149。凄い魔法でした……
「結局何もなかったじゃねぇか……」
頭の後で手を組んでいるカールは唇を尖らせた。
「平和でいいんだよ、カール」
「……」
そんなカールにマーカスは当たり前の事を言って、彼の言葉にテルガンは頷いた。
「そっかぁ、師匠とここでお別れかぁ」
「すごく大変だったけど、何か寂しいですね」
彼らは今バデアに入るための門の前に列で並んでいる。
町に入ったら任務は完了、レイア達と行動する理由も無くなるから確かにこの町でお別れになるのだ。
「それは仕方ないことだな」
ちょっと落ち込んでいるフィン達にマーカスが言う通り、仕方ないことだ。レイアはイェリアと行動して王都を目指しているからずっとフィン達の面倒を見れない。
「もう会えねぇんじゃねぇだろう?」
「……後で合流する」
今レイア達はいない、領主であるイェリアは別の門から町に入るから。
「あれズリィよなぁ」
一緒に連れて行けばいいのに、とカールは拗ねるように言った。
「……荷物検査」
なぜ別れた? なぜカール達を連れて行かなかった? その理由はテルガンの言う通りに、荷物検査だ。
王族、領主、町長、つまりお偉いさん達は普段忙しいから普通の門を使うと色々と間に合わない。急いでいるレイア達にとって普通の門は遅すぎて、何より並ぶのは面倒くさいから関係者だけの門から町に入った。
荷物検査、事情聴取など免状される門だ。
一般人であるカール達はそんな門を潜らせる訳にはいかないという理由もあって、こうして普通の門の列で並んでいる。
「っていうかアイツそんなに強えのか?」
「何言っていますの、カール? 師匠は強いですよ」
「あー、そっかあんたいなかったね」
フィン達がレイアに助けられた時カール達は居なかったし、魔法の練習に危険がつきものだからレイアはわざとフィン達を連れて離れた所にやったからカールたちは彼女の強さを知らなくても仕方がない。
「凄い魔法でした……」
レイアが放ったブラストを思い出しながらフィンは自分の頬に両手をやって、蕩けるような顔をしている。
それだけレイアの魔法は同じ魔法使いである彼女にとって凄かったのだ。
「「「……」」」
まあ仲間達にちょっと引かれてしまったけどな……。
▽
「こっちよー!」
手を挙げて振りながらレイアは大声を出した。
「「お待たせしました!」」
「二人だけ?」
構わないわ、そう誤ったジョヴァリエとフィンにレイアは答えて、カール達の姿が見当たらない事に首を傾げた。
「カール達は依頼の達成を報告するために探検者ギルドに行きました」
「へぇーーえ? 探検者ギルドあるの!?」
まさか魔大陸にも人間の大陸に知り渡っている探検者という職業があるなんて思わなくて、レイアは思わずフィン達に確認してしまった。
「え? ありますよね?」
全国を回った事ないからフィンはジョヴァリエを見ながら自信のない答えを出した。
「バデアだけ、とはないから多分ありますよ」
まあ現にメルヴァレイにもあるしな。
「あれ? 師匠は探検者じゃないのですか?」
「何言ってるのよ、フィン? 師匠はイェリア様の護衛の一人よ」
「あ、そうですね」
なぜレイアは探検者ギルドの存在を知らないか、彼女は何者かについて勝手に推測して納得したフィン達にレイアはただ苦笑した。
(失言したわぁ……)
危なかった、とその苦笑の下にレイアは冷や汗した。
「あたしはここからイェリアと一緒に王都に行くわ」
「「……はい」」
それはともかく、そう前置きしたレイアは二人の少女に告げて、それを聞いた彼女たちはちょっと俯いてしまった。
「んで、あんた達半年後くらいコーゲンに行ってもらうわ」
なぜコーゲンに行く必要がある? しかも半年後に? とレイアの言葉を聞いたフィン達は疑問を抱いてお互いを見ている。
「なにその顔? 審査よ」
当たり前じゃないと言わんばかりにレイアはそんなフィン達に呆れた。
「もし目標を達成しなかったらーー」
「「し、しなかったら……?」」
一体どうなる? と気になるフィン達はレイアの次の言葉を待っているとーー
「ふんっ!」
ーー静かに、ゆっくりと手を首元に持って、親指を立てたレイアは初めはゆっくりと左から動かせて、途中で一気に右へ動かした!
「「……」」
彼女の鋭い目と表情を見て、背筋に汗は流れていると感じた二人の少女はゴックリと唾を飲んでしまった。
「わかった?」
「「はいっ!」」
流石に自分の師匠を怒らせたくないから彼女達は絶対に与えられた課題をクリアすると内心で決めた。
「あんた達ならできるよ」
ちゃんと教えた通りに練習すればの話だけどね、とレイアは更に足して急に思い出した。
「あ、それと逃げちゃダメよ?」
逃げる、つまりコーゲンに来ないって事だ。
そんな事するわけがないと言わんばかりにフィン達は勢いよく首をぶんぶんっと左右へ振った。
「よろしい」
彼女達の反応を見たレイアは頷いて、魔法袋から数個の瓶を取り出した。
「はい、これ」
「これはーー」
「魔力の魔法薬?」
「高いでしょう?」
これで使うにはあまり躊躇えなくなるでしょう? とレイアは渡された瓶を見ているフィン達に笑顔で言った。
「本当にいいのですか?」
「上げれる物他にないし……」
魔法袋の中身を思い出しながら別にいいのよと答えたレイアは最後にそう小さく呟いた。
彼女の魔法袋の中身? 彼女の杖とか、魔力を撃つ銃ことマナ銃とか、着替えとか。
文字通り他人に上げれる物ではないのだ。
「さて、最後に質問ある?」
「えっと、コーゲンのどこに行けばいいんですか?」
確かにコーゲンに行けと言ったけどレイアは具体的な場所をまだ言っていない。
「あー、まだ許可取らないけどイェリアの所に行ってもらうわ」
「え?」
「えっと、領主様の館ですよね?」
勝手に領主であるイェリアの家を落ち場所に決めていいのですか? そうフィン達は暗に言っている。
まあ、本人と一時一緒に行動していたけど領主の家は決して気軽に遊んでいける場所ではない。
「まあ大丈夫でしょ」
しかしレイアは問題ないと断言した。
「か、軽いですね……」
とジョヴァリエは呆れてーー
「さすが師匠ですね!」
ーー対してフィンは尊敬の眼差しでレイアを見ている。
「……ちょっとフィン、あんた悪い人に騙されないようにね」
「???」
急に注意されたフィンは首を傾げた。
「あー、えっと、たぶん大丈夫だと思います」
いつもこうではありませんから、とレイアの言葉の意味をちゃんと掴めたジョヴァリエは苦笑して言った。
「ならいいわ。他に質問ある?」
そう訊かれたフィン達は首を横に振った。
「じゃああたし行くから、無茶しないようにね」
「はい」
「師匠も気をつけてください」
自分の師匠に敬意を払って頭を下げる二人の少女。
「じゃあね」
そんな彼女達の姿にレイアは笑みを浮かべ、踵を返して立ち去った。
レイア「うーん、去った時に格好いい言葉を残した方がよかったかな……」
イェリア「何、格好いい言葉って?」
レイア「たとえば、さらばだっ! とか?」
イェリア「……」
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