九十二話 コンクリートの箱
久しぶりに執筆再開です
自分でも書いていたことを忘れてしまいそうなくらい久しぶです
また、よろしくお願いいたします
地方都市の外れ、大きな幹線道路を古びた車が軽快に走っていた。
私は最近、指定席になりつつある彼の車の助手席に座り、窓を全開に開けて外の景色を眺めていた。
「こんなところに撮影場所があるの?」
彼に聞くつもりじゃなかったんだけど、そんな言葉が出てしまった。
「最近は撤退する工場も多くてね」
「工場の廃墟なの?」
わたしは、相変わらず外を見ながら話していた。
彼もまた運転に集中しているのか、フロントガラスに向かって話していた。
「今日の撮影場所は廃墟じゃないんだ」
彼はフロントガラスに向かって話続けた。
「廃墟は結構危ないから…安全靴とかないとね…」
「ヘルメットとか軍手とかも…持ってきてないの?」
「今日は必要ないんだ」
「ふーん」
そんな何気ない会話を無難にこなすくらいには、彼との関係も良好なんだけど…
彼のわたしに対する扱いが、優しすぎて辛すぎる
もう、キスはした
もう、手は握った
最近、添い寝もした
頭を撫でて貰った
膝枕もした
膝枕と耳掻きの最強コンボを決行した!
でも…まだ、そう…まだ
スキンシップの先がまだない。
もう、そろそろあってしかるべきものがいまだにない
そんなことを考えていたら、思わず本音が溢れてしまう。
「まだなのかなぁ…」
「もうそろそろだよ」
「ほんとに?」
「ほらついた」
縁石切れ間歩道に乗り上げるようにして彼の車は停まった。
その先にはコンクリートの箱ようなものが見える。
少し広くなっている歩道の端には、地下歩道通路の入口がポツンと存在していた。




