが心臓を狙う。

対して、隻眼の修羅は、ただ大剣を横一閃に振るうだけだった。


霞「なっ!?」


それだけで槍はただの棒となり、勝敗は一瞬にしてケリがついた。












【洛陽・・・城下町】


霞の部隊が投降して戦闘が終結した中、洛陽の城を脱出した圭吾、月、詠の三名は、裏道の物陰に隠れて息を潜めていた。


詠「追っ手は?」


圭吾「・・・来てねぇな。思ったより呆気ねぇ」


詠「その方がありがたいわよ・・・ふぅ」


ようやくそこで緊張の糸が切れたのか、壁にずるずると背中を預けてうずくまる。

その隣の月は、心配そうな眼差しを送るが、詠は作り笑いで制した。


月「詠ちゃん・・・」


詠「大丈夫よ。絶対、僕がなんとかするから」


圭吾「仲良しこよしは良いが、実際どうすんだ?」


詠「今考えてるわよ・・・って、あんたはいつまで私達といるのよ!?」


圭吾「あん?」


月「え、詠ちゃん、この人は私達を助けてくれたんだよ。そんな言い方しちゃだめ」


詠「だって、思い返せばコイツ味方でもないのよ! あんた何者!?」


立ち上がて胸ぐらを掴もうとする詠の手を、圭吾は軽く叩いて弾いた。


圭吾「お友達の言う通り、俺はお前に貸しを作ったんだ。俺が何者かなんてこの際見逃せよ。安いが、それで貸し無しにしてやる」


詠「ぐぬぬ・・・はぁ、もういいわ。それで? あんたはいつまで私達と一緒にいる気? 正直、私達といても危険なだけよ」


圭吾「あっそ」


キッカケは月に恩返しするためだったが、成り行きと気まぐれで圭吾はここまで付き合ってきただけなのだ。特に、このまま付き添う意味はない。


月「あの、助けていただいて、ありがとうございます。ほら詠ちゃんも」


詠「うっ・・・わかったわよ。ありがとね、あんたがいなかったら正直危なかったわ」


圭吾「・・・はあぁ」


圭吾はバツが悪そうに黒ジャージの上着脱いで、月の肩にかける。


圭吾「お前の服は目立つから、気休めだが羽織っとけ。あと、この先に開いてる店がある。もしかしたら、匿ってくれるかもな」


月「は、はい・・・」


ふら~と去っていく圭吾を見送る二人。

詠は、最後まで読めない圭吾の言葉を疑問を抱いたが、上着を受け取った月は疑うことなく、そのお店に向かうことになった。


雪連「う~ん、見事に人気がないわね~」


月・詠「「っ!?」」


詠「月、早く移動しよう」


月「うんっ」






明命「───? 雪連様、あそこ何か落ちてます」


雪連「ん~?・・・っ!? これって───」














洛陽手前。

"建前"、袁紹軍が一番乗りの洛陽入城を果たした頃・・・


華琳「はっ、はっ、はっ・・・!」


『夏侯惇将軍が深手を負った』・・・その報告を受けて、華琳は護衛もつけずに医療班が駐屯する天幕に向かっていた。

邪魔な兵は、それが大の男でも簡単に華琳は吹っ飛ばしていた。


華琳「春蘭っ!?」


息をぜぇぜぇ言わせながら、天幕に飛び込むとそこに春蘭と秋蘭がいた・・・。

華琳に気づいた春蘭は───


春蘭「あっ、華琳様!」


片眼の損失なんてなんのその、ケロッとしていた。

秋蘭からもらった蝶の眼帯の奥は、すでに義眼がはめられている。


春蘭「華琳様、ご命令どおり張遼を連れてまいり───[ギュッ]───華琳様?」


座っていた春蘭に近づいて抱きしめた華琳。

控えめな胸に春蘭の頭を受け止め、その感触に春蘭は赤面した。


華琳「よかったわ。無事で」


春蘭「華琳様・・・」


春蘭は華琳の胸に酔いしれて、しばらくそのままだった。

その場にいた秋蘭は黙って天幕から退室して、外で様子を伺っていた数人に首を振った。


季衣「春蘭様は、大丈夫なんですか?」


流琉「大怪我と聞いておりますけど・・・」


秋蘭「姉者なら無事さ。だが、今は取り込み中でな・・・張遼もすまないな」


霞「別にうちにまで謝らんでええ。捕虜なんやから縄でくくってくれても文句は言わん」


季衣「何言ってるの? そんなことするわけないじゃん」


流琉「ですよね、秋蘭様?」


秋蘭「ふっ・・・あぁ、お前が華琳様に忠誠を捧げるのであれば、仲間として迎い入れよう」


霞「うへぇ、待遇ええな。しかも、こんないい子ちゃんいるなら安心やわ~」


洛陽の方で、抜け殻の城に地団駄を踏む麗羽の声が木霊する。

それを耳にした霞は、一末の安心を得たように微笑んで、新たな軍に身を委ねることとなった。

こうして、反董卓連合戦に決着はついた。

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