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追放されたタンク、実は最強でした ~命を削って守っていたが見捨てられました~  作者: 海老朝日


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28.決戦前夜

 宿屋に着くと、俺たち以外のメンバーは既に集まっていた。


「おかえり。悪いけどもう一度エリクたちに説明してくれるか?」


「分かりました」


 新人パーティのリーダーが説明を始めた。


 教会で聞いた話によると、一か月前に村の若者たちがゴブリン狩りに出かけたようだ。

 そして、森の中で偶然ゴブリンの巣穴を見つけた。その時、洞窟の外にいた見張りを三体倒したとのこと。

 それ以降、村の周りでゴブリンが頻繁に見られるようになったらしい。

 

 だが、このゴブリン狩りの話は村人たちに共有されなかった。

 もしかしたら、それが今回の被害の大きさに繋がったのかもしれない。


 続いて、黒鷹団(こくようだん)からも説明があった。


 襲撃は二週間前の深夜。新月の夜だ。

 突然、穀物倉庫から火の手が上がったらしい。それとほぼ同時に、ゴブリン共が正面から押し寄せてきた。

 確認されているのは、ゴブリン、ゴブリンアーチャー、ゴブリンウォーリアーのみ。

 ゴブリンの何匹かが松明を持っていて、次々に家々に火を放った。

 ゴブリンの総数は20~50匹。

 貯蔵していた食料や鶏もいくらか盗まれたらしいが――食料目的というよりも襲撃目的だった。


「……許せません」


 新人組のルナが小さく声を上げた。


 俺たちもみな同じ気持ちだった。


 日が落ちた頃、俺たちは酒場へ向かった。


 長方形のテーブルを繋ぎ合わせ、みんなで食事をした。

 前日の野営とは違い、静かな食事だった。


「明日の作戦を伝える」


 食事を終えた後、サーシャが切り出した。


「夜明け前、ゴブリンの巣に向けて出発する。これは、早朝が一番ゴブリンが静かだからだ。これまでの遠征の時と同じ陣形だ。アタシたちが一番前で、新人組が真ん中、最後尾がエリクたち」


 みなが黙って頷いた。


「ゴブリンの巣に着いたら、アタシとノアで見張りをやる。詳しいことは現地で指示する」


 ノアが頷いた。


「入り口の安全が確保され次第、突入する。見張りは新人組に任せる。頼んだぞ」


 新人たちが頷いた。


「その他の者は突入担当だ。これが基本的な作戦だ。何か質問はあるか?」


「もし新人組が大量のゴブリン共に襲われたらどうするんだ? ゴブリン共が洞窟の中にいるとは限らないだろ?」


 ノアが責めるような口調でサーシャに問いただした。


「いい質問だ。その可能性は低いと思ってはいるが……。万一に備えて各パーティには明日の出発前に笛を配る。危険だと思ったら迷わず吹け。新人組が笛を吹いた場合、突入組はすぐに撤退して、新人組の援護に行く。逆に、突入組が笛を鳴らしたら新人組はすぐに逃げろ。いいな?」


 ノアはさらに何か反論しようとしたが、眉をひそめて黙った。

 一応は納得したらしい。


「ゴブリンの巣の入り口が複数ある可能性は?」


 俺が質問すると、サーシャは渋い顔をした。


「可能性は高い。だが、今回はその入り口は無視する。というか、そうするしかない」


 全ての巣穴を探し出し、一つだけ出入りできるようにして突入するのが理想だ。

 だが、探している最中にゴブリンに見つかれば奇襲作戦は失敗だ。

 奇襲作戦において、速さは最重要事項だ。


◇リゼット視点


 部屋に入ると、粗末なベッドが六つ置かれていた。

 部屋の真ん中には、サーシャの魔結晶ランタンが置かれ、柔らかな光が室内を照らしていた。


 毛布とマントだけの寝具に比べれば、寝心地がまるで違う。

 それに今日は、雨風の心配もなく、見張りもする必要がない。

 それだけで、少しほっとした。


「リゼット、もう少し近くで寝ていいよな」


 リゼットが返事をしないうちに、ノアは自分のベッドをリゼットの方へ寄せた。

 ぴったりと並べると、リュックの中身を出しながら荷物整理をし始めた。


 部屋を見渡す。

 黒鷹団(こくようだん)のサーシャとリリアはベッドに腰掛け、小声で何かを話していた。

 新人のルナと目があった。

 ルナはさっと目を逸らした。


「ルナちゃん、私たちと一緒に寝よっか?」


 ルナはこくこくと頷くと、リゼットの隣にベッドを引っ付けた。


 明日は早い。

 早く寝たほうがいいだろう。

 リゼットが仰向けに寝転ぶと、ランタンの明かりが消された。


「あの、リゼットさんは怖くないんですか?」


 ルナが話しかけてきた。


「怖いよ。足だって震えるし、泣きそうになる。でも――」


 エリクのことを思い浮かべた。それだけで心が落ち着いた。


「先生がいるから。だからきっと大丈夫だよ」


「エリクさんのことですか?」


「そう」


「エリクさんってそんなに強いんですか?」


 リゼットが答えようとすると、反対側から声が聞こえた。


「師匠は強いぞ。最強だ」


 ノアがベッドの中に潜り込んできた。

 注意する間もなく、後ろから抱きしめられる。


「ちょ、ちょっとノア」


「なんだ?」


「あなたのベッドはあっちでしょ?」


「いいだろ別に。女同士なんだし」


「そういう問題じゃ――あっ……」


 耳に息を吹きかけられ、思わず変な声が漏れる。


「ノア、いい加減に――」


 リゼットが本気で注意しかけたとき、部屋の向こう側で声が上がった。


「おい! は、入ってくるなっ。自分のベッドで寝ろ……!」


「いいじゃん、いいじゃん。アタシとリリアの仲だろ?」


「そ、そんな仲になった覚えはない! いいからさっさと離れろ!」


 ベッドから何かが転げ落ちる音がした。


「ノア、あなたも早く自分のベッドで寝なさいよ」


「……わかったよ」


 ノアは寂しそうな声で返事をすると、自分のベッドへと戻っていった。


 「怖くないんですか?」

 その言葉がいつまでもリゼットの頭の中を駆け回っていた。

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