第五話「洛陽・・・十常侍の脅威」
日は登り、また虎牢関で激闘が繰り広げられている。
その戦いを思い、洛陽の城の一室で俯いているのは、董卓こと"月"。
華奢な体躯と白い肌に、煌びやかな服がよく似合っていた。
詠「月?」
その傍らで心配そうに、膝に置かれている月の手に片手を添える賈詡こと詠は、諭すように柔らかい口調で話しかける。
詠「月は絶対僕が守る。連合の方は、霞たちが何とかしてくれるから、月は安心して」
月「詠ちゃん・・・」
詠「じゃあ僕は少し出てるから。何かあったら呼んで」
月「うん」
月はもう何日もまともに寝れていない。
連合からの進行に、仲間の安否に心を悩ませているのもあるが、まだ息を潜めているかもしれない十常侍の手先の驚異に脅かされている。
そのことを感じ取っている詠は、小さな拳を握り締めて牢屋へと足を運ぶ。
詠「じゃあ、始めるわよ」
この城で牢に入れられているのは一人のみ。
昨日の夜に侵入を図った、所属不明の少年・・・東 圭吾。
詠「あれ?」
しかし、収監したはずの圭吾は姿を消していた。
というか檻の鍵が鈍器なもののようで、破壊されていたのだ。
そして見張っていたはずの兵は、下着姿の状態にされ、牢屋の中で目を回している。
詠「ちっ、急いで戻るわよ! 月が危ない!」
兵A、B「「はっ!」」
圭吾「凪に鍛えてもらった甲斐があったな」
見張りの兵士から剣だけを拝借した圭吾は、手当たりしだいに一つ一つの部屋を物色する。
引き出しからベットの下まで確認するが、それらしいものは見つからない。
圭吾「これじゃ、いつまで経っても見つからねぇ・・・」
4つ目の部屋もハズレ。
細心の注意を払って廊下に出ると、遠くから数人の足音が聞こえた。
急いで隣の部屋に入って───
圭吾「ふぅ・・・もうバレたのかy」
月「・・・」
圭吾「・・・」
月SIDE
圭吾「・・・」
月「・・・」
突然、部屋に侵入してきたのは、見たこともない服装の殿方でした。
その方は寝台で腰掛けている私を見つめたまま固まっています。
すぐに味方の兵隊さんではないことが分かりましたが、不思議と恐怖心はありませんでした。
月「え、えっと、どちら様ですか?」
圭吾「はっ!? あ、えっと、そのだな───」
[バンッ!]
詠「月っ、無事っ!?」
月「え、詠ちゃんっ!?」
開け放った扉で、殿方の姿が隠れる。
詠ちゃんと付き従えた兵隊たちさんは、彼の存在に気付いてない模様。
詠「月、一緒に来て! ここは危険よ!」
月「どうしたの・・・?」
詠「脱獄よ! 急いで!」
月「え、うん・・・」
詠ちゃんに手を引かれて部屋を出される時、チラッと殿方が隠れている扉に目をやる。
言おうか迷ったが、彼が脱獄犯にどうしても思えなかった。
心の中で謝りつつ、私は自室を後にした。
圭吾SIDE
[バタンッ・・・]
圭吾「───ふぅ~~」
焦った~。何故かあの子は俺のことを言わなかった。
これは神の加護を感じずにはいられないが、別にお祈りをする気はない。
さっさと玉璽を探し出そう。
圭吾「あの子がお偉いさんなのは、なんとなく分かった。それならこの部屋にあるかもな」
と、勝手に想像して机の引き出しを引いた───
圭吾「あ、これっぽい」
何の生き物かは分からんが、彫刻で象られた玉璽らしきものを発見。
これ、大事なものだよな? こんな簡単に見つかるとはな・・・。
何はともあれ目的は果たしたんだ。あとは脱出するだけ。
圭吾「・・・よし、いないな」
廊下に人の気配はない。
さっきの眼鏡はもう遠くに行ったようだ。
今の内に───
詠『月から離れてっ!!』
・・・無視無視───したいけど。
圭吾「・・・」
月とは、さっきの女の子だよな。
理由はどうあれ、あの子のおかげで玉璽を手に入れられた、と考えてしまう。
圭吾「───ああクソっ!」




