154。いや、クイズじゃないんだけど?
コンコン!
「……」
ドアがノックされてもその人物はただ目を閉じて何もしない。
コンコンコン!
「……」
中から返事がないとしばらく待ってから女性は先程より強くドアを叩いてーー
「レイアさん?」
ーーあ、普通に入った。
「ダメだよイェリア! ナレーターの人は今格好良くあたし達を描いてるわよ!」
配慮ありがとうございます!
「何を言っているの……」
まあ、レイアが説教した所でなにが悪いか分からないイェリアには全然響かないだろう。
「はぁ……それで?」
ここにいるって事は魔王との用事はもう済んでいるとわかったレイアはイェリアと魔王の話し合いの結果が気になって肩をすくめながら訊いた。
「あー、そのことだけどーー」
精霊王の妻である事を証明できないから、とりあえずレイアは人間で客人として扱いされる。そして彼女の目的を知るために魔王はプライベートで話したい。その時に光玉の情報も渡す。
「ーーと魔王様が言っていた」
「うーん、いつ?」
「えっと、すぐにでも?」
伝言を伝える役のはずなのにいつ会えばいいと訊かれたイェリアは人差し指を顎に添え、目線を上にして最後に首を傾げた。
「何で疑問形なのよ……」
「仕方ないわよ!」
聞かされなかったの、と半眼で自分を見ているレイアにイェリアは抗議した。
「……」
「な、なに?」
「別に。なんで訊かなかったかなぁと思ってるだけ」
「うっ!」
結構大事な事だから訊くべきだと今イェリアも思っているからレイアの言葉に返しはできなくて押し黙ってしまった……。
「まあいいわ。今日は疲れるから明日で大丈夫だよね?」
「た、たぶん?」
オッケー? と確認されてもイェリア自身も分からなくて明日行っても大丈夫なのか? と内心で不安を抱えている。
何も聞かせれなかったからな。
「もし魔王を邪魔になって怒られたら逆ギレしよう」
「え?」
あー、教えてくれなかったあんたが悪いってやつだな。
「理不尽だね」
「間違えた?」
「うーん、どうかな……」
理不尽だけど、間違いだと言い切れないイェリアだった。
▽
コンコン!
「……」
ドアがノックされてもその人物はただ目を閉じて何もしない。
コンコンコン!
「……」
中から返事がないとしばらーー
「なぜ同じ事をやっているのですかっ!?」
ーーあ、切れた。
「な、なにっ!? 先に越されただとっ!?」
「何がしたかったのですか!?」
まさか自分と同じ事をやる人は他にいるなんて考えもしなかった魔王はイェリアの叱りに全く気に留めなくて、その事実にショックを受けて震えている自分の両手に視線を落とした。
「アイデアが誰かに盗まれたんだよ!」
「どうでもいいのです!」
くだらないアイデアだから、本当にどうでもいい事だ。
「馬鹿な事を言ってないで仕事してください」
「ば、馬鹿な……」
馬鹿、ばか、バカ……と叱られた魔王はオウムみたいに同じ事を言い続けている……。
「あんた大変だね」
目の前の出来事を見ているレイアはまさかこんな状況を毎回対応するの? と内心でイェリアを不憫に思っている。
「レイアさんはその一人の貢献者なのよ?」
「いやぁ~そんなに褒めなくても」
「褒めてないわよっ!」
同じ事をやって、同じ苦悩を感じさせたやつは何を言っている!? 暗にそう言っているイェリアだけど、レイアは後ろ頭を掻いて照れている!
「いい加減に戻りなさいっ!」
「あいたっ!?」
今も自分の両手を見て震えている魔王の頭にイェリアは拳骨を落とした!
「何すんだよっ!?」
「それはこっちのセリフです!」
「わ、わかった、わかったから落ち着けっ!」
遊びに来たじゃありませんよ!? とイェリアは更に言って、頭を抑えて抗議している魔王に拳を見せた。
「そろそろ本題に入りたいんだけど?」
このままだと話が全然進まないと思い、レイアは溜め息を吐いてから今も口喧嘩しているイェリア達を遮った。
「……そうね、座ってください」
「いや、なんでお前が薦めてんだよ?」
「細かい事は気にしないで魔王様も座ってください」
まるで自分の家にいるかのように席を薦めて、先に座ったイェリアに抗議して呆れた魔王はレイア達の向かいソファーにドサッと腰を下ろした。
「それで? 話は?」
今すぐ光玉の情報を聞きたいけど魔王は話したいことがあるとイェリアから聞いて、レイアはそれを優先することにした。
「お前の目的は光玉、間違いないよな?」
「そうだけど?」
謁見間で言ったのに再び訊かれる意味は分からないレイアは疑問形で答えた。
「なぜそんなに執着している?」
「……」
あの光玉は一体何なんだ? そう魔王の追加の問い掛けにレイアは俯いた。
「そういえばまだ聞いていませんね……」
「上に立つ者としてそれは何なのか知る必要がある」
光玉は自分の民に危害を加えるか? 国に災害を齎すか? 魔族の頂点にいる、何より魔族の王である魔王はどうしても光玉の事、そしてレイアの目的を把握したいのだ。
「……」
「答えてくれんかったらこっちも何も出さんぞ?」
「れ、レイアさん?」
未だに俯いて何も言わないレイアは二人の迫りに対して目を閉じて、深呼吸した。
「精霊王」
「「?」」
そして突然そう呟いた彼女はゆっくりと目を開いた。
「約一年前に空に飛んでた光玉の正体、精霊王なのよ……」
「ど、どういう事?」
「……」
困惑しているイェリアと目を鋭くしている魔王にレイアは約一年前に起こった出来事、精霊王国マナフル対レヴァスタ王国とマセリア帝国の連合の戦争について語り出した。
「その際に精霊王は命を落としてしまったの」
「……まさか精霊王に比敵する人間はいるなんて」
自分たちが束ねても勝てない存在である精霊王は人間に負けた事に信じられなくてイェルアは頭を抑えた。
「違うわ」
しかし精霊王は人間に負けたではない。
「空からまるで柱のような一筋の光は地面を照らしてその中に光玉はゆっくりと地面に落ちてた」
その光景、その現象はどう意味するかレイアは以前マナ学園の校長であるキーダフリナーから聞いた。
それはーー
「神、か?」
ーー神の降臨を意味するのだ。
魔王はちゃんとそれを理解したけど、信じられないと言わんばかりに自分の言葉を小声で否定している。
「ど、どういう事?」
一方、イェリアは困惑してレイアと魔王の顔を交互に見ている。
「聞いた事ないか、イェリア?」
深刻な顔で魔王に問われたイェリアは戸惑い、自分の記憶を掘り出し始める。
「……えっと、それはいい事ですか?」
ヒントを貰うためにしばらく黙っている彼女は魔王たちに突然質問を投げた。
「まあ人によればいい事だけどね……」
善悪という概念はただの個人意見だ。人それぞれ違う価値観を持って、何が善か何が悪かそれによって変わるのだ。
「うーん、戦争に勇者二人いたから……それは勇者たちに関係あります?」
勇者二人、勇者ミウラと勇者ナリタの事だ。
「大ありだと思うぞ」
な? と確証はないから魔王はそう答えながらレイアを見る。
「その線でいいよ」
レイアをはじめ、アンナ、ルナ、ディア、ドライアード、誰も勇者たちと空から出て地面を照らす一筋の光、そしてその中にあった光玉の関係についてわかる人はいない。
全部は仮説だけで確証はないから、レイアは曖昧な返事で答えるしかなかった。
「ちょっと考えさせて!」
とイェリアは手を前に突いて、また考え始めた。
「いや、クイズじゃないんだけど?」
あー、ひたすら質問して答えに近付く、ウミガメーーあ、いや、なんでもありません。
それはともかく、頭に人差し指先を当ててうーんうーん、としばらく考えているイェリアはパッと一気に目を開きーー
「あっ! 神の降臨ですね!?」
ーー答えに辿り着いた彼女にやっとか……と頭を抑えたレイアと魔王であった。
イェリア「べ、別に頭が悪いわけじゃないからねっ!」
魔王「アア、ワカッテルサ」
レイア「ソウダネ」
イェリア「私の目を見てもう一度言ってください」
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