8.暗闇
誰かが僕を呼んでいる。
辺りを見渡すが暗くて何も見えない。
立ち上がろうとして、何かが太ももの上に乗っていることに気付く。
「お前、そうやって人の事見下すんだな。」
帯刀だった。
右頬に穴が空いている。
思わず跳ね除ける。
立ち上がって逃げようとするが、腰が抜けたのかうまく立てない。
水が滴る音。
顔を向けるとそこに尻が突き出ていた。
僕と同じ制服のスカート。
その下の布から液体が染み出て、下に水たまりを作っていた。
僕は身体を引きずりながら後退りする。
そして何かにあたる。
振り向くと、それは渚だった。
「ねぇ、どうしてだと思う?」
半裸で、地べたに座り込んでいた。
「どうして、こうなっちゃったと思う?」
その目は虚ろだった。
「ごめん、私のせいで。」
僕は思わず渚からも離れようとした。
「ねぇ。」
渚は追いかけては来なかった。
だが、渚の背後から男達が現れる。髭面とロン毛だ。
「お前もこうなるからな。」
二人の顔には1センチくらいの穴が空いていた。
「よく見ておけよ。」
二人は薄気味悪い笑みを浮かべている。
僕は身体を返し、這いつくばってその場を離れようとする。
早くこの場から逃げたかった。
必死で手を動かし、脚をバタつかせる。
どのくらいそうしていただろう。
時間の感覚が無い。
僕は後ろを振り返った。
そこに先程の3人は居なかった。
変わりに居たのは三芳だった。
いつもの格好でぽつんと立っている。
ハルちゃん…
その腹部がドス黒い赤で染まっていく。
眼鏡の奥に細い目。
無表情なその口から血が垂れだして、歪んだ。
「なんでだよ。」
いつものあの顔だった。
「なんで笑ってるんだよ!」
僕の目からは涙が落ちていく。
「ごめん。」
僕は目を閉じて言った。




