150。幕間 フィン、魔力のまーー飲んでるうぅぅ!!!
「おいおいマジで切りがねぇぞ!」
自分を襲いかかってきている狼を切り裂いて、カールは愚痴を出した。
「文句言わないで体動かして!」
そんな彼にジョヴァリエは矢を撃ちながら注意を飛ばした。
「動かしてるってーーおおうっ!?」
反論しようとしているカールは突然自分の後ろに現れた火の壁に驚かされて、フィンに向いた。
「おい、フィン!」
「集中してください!」
「う、うぅ……」
すぐ別の所に魔法を展開したフィンは険しい表情をしていて、流石にそんな彼女にカールは文句を言えなくて黙ってしまった。
「なんか領主様に助けられた時に思い出すな!」
「……いい事じゃない」
大勢の盗賊に襲われてフィンとジョヴァリエを逃して、その後カール、マーカス、テルガンは必死に足掻いてピンチの状態に陥った時にイェリアに助けられた話だ。
今も、まあ盗賊じゃないが、彼らは狼の群れに囲まれて同じ状況いるのだ。
とめどなく狼の襲撃は彼らの体力を少しずつ削っていて、テルガンの言う通りこの状況はいい事ではない。
「あと少しだっ!」
「そうだといいね!」
どれくらい戦っているかカール達にはわからない。分かっているのは体力、魔力、矢、色んな物がもうすぐ底につくという事だけだ!
しかし以前と違って彼らは変わった!
「フィン、魔力のまーー飲んでるうぅぅ!!!」
「ぷはっ!」
「おっさんみたいな飲みっぷりね……」
あー、すごい勢いよく飲んでいるしな……ビールを美味しく飲んでいる叔父さんみたいに。
「貴重な魔法薬だからバンバン魔法を撃ちますよ!」
「効率的にやれよっ!」
そう、変わったのは彼らの考え方だ。
今もお金はないけど、フィンは躊躇いなく魔力の魔法薬を使った。
以前と違ってカール達は物資を惜しみなく使うようになったのだ。
「ファイアボール!」
ドドドカーン! と魔力を回復したフィンが狼の群れに放たれた数個のファイアボールは大きな爆発を起こして、数匹の狼の命を奪った!
「いい魔法!」
おかげで少し余裕できたわ! そう言ったジョヴァリエは足に力を入れてからジャンプした。
「見えたっ!」
空中で残りの狼の位置を確認した彼女は手に何も持っていないのに弓の弦を引いて、体を横回転しながらそれを手放した!
「うおっ!?」
するとカール達の近くにいる狼達の頭はまるで何かに撃たれたかのように、突然穴が空いて地面に釘付けられた!
「っ! そこ行ってるよ!」
いくつかの攻撃が外れて、ジョヴァリエは悔しい気持ちを抱えていながら仲間たちに自分のミスを知らせた。
「おっと逃がさないぞ!」
「……ふんっ!」
マーカスとテルガンはすぐに動いた。狼達の逃げ道を潰して、その際に屠れるやつを屠った!
「はああっ!」
逃げる方向を変えた数匹の狼はカールに切り裂かれたけど、一匹は彼の横に通った!
「リエ!」
「今度こそっ!」
また弦を引いたリエことジョヴァリエはカールから逃げているその狼の足を睨み、手を弦から離した。
「フィン! やっちゃって!」
「はいっ!」
すると狼は急に転動して動けなくなって、その狼の位置にフィンはファイアウォールを展開した!
グラアアァァ! と燃え盛る狼の悲鳴は森の中に響いて、しばらくすると辺りは静かになった。
「やるな、フィン!」
「……早かった」
ふぅ、と魔法を撃ったフィンは満足して頷くとカールとマーカスに称賛を贈られた。
「ジョヴァリエさんもすっかり慣れていますね!」
「結構練習してたからね」
褒められて、仁王立ちするジョヴァリエは嬉しそうにしている。
カール達は今任務でメルヴァレイ付近にある森の中に潜めて、通る馬車を襲い掛かる狼の魔物を退治しているのだ。
「今ので最後か?」
「……みたい」
近くに気配を感知できず、テルガンはカールの質問に頷いた。
「よし、引き上げようぜ!」
なら任務は完了だとカールは結論に出て、仲間たちに帰る合図をした。
「いや~マジで危なかったぜ」
「……多すぎ」
「魔力の魔法薬を多めに持ってよかったな」
「おかげで魔法の矢をガンガン撃てたよ」
「ですね! 魔力に余裕って大事ですね!」
緊張感から解放されて、雑談しながら一行は討伐証拠として狼の牙を集めている。
「そういえばコーゲンに行かないのか?」
そうマーカスは突然思い出してフィンに訊いた。
「え?」
「レイアさんに合うんじゃなかったのか?」
と首を傾げたフィンにマーカスは更に問いかけた。
「あ、そういえばそうですね!」
「……まさか忘れてたの?」
「し、師匠の言葉忘れるわけないじゃないですか」
あはは、と乾いた笑いでフィンはジョヴァリエの言葉に反応して、目を空した。
そう、この話はカール達はバデアでレイア達と別れてから約半年後の話だ。
与えられた課題をこなし、コーゲンにあるイェリアの館にまで来てその成長を見せる、それはレイアとフィン達の約束だ、というよりレイアの言葉だ。
フィンがファイアボールを数個出せた事とその威力も、ジョヴァリエの魔法の矢も、全部はこの半年の間、レイアをガッカリさせないために彼女達が頑張った成果だ。
「師匠の審査、合格するといいよね……」
「ですね……」
それとレイアの怒りから逃げるための必死さのおかげでもある……。
ジョヴァリエ「約束忘れたなんで、死にたいの?」
フィン「で、ですから違いますよ!」
ジョヴァリエ「目を見てから言いなさい……」
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