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真・恋姫†無双~三人の御使い~  作者: 泣き虫
閑話
23/35

三話(魏)「不真面目で優しい隊長」

凪SIDE


凪「アズマさん!」


圭吾「げっ!?」


警邏中、私は伸び伸びと釣りを愉しむアズマさんを見つけた。

それだけなら怒るなんて、警備隊の上司であるアズマさんに対し失礼だ。

だがしかし───


凪「今日はアズマさんが担当ですよね? ここで何をしているので?」


圭吾「・・・ちょっと、今晩の飯を」


凪「食事なら給仕が用意するではないですか。その言い訳には無理があります」


圭吾「・・・っ!」


釣竿を捨てて、ダッと逃げ出した。


凪「逃がしませんよっ!」


氣を脚に込めて瞬間的に脚力を上げる。

一瞬にしてアズマさんの前に回り込んで、腕を掴んだ。


圭吾「ちっ・・・あー、分かった分かった」


凪「はぁ。では、まずは市場の方へ参りましょう」


観念したアズマさんの腕を引っ張る。

私達三人が華琳様に士官し、警備隊に配属された数日後、急にアズマさんが隊長として配属された。

私としては、村での功績を考えれば当たり前だと思った。

期待もした。尊敬できる隊長だと思っていた・・・それが───


圭吾「おい、ガキじゃねぇんだから離せよ!」


まるで駄々をこねる子供だ。

あの時の勇姿が、今では見る影もない。

ただでさえ真桜と沙和というサボり魔がいるというのに、私にかかる負担が増すばかり。


凪「アズマさん、あなたは我ら警備隊の隊長です。部下に示しが付くように振舞ってもらわなければ、士気に関わります」


圭吾「あ? あー、俺って隊長だったな」


凪「・・・」


圭吾「・・・怖い顔すんなよ」


凪「はぁ・・・あの村での勢いはどうしたのですか?」


圭吾「大将からは俺の自由にやっていいって命令されてんだ。もうほっといてくれ」


凪「そうはいきません。華琳様の御意向であったとしても、警備隊隊長として我々の先頭に立ってもらわないと」


圭吾「何でお前が必死なんだよ? 俺は別にそんな上等なものじゃねぇ」


凪「そんなことありません。あなたは、あの村を───


真桜「おっ、凪やんけ~!」

沙和「アズマさんも一緒なの~!」


確か、真桜と沙和は今日休みだったな。

私達に気づいた二人は、小走りして近づいてくる。


真桜「珍しいやん、アズッちもおるんかい?」


圭吾「おい、そのあだ名やめろっつってんだろ!」


沙和「え~、でもアズッちって、可愛いと思うの~!」


圭吾「それを俺のあだ名にすんなって言ってんだよ。その減らない口縫うぞ」


睨まれた沙和は、ささっと真桜の後ろに隠れた。


圭吾「悪いが、俺は帰る」


凪「あ、アズマさん! まだ警邏の途中です!」


圭吾「ちゃんと自分の担当地域はやるよ」


振り向きもせず手をひらひらとさせて、アズマさんは城壁近くの裏道の警邏に向かっていった。

残された私たちは、アズマさんの背中が見えなくなるまで目を離せなかった。


沙和「───ぷはぁ! きょ、今日は一段と怖いのぉ」


恐怖で呼吸を忘れていた沙和は、ようやく真桜から離れた。


凪「お前達がアズマさんをからかうだからだろう」


真桜「それにしたって、今のアズッち冷たすぎるやろ。。ウチと一緒のときは活き活きとしてはんのに」


凪・沙和「「えっ!?」」


沙和「真桜ちゃん! それは二人っきりってことなの!?」


真桜「そ、そうや。アズッちが面白いカラクリの案があるっちゅうて───なんやなんや? おもろい話なんてあらへんで」


沙和「それは、これからじっくり聞くのぉ。じゃ凪ちゃんまた後でなのっ!」


真桜「ちょい押すなやぁ!」


凪「ぁ・・・」


真桜を連れ去っていく沙和を一瞬、呼び止めようとした。

しかし今は勤務中。気になったとしても、私情を挟むわけには行かない。


凪 (そういえば、私はアズマさんのこと何も知らない・・・)


いつもふらっと現れて、夜になると姿を消す。

夜に緊急の報告があるときは、秋蘭様を一回通さないと、アズマさんがやってこないのも不思議だ。

一体、アズマさんとは何者なのか・・・?













季衣「兄ちゃん?

   すっごく優しいよ! ご飯に季衣が大好物なものが出ると、絶対分けてくれるんだぁ!

   え? 普段はどこにいるかって?

   流琉と一緒にご飯食べるとき、兄ちゃんがやってくることは多いけど、他の時は分かんない」







流琉「兄様、ですか?

   よくご飯を食べに来てくれます。いつも「うまいうまい!」って褒めてくれて・・・。

   食事後の兄様の行動ですか?

   いえ、私もよくは知らないんです。

   えっ!? 何で"兄様"って呼ぶのか、ですか・・・。

   その、私、お兄さんっていうのに憧れてて、季衣も呼んでいるから、羨ましいというか・・・その───








桂花「あの家畜? 教えるどころか、知りたくもないわよ!」








春蘭「は? アズマ? 誰だ、それは」








と、言った感じで聞いて回った。

残っているのは───


凪「秋蘭様、のみ」


華琳様に聞くのは恐れ多い。

秋蘭様に対してもそうだが、この際仕方がないと心の中で言い訳して扉を叩いた。


凪「秋蘭様。私です」


秋蘭「むっ、凪か? 入ってきて構わないぞ」


お許しをいただいて入室する。

春蘭様と共同の部屋で過ごしていることなのだが、春蘭様は不在のようで秋蘭様一人で、書類に目を通していた。


凪「夜更けに失礼します。今、よろしいでしょうか?」


秋蘭「ああ、構わないぞ・・・アズマのことだな」


凪「っ、何故それを・・・」


秋蘭「先ほど、姉者が『アズマ? アズマ?』と呟いていてな、もしかしたらと思っていた」


秋蘭様は、書類を置いて茶を淹れる。

恐縮ながら椅子に座って、淹れてくれた茶を飲む。


秋蘭「それで、何を聞きたいのだ? 私が話せる範囲なら答えよう」


私は、アズマさんの不明な点を秋蘭様に質問した。

返ってくるのは、季衣将軍と流琉将軍から聞いていた情報と同じもの。

だが───


凪「アズマさんは、どこの出身なのですか?」


秋蘭[ピクッ]


一瞬動いた眉を、私は見逃さなかった。


秋蘭「彼はある村の農家の一人息子だ。賊に追われ、ある貴族に拾われたのだが」


凪「待遇に耐え切れず逃げ出した、と流琉将軍から聞きました」


秋蘭「そうか。なら、これ以上の説明は不要だな。他は?」


凪「えっと・・・」


その後も、アズマさんの年齢や警備隊長に就けさせた華林様の理由などを尋ねた。

・・・まさか、自分より年下だったとは思わなかったけど。

いやいや! 年下といっても一つ、二つ差だから。


秋蘭「他にあるか?」


凪「いえ、もう十分です。お時間を取らせて申し訳ありません」


秋蘭「構わん・・・正直、私もあの男は掴めん」


凪「秋蘭様は、アズマさんと交流が?」


秋蘭「それなりにな。字が読めない書けないということで、私が指導している。真面目に取り組んでいるよ」


凪「アズマさんが、真面目に・・・」


見つけなければ警邏に出向いてくれないし、少し目を離せば姿をくらます。

そんなアズマさんが、真面目に勉強を・・・想像できない。


秋蘭「ふっ・・・信じられないって顔だな」


凪「っ」


秋蘭「あんな態度だから無理もない・・・良いものを見せてやろう」


椅子を引き、机の引き出しから出したのは、破布(古い布)の束。


凪「それは・・・?」


秋蘭「アズマが読み書きに使っていたものだ。少々、面白いことが書かれていてな。本人に無断で拝借してきた」


む、無断でなんて・・・でも、少し気になる。


秋蘭「読んでみたいか?」


凪「・・・はい」


好奇心に負けて、秋蘭様から破布を手渡される。

そこに書かれた字は・・・物凄く、汚かった。

だが読めなくはない。えーと───


凪「警備隊隊員の、ぷ、ぷろふぃーる?」


秋蘭「ぷろふぃーる とは何か分からないが、書いている内容からすれば、お前達警備隊の素行調査みたいなものだな」


隊員一人一人の性格、仕草、癖、口調がそこには書かれていた。

もちろん、私に関することも。


凪「・・・」


秋蘭「明日、それを華琳様に報告と一緒に提示しようと思っている・・・その前なら、持っていていいぞ」


凪「あ、ありがとうございますっ! 失礼しますっ!」


続きが気になってしまい、私は破布の束を抱えて部屋を後にした。












凪「ん・・・」


私は、寝てしまっていたのか。

机に突っ伏した状態で寝たせいで、体のあちこちが痛い。


凪「ぁ、返さないと」


机の上に散乱している破布をまとめて、秋蘭様の部屋に向かうため扉を開けた。


圭吾「おっと」


凪「あっ・・・」


丁度、アズマさんが扉の前に立っていた。

すぐに破布を後ろに隠した。


凪「ア、アズマさん、どうしたんですか?」


圭吾「いや、昨日は俺のことについて聞いて回ってたって、季衣と流琉が言っててな。それで本人が来た訳だが」


凪「あっ、その事はもう自分に決着つけられました。す、すみません、気を悪くしましたか?」


圭吾「別に悪くしてねぇよ。お前が陰険な奴じゃないって、何となく分かってるし・・・ん? おい、寝癖」


凪「え? あー、今起きたばかりなので、後で直します」


圭吾「・・・大将のとこに行くのか?」


凪「? いえ、秋蘭様のもとにですが」


圭吾「んじゃ、俺が夏侯淵に遅れるって言っとくから。ほれ、髪整えて来い」


凪「し、しかし!」


圭吾「真面目なのはいいが、いつか無理が来るぞ」


凪「・・・は、はい」


圭吾「じゃあな」


部屋に押し戻され、アズマさんは表情には出さないが満足気にその場から立ち去っていく。


凪「あ、あの! ありがとうございます!」


圭吾「あ?」


顔だけ廊下に出し、アズマさんにお礼を言うと、何故かバツが悪そうな顔をする。

・・・もしかして、照れ隠しなのか?


圭吾「・・・これでも、警備隊全員を見てるつもりなんでな。気遣うぐらい、お礼を言われることじゃねぇよ」


手をひらひらと振って、今度こそアズマさんは立ち去っていった。


凪「・・・知っていますよ、見てるってこと。アズマ"隊長"」


その日から、私はアズマさんを正式に隊長と敬称をつけるようになった。















そして、数日後・・・。


真桜「たいちょ~。ウチ嬉しいわ~」


沙和「私達のこと、隅々まで見ているなんて~」


華琳様から全員に、「警備隊ぷろふぃーる」の写しが出回った。

あのぶっきらぼうな隊長の意外な一面に、隊全員、隊長に好印象を抱いたのだが。


部下1「楽進隊長、今日もアズマ隊長は・・・」


凪「あ、あぁ・・・来ていない」


しばらく、警備隊に顔を出すことは無かった・・・。

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