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穢血のカイン ~唯一の家族を失った俺は敵を喰う能力「穢喰」で最後の仕事を全うする~   作者: 成乃 和幸


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第2話 追放&利用

数十分がたつと、村の奴等がぞろぞろと防備バッチリな状態で八百屋、俺の思い出の場所でありトラウマの場所であるところに足を踏み入れた。このとき俺はこの場所にいてはいけないということを肌で感じた。でも今は動けねぇよ。


「言わなくても理解してんだよな? 穢れた血が!!」


「さっさとこの村から出ていけ化け物!!」


 いつも通りであるはずの冷ややかな視線がクソほどうっとうしい。そもそも何でおっさんにお世話になってた奴等がおっさんの供養より先に俺を追い出そうとすんだ。


「無理だ。頼む、もうちょっとここにいさせてくれないか」


 俺は地面に頭を突っ込ませた。床にしみついておっさんの血の匂いなのか、俺の血の匂いなのか、区別がつかねぇ。


「もうエイデンさんはいねぇんだ。それなのにお前をここに居させる意味なんてあるか」


「そうよ、しかもその右腕……あんたはあいつらの仲間なんでしょ? ふざけたこと言わないで、今すぐ死んでほしいわ」


 村の奴等が一歩一歩と近づくと、おでこに振動が走る。それでも俺は顔を上げなかった。奴等の脚が俺に触れるたびに体が濡れていく。意識が朦朧としているなかで、俺の視界には村の奴等なんかじゃねぇ、おっさんだけが映っている。やっぱだめだ。おっさんに言われたこと守んねぇといけねぇし、俺は知りてぇんだ。


「わかった、わかったから、もうやめてくれ……二度と来ねぇから」


 口ではそう言って、本を持って出ていく。村の音がやけに遠く聞こえた。行く場所も何もかもがねぇ。実のところ、村にまだ居たかったのが本音だ。でも泣き言を言ってもいいことなんてひとつもねぇ。というか泣き言を言う暇なんてねぇ。挑戦する。か、死。これ以外の道は残されてねぇんだ。


「この森を抜けたら村? があるとか言ってたっけな。まあとりあえず行くとするか。俺は真相を知りに行く。人助けはついでだおっさん」


いくら歩いても森、森、森で俺は満身創痍状態になっている。足元は緩く、手をぶらんぶらんと。を繰り返している。


「おい森この野郎……多分もう丸二日は歩き続けたぞ」


……。


返事があるわけねぇのに何言ってんだ、俺は。少しだけ空が見えるような見えねぇようなくらいの森。


 丸二日飲まず食わず、その上歩いていたのにも関わらず生きている。木の形も歩いてきた道も全部同じに見える。それでも、俺は強く生きねぇといけねぇ。


「さすがにそろそろ休憩しないと死んじまう、休憩だ……」


 神様とは残酷で、俺が休み始めたとたんに、


「こんなとこでガキが何してんだ? サバイバルごっこかー?」


 木の陰からひょいっ、と輩が現れた。面倒くせぇ、こういうのは無視するのが得策か。


「何無視こいてんの? 屁こいてんの? 調子乗んなよガキが」


 俺は思わず屁はこいていないと言っちまって、まんまと相手の罠に引っかかってしまった。


「で、? てめぇはなにしてんの? 暇してんなら俺様の金稼ぎに付き合ってくんね? あぁ、もちろん拒否権ねぇからな」


 此奴は俺のことを利用しようとしている。それでもただひたすら歩き続けるよりはマシ。そう、俺にとっちゃ好都合であり、WINWINな関係が築ける。


「わかった、いいぜ。でも俺一文無しでどこにも居場所がねぇってことだけは伝えとくぜ。それでも俺が必要か?」 


 此奴は一瞬うげ、といった顔をした様に見えたが気にしないでおくことにした。


「それってもしかして住む場所や生きる最低限のことは保証しろってこと言ってる?」


「それが無理なら残念なことにお前の力になることはできない……手にする金もさよならだ」


 罠へのお返しに少し煽ると相手はぐぬぬ、という顔を今度ははっきりとあらわにした。


「しゃあねぇな、俺のうちにてめぇが住むことを特別に許可してやる。まっじで感謝もんだからな? これ」


 いわれた通り、感謝を表そうと白目をむいて合掌をした。俺は意地っ張りで素直になれねぇ。自覚はあんだよ。それに今は……ふざけねぇとやっていけねぇ。


「じゃあ、さっそく移動するからここでおとなしく待ってろ」


 なんで待つんだよ、早くいけばいいじゃねぇか。飯をくれるならまだ歩けるっての。


「移動すんじゃねーのか? なんで歩き始めねーんだよ?」


「バーカ! こんな森歩いてたら死ぬだろ!!」


 現に死んでねぇぞ? というツッコミをするのを抑え、おとなしく待つことにした。


「お待たせさん!! 早く乗れ! ついたらさっそく俺の仕事について説明すっからお前は休んどけよ」 


 彼奴は馬車を持って帰ってきた。俺はこんなものを見たことがねぇ。


「お、おい。なんだよこれ、馬……に何つけてんだ?」


「ったく、馬車も知らねぇのか! 田舎もんっていうレベルじゃねーぞ」


 俺が田舎もんだってのはわかってんだ。だから村を出るつもりなんてなかったのによ。


 馬車に乗ると、手に持っていた本を開き始めた。


「絶てぇ…突き詰めてやるよ。なんでこんなになっちまったか。穢れ、お前を」

 数ページ開いたところで俺の視界は揺れてきた。


数時間が経った頃、俺は目を覚ました。大きな都市が見えている。同じ星かどうかを疑うほどあの村と違っていた。遠くには、城みてぇなもんもあって、おびただしい数の人がいた。


「ほら、ついたぞ。さっさと起きてシャキッとしろ」


 いわれる前には起きてたっての。


「ここが俺んち。すばらしい豪邸って感じだろ」


 今にも崩れそうな木造の家だった。ほかの家のようにきれいなのだと思っていた俺の期待は儚く散った。


「いや、全然ぼろっちいぞ? 俺の住んでた八百屋よりやべぇ」


「俺が金必要な理由わかったか? 家がぼろいんだよ。早く治してぇんだよ」


 しれっとそんな話を無視した俺は仕事の話について話題をそらした。というか相手の目的なんてどうでもいい。


「んで、俺は何をすればいいんだ? 役に立てるかどうか」


 男は俺の腕を見た途端、態度が一変した。どこに行っても変わんねぇんだな。


「気持ち悪ぃ!! なんだその腕! お前、化け物か? またあの男と同じようなことが起きるってのかよ、頼むから勘弁してくれ!」


 気持ち悪い、と言われるのは別に嫌じゃねぇ。なにせ俺でも同じ反応をしたからだ。


「ま、まあいったん置いておこう。仕事についてだが、俺の仕事は穢れ狩りだ。ま、穢喰が使えんならラッキーだぜ」


男は何者なんだ、なぜ穢喰のことを知ってんだよ。結構有名な能力なのか? あの本に全部書いてあると嬉しいんだけど。


「俺も参加してくれってことだな? 喜んで利用されてやる」


「助かるねぇ。そんで、お前の収益は全部俺に入る。死ぬなよー」


 死ぬなよ、普通であればそのままの意味で受け取るかもしんねーけど、明らかに感情がこもってねぇ。死んでもいいと思っているような感じだ。そう思われていても俺は死なねぇ。


バコーン!! 突如、俺の視界に村で見たのと近ぇ穢れ? がいる。


「噂をすれば来たぜ? 穢れ。俺は家で寝てっからあとはせいぜい頑張れよ」


「りょーかいりょーかい。じゃ、衣食住は頼んだぜクソおっさん」


 基本的に俺は男であればおっさん呼びをする。あの男にはおまけでクソという言葉もついている。おまけといったが、クソが本体のようなもんだ。


「おい人間、逃げないのか? 死んじゃうぞっ! 殺しちゃうぞっ!」


 村で見た穢れと決定的に違うところがあった。喋っている。とても人間には似つかない不快な声だ。蚊の羽音を聞いている感覚だと思う。


「一つ聞いていいか? お前ら穢れはなぜ人間を殺す。回答によっては俺がお前らを殺す」


 できるだけ殺生を避けたい、共存できないものか。


「うーん……楽しいからかなぁ!! 今は忌まわしき王も不在だしやり放題なんだよねぇ!」


 やはり多種族との完全な共存はできない。俺は真理にたどり着いちまったかもしれねぇ。


「ったく、救えねぇな。精々あの世で反省しろよ」


 前の通り、腕を前に上げる。今は怒りというより呆れが勝っているが能力は健在だ。怒りがトリガーではねぇみてぇだ。


「お前はなんなんだ! 穢れより穢れている……」


「なんとでも言えばいい。何千回と言われてきたんだ、今更気になんねぇよ」


 それはあっさりと穢れを吸い込んだ。相変わらず手が重ぇ。次々と現れる穢れを最終的には十体ほど吸い込んだ。手におもりを付けてるみてぇだ。


「さすがに疲れたな、でも仕事は順調だぜ、おっさん」


 あの男の家に戻ると、意外にも温かく迎えられた。クソおっさんから普通のおっさんに昇格せざるを得なかった。


「おつかれさん! 今日はゆっくり休んで明日からも頼むぜ!!」


 迫害を受けてきたのは気にしてない。そう思ってたけど、実は気にしていたのかもしれねぇ。温かい言葉を受けると泣きそうになるのがその証拠だ。


「そうさせてもらうぜ、普通のおっさん」


「クソおっさんからの昇格か! こりゃはえぇ!!」


 そんな掛け合いを終えると、俺は自分の使える部屋に移動した。何故かわかんねぇけど鼻がかゆい。このベッド使えんのか、と思いつつも俺は寝そべった。数分経つと、視界がぼんやりとしてきた。


「ねぇ、今度はどこに行く? まだまだ時間はあるしさ!」


 とても聞き心地の良い女性の声が聞こえる。ずっと聞いていたい。


「綺麗なお花!! 私に似合うと思う? 花冠作ってよ!!」


 痛ぇ、痛ぇ、痛ぇ。なんなんだこの痛みは。


「っ!! な、なんだ、夢だったのか? 夢であんなに鮮明に声が聞こえたのは初めてだ」


 空はすっかり明るくなっている。楽しい夢だったはずなのに体は汗だくで痛みもあった。最近は疲れているのかもしれねぇ。そう思うことしかできなかった。

 朝飯を食べるため、俺は家の中を探し回った。大広間、トイレ、寝室。だが彼奴はこの家にいなかった。よく見ると昨日まで家にあったものがなくなっている。もう帰ってこねぇんだろうな。


 そう思っていると、昨日までは何もなかったところに紙切れがおいてあった。見たところ、手紙みてぇだ。


──────────

 騙されたなクソガキ。

 俺はお前をただただ利用してやったんだよ。

 もう二度と戻んねぇから、精々頑張れよー。

──────────


俺はおじさんに一つ、人間のどこが好きなのかを聞きてぇ。


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