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追放されたタンク、実は最強でした ~命を削って守っていたが見捨てられました~  作者: 海老朝日


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31.ゴブリンの巣穴突入③

 ゴブリンコマンダーの【咆哮】とルナの逃走。

 味方の動きが鈍る。


「大丈夫だ! ルナがいなくても問題ない! 耐えればいい!」


 元々、このメンバーで突入する予定だった。

 ルナの増援がイレギュラーだ。

 自分に言い聞かせるように、声を張り上げ、みんなを【鼓舞】をする。


「そうです! 先生が私たちを守ってくれます! だから大丈夫です!」


 最後尾にいたはずのリゼットが、いつの間にかリリアとエミールの前に出ていた。


 リリアは炎球(フレイムボール)を放ち、エミールは俺に防御向上(ディフェンスアップ)を掛け続けていた。

 ヒーラーに中衛を任せるなんて不安しかないが、今はありがたかった。


 二階に目をやる――サーシャが見えた。

 ガレットと共に、ゴブリンを(ほふ)りながら奥へ進んでいる。

 コマンダーまではまだ距離はあるが、確実に前進している。


 俺たちはギリギリで、持ちこたえている。


 その時だった。

 頭の中に、ゴブリンの言葉が流れ込んできた。


 直後、全身が重くなる。

 腕や足に、見えない何かが絡みつく。


 盾が急に重くなり、防御が間に合わない。

 脚にゴブリンの棍棒を叩き込まれる。


 支援魔法のおかげでいつもよりダメージは抑えられている。

 だが、防げない攻撃が増えてくる。

 俺の動きが鈍ったのを見て、ゴブリンたちの攻撃が、一気に激しくなった。


 周囲を見渡す。


 いた。


 ゴブリンソーサラー。

 ボロボロの黒い布切れを頭からかぶっていた。

 杖を向け、何かを呟いている。


「ノア! あの黒い魔術師をやってくれ!」


 その言葉を聞くや否や、ノアはソーサラーに向かって駆けていく。


「ウォォォォォォ!」


 左側から野太い叫び声が聞こえた。 


 ゴブリンウォーリアーだった。

 炎の壁(フレイムウォール)の向こう側で、背丈が2メートルほどのゴブリンが叫んでいる。


 まさか突っ込んでくるつもりか!?

 あれに踏み込まれれば、無防備な後衛は防ぐ手段がない。

 そうなれば戦線が崩壊する。


 ――使うしかない。


限界突破(ブレイク)!」


 呪術によって重くなった身体を、限界突破で強化し無理やり動かす。

 目の前にいるゴブリン共を盾で吹き飛ばし、左へ走った。


 肩を前に突き出し、炎の壁を突破してくるウォーリアーが見えた。

 ウォーリアーは、炎を身に纏いながらリリアに突っ込んでいく。


「させるかあああああ! 冥破断(ネザーディバイド)!」


 黒いオーラを纏った剣で、真っすぐ刃を振り下ろした。


 ウォーリアーの動きが止まった。


 遅れて、体が両断される。


 全身の関節が痛み、目の前が一瞬暗くなった。


 膝をつきかけたが、何とか踏ん張る。

 振り返ると、盾で吹き飛ばしたゴブリン共が起き上がり、すぐそばまで来ていた。


「らあああああああ!」


 気合で体を動かし、ゴブリン共を一閃する。


「ヒール!」


 リゼットの回復魔法で、冥破断で負ったダメージが回復していく。


 荒い息のまま、周囲を確認する。

 ゴブリン共の数はかなり減っていた。

 ウォーリアーはもういないようだ。


「ギュエエエエエエエエエエエ!」


 二階から豚の断末魔のような汚い声が聞こえた。


「クイーンをやったぞ!」


 直後、二階でサーシャが叫んだ。


 ゴブリンクイーン。俺たちの最優先ターゲットだ。


 突然体が軽くなった。


「やったぞ!」


 遠くで、ノアが血の付いたナイフを掲げていた。

 ソーサラーを倒したらしい。


 その直後、ゴブリン共の左からの攻撃を防いでいた炎の壁(フレイムウォール)が突然消えた。

 効果時間が切れたのだろう。しばらくは使えない。


 ――まずい。


「ウオオオオオオオオオオオオオオ!!」


 コマンダーが吠えると、前と左右からゴブリンたちが襲い掛かってくる。


「ノア! 戻ってこい!」


 俺は大声で叫んだ。

 ノアが戻ってくるまでの時間、ゴブリンの包囲攻撃を防がなくてはいけない。


 エミールが俺への支援魔法をかけるのをやめ、ゴブリンの突撃に杖で対応していた。


 だが――とてもじゃないが、この人数ではゴブリン共の攻撃を受け止めるのは不可能に近かった。


土壁(アースウォール)!」


 突如、左側に土の壁が出現した。


 後ろを振り返る。

 ルナだった。


「すみません! 戻りました!」


 戦場に戻ってきたルナは、息を切らしていた。


 現れた土壁(アースウォール)は、ゴブリン程度の攻撃ではびくともしない強度がありそうだった。


 左をルナの土壁(アースウォール)が塞いだことで、包囲は崩れた。

 そこからは、俺たちが押し返す番だった。


 正面から飛び込んできたゴブリンを盾で吹き飛ばし、倒れたそいつの胸に剣を突き刺す。

 右では、リゼットとエミールが必死に押し返していた。

 後ろに陣取ったリリアは、ゴブリンを炎球(フレイムボール)雷槍(サンダージャベリン)で確実に数を減らしていく。

 同じく安全地帯からルナも、岩弾(ロックバレッド)でゴブリンを始末している。


 ノアが戻ってきてからは、一方的な蹂躙だった。

 変幻自在に動き回るノアにゴブリン共は混乱し、逃走するゴブリンすら現れ始めた。


「ウオオオオオオオオオオオオオオオオ!」


 再びゴブリンコマンダーの声が大広間に響き渡った。


 その咆哮を合図にしたように、ゴブリン共は一斉に逃げ出した。


「逃がすな!」


 俺は、逃走するゴブリン共を追いかけ背中に斬りかかる。


「師匠! コマンダーがいない!」


 ノアに言われて二階を見上げると、さっきまでゴブリンの指揮を執っていたコマンダーの姿が見えなかった。


「ノア! 他の奴はいいからコマンダーを追え!」


 俺は、サーシャとガレットが消えていった穴を指さした。


 俺の脚では奴に追いつけないだろう。

 なら自分のできることをするまでだ。


 俺たちは逃げ出したゴブリンを追い、部屋に逃げ込んだ奴らも一匹ずつ潰していった。


 すべての部屋を制圧し終えたころ、ノアとサーシャ、そしてガレットが戻ってきた。


「……終わったな」


 サーシャが呟くと、ガレットがゴブリンコマンダーの首を俺たちの前に放り投げた。


「アタシが背中を射てガレットがトドメを刺した」


 いつもは陽気なサーシャもさすがに疲れた様子だった。


「帰りましょう」


 エミールの一言にみんなが黙って頷いた。


 俺たちはコマンダーの首とクイーンの首を布でくるみ、村に持ち帰ることにした。

 ゴブリンから排出された魔結晶を回収していく。


「これ……そのままでもいいんですか?」


 ルナが大量のゴブリンの死体を見ながら呟いた。


「俺たちだけで処理するには数が多すぎる。ギルドに報告すれば後のことはうまくやってくれるだろ」


 俺が答えるとルナは「はい」と小さく返事をした。


 洞窟を出ると、外で見張りをしていた新人組が俺たちに駆け寄ってきた。

 彼らに簡単に経緯を説明したあとに、村へ向かった。


 村に辿り着くころ、教会の鐘が九時を知らせてくれた。


 勝った。

 ――俺たちは、勝ったんだ。

明日は夜に二回投稿予定です。

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