155。じゃあこの茶番はなに!?
「し、しかし神は下界の出来事に干渉しない、してはならないでしょう?」
と、魔王たちに呆れられたイェリアは慌てて話を進めた。
彼女が言っているのは世界の出来事に直接干渉しないという神々が定めた掟だ。
魔族と人間の戦争は元を辿れば神々、魔神と他の神が争っているから起こった出来事だ。自分たちの力はあまりにも膨大すぎて戦いを続けたら世界は壊れると思い、ほんのちょっぴりの力を授かって戦いを人間と魔族に託した。
もし一柱の神は下界に降りて、何かに直接干渉したら魔神は黙るはずがなく、第二神々の戦争になりかねない。
だから掟が作られたのだ。
「だけど神は降臨した」
かもしれない、そうレイアは更に言葉を足した。
「まさか、一年前の光玉の正体はっ!?」
レイアが追っている光玉、約一年前に自分たちが住んでいる魔大陸の空に飛んでいた光玉の正体は降臨した神だと思って、イェリアは険しい顔を浮かべた。
他の神々に破られた以来、魔族たちは誰も神、魔神の神託を聞いた人はいないから魔神はもういないのでは? と思っているイェリアは光玉の正体は魔神を破った他の神である可能性が高いと結論に出た。
もしそうだったら魔族が危ない、だから彼女は険しい表情を浮かべたのだ。
「神じゃないわ」
そんなイェリアの心配を感じたレイアはそう断言した。
「なぜそう言える?」
「あー、聞いたのよ」
根拠はなんだ? と魔王からの質問に対してレイアは頬を指先でポリポリと掻きながら苦笑を浮かべ、光玉は突然舞い上がって飛び去ったと間近で見た人、ドライアードに光玉の正体を教えてもらったと説明した。
「じゃ、じゃあ光玉は神ではなくーー」
「精霊王、だと?」
困惑しているイェリアと険しい顔をしている魔王の確認にレイアは頷いた。
「でもどうして精霊王様は光玉になってこっちらへ飛んだの?」
「それは……」
「まさか、神にやられた?」
目を逸らし、答えに躊躇ったレイアに魔王は何があったかを悟った。
「正直な所、わからないわ」
あの時、精霊王、フェルは確かに死んだとドライアードは彼の状態から判断した。命の大精霊であるエイオンもそう断言した。
「でも生きている」
確証はない、まるで自分に言い聞かせるようにレイアは俯いて言った。
「どういう事?」
「……」
さっき死んだと言って、今生きていると言った。イェリアは意味がわからないと言わんばかりに首を傾げて、魔王はレイアの次の言葉を待つ。
「詳しいことはわからないけど、命の大精霊様は彼はまだ生きてると言ったのよ」
「なるほど。つまり約一年前に魔大陸の空を飛び去った光玉は精霊王で、お前の目的は精霊王を連れ戻す?」
合ってるか? そう魔王はレイアの瞳を真っ直ぐに見て問うた。
「そう」
「……」
「魔王様?」
即答された魔王はしばらく黙ると溜め息を吐いて、肩をすくめながら言い出す。
「お前の目的はよくわかった」
それと、とレイアが何も言える前に魔王は更に続ける。
「精霊王の妻である事も信じよう」
「へぇ、あっさり信じるんだね」
根拠はなんだ? 今度はレイアの番がそう問うと魔王は笑みを浮かべて理由を述べた。
「お前の指輪を間近で見た瞬間わかったんだ」
確かに昨日の謁見で魔王はレイアの指輪を見させてもらったな。その時に魔王は指輪を触らずすぐに返したけど。
「「……」」
「な、なんだ?」
身分が証明された事はありがたいの事なのに、当のレイアはイェリアと一緒に半眼で魔王を見ていて、彼女たちの視線を受けている魔王はたじろいでしまった。
「「じゃあこの茶番はなに!?」」
あ、怒った。
▽
「じゃあなに? 最初からあたしの正体わかったってわけ?」
「時間を無駄にしましたわっ!」
信じられない! そうレイアたちは魔王に向かって抗議している。
「な、なぁ、そろそろいいか?」
そんな二人を仰いでいる魔王は震えている……。
「あんたは一度反省した方がいいわ」
「レイアさんが言う言葉ではないけど、同意ね」
「ちょ、イェリアそれどういう意味!?」
仲良く、息ぴったりで魔王に文句言っているのにイェリアは突然裏切った!
「事実でしょう!? あなたはこいつと同じよ!」
口喧嘩し始めたっ!
「なにっ!? こいつよりマシでしょう!?」
「何がマシなのよ!? さっき同じしょうもない事したでしょう!?」
「こいつが勝手に真似したから、あたしの方がマシでしょう!?」
「確かにそうだけど!」
「ふ、二人共そこまでにしてくれないか?」
喧嘩しているのはレイア達だけど、ダメージを受けているのは魔王だな……。
「「黙りなさいっ!」」
「う、うぅ……」
魔王の精神がっ!
「んで、どうしてあたしを信じる事にしたの?」
まあいいわ、とイェリアと言い合っているレイアは溜め息を吐くと魔王に問い詰めた。
「そういえば指輪を見せて貰ってからと言いましたけど、何か根拠でもありますか?」
確かにレイアの指輪を間近で見た瞬間魔王は疑いを捨てた。レイアたちが知りたいのはなぜそうした? なぜたった一つの指輪を見ただけで確信に着いた? といった質問の答えだ。
「その前に一つ」
「今度はなに?」
「言っておきますがくだらない事でしたら容赦しませんよ?」
「わ、分かってんだよ……」
話の進行を拒んだ魔王は冷たい眼差しから逃れるようにちょっと俯いて自分の手を見る。
……震えている手を!
「そ、そろそろ座らせてくれないか?」
自分の言葉に対してどんな反応をするか魔王はレイアたちの顔を交互に伺っている。
「なに言ってんの?」
「座っていますが?」
その通り、魔王はすでに座っている、にも関わらずそのリクエストだ。
なんでそう要望した?
「普通に座りたいんだよ!」
「それも普通でしょう?」
「正座がっ!? どこがだよっ!?」
そう、彼は正座しているからだ!
「魔王様、正座は立派な座り方の一種です。今の発言はどうかと思います」
「説教はもういいんだよっ! とにかくソファに座りてぇんだ!」
ずっと正座しているから魔王の足は限界に来そうだ。
「今の聞いた?」
しかし早く解放されたいと焦りのせいで彼は失語してしまった!
「説教はもういいだって」
「どうやらまだ足りないわね」
反省している人の台詞じゃなかったもんな……。
「ま、待てっ! 話し合いーーそう! 話し合おう!」
「今まさにしてるけど?」
「これじゃないっ!」
「まあまあ魔王様、少し落ち着きましょうね~」
「子供じゃねぇんだけど!? っていうかお前らわざと話を長引きにしてるんだろう!?」
「チッ! 気付いたか……」
「舌打ち!? 今舌打ちしたな!?」
「はぁ……十分お仕置きしましたし良いでしょう」
さぁ、どうぞソファに座ってくださいと言わんばかりにイェリアはソファ道を開けた。
「……」
だが魔王は動かない!
「あ、足が痺れて動けん……」
既に手遅れだったからだ!
「仕方ないわね」
そこでレイアは近付いて、彼に手を差し伸べる。
「あ、ああ、すまない、助かーーあ、足がああああぁぁ!」
救助の手ではなかったけどな!
レイアは痺れている魔王の足をチョンチョンと突いている!
「レイアさん鬼ね……」
ぎゃあああああ! と叫ぶ魔王であった。
イェリア「さぁ、立ってください!」
魔王「鬼が増えたっ!」
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