九話 誤解
「ちょっとまて!知美!なんでそうなる?」
「あなたの優しさと夜の強さに惚れたけど…結局あれでしょ、やれそうなら誰だって良いんでしょ?」
「だから…何処をどうやったらそういう答えになるんだ…」
「知ってるんだからね…私の出演していたDVD、浴室の点検口の裏に隠してあるでしょ?…この間、見つけたんだから…」
「何故それを…」
「脱衣場にいつも踏み台が置いてあるからおかしいなぁと思ってたの…今朝、浴室を隅々までカビ取り剤をかけて洗った訳…点検口が少しずれてて…仕方ないから踏み台使ってはめ直そうかなぁって思って持ち上げたら…コンビニの袋が天井裏にあるじゃない…」
「最近やけに部屋が綺麗だなぁって、思っていたら…知美が掃除してたのか?」
「そうよって…私達以外に他に誰がいるって言うのよ!まさか!淳史さん?早速、二号さん登場とかないでしょうね!」
「いるわけないだろう!そんなもの!」
「どうだか?私みたいな上物を手に入れて変な自信が着いてるって、専らの噂よ!先月一人で裏通りのホテル街を歩いていたって話聞いたんだから…何処の女と会っていたのよ!正直に話しなさいよ!」
「…そんなのいるわけ無いだろう!」
「その一瞬の沈黙は何よ!いるんでしょ!」
「居ません!」
早苗は店長を睨み付けた。
「おはようございます!」
そこに一人のアルバイト店員が入ってきた。
一瞬のうちにそのただならぬ空気を察して、静かに店長に近づいて、小声で話しかけた。
「店長どうしたんですか?」
「少し、誤解されてしまってな…」
「誤解ですか?」
「聞こえたわよ!誤解なものですか!淳史さんの本性がわかっただけよ!」
「本性ですか?」
「そうよ!この欲情男!私以外に女がいてしかも、両刀使いの変態だなんて!私を騙したのね!」
「誰が?」
「あなたの隣に転がってる雪だるまみたいな店長よ!見た目が雪だるまなら心まで冷たいなんて…」
「なんか店長…月島さん銀河系クラスの勘違いしてるようですね…」
「だろ…」
「月島さん…」
「何よ!」
「何がどうなって…そうなったかは知りませんが…店長、貴女が思っているほどモテませんよ…」
「へっ?」
「だって、毎日毎日、誰彼構わず、月島さんの自慢話やらノロケ話ばかりしていて…最近誰も近づきませんよ」
「ホテル街一人で歩いてたのよ!」
「店長…俺がよせって言ったのに…ホントに行ったんですか?」
「あぁ…」
「えっ、知ってるの?」
「一ヶ月前一緒に呑んでいたんですけど…彼女との夜の過ごし方の話になりまして…気づけばホテル街の中でどのホテルが良いか?みたいな話になって…そしたら、店長が突然、調べてくるとか、言い出して…恥ずかしいからやめましょうって言ったんですけど…恋人の前で恥をかく前に、しっかりと調べるって…出ていったんですよ…」
「それって…」
「何となくわかりました?…お二人のプライベートなんて俺はどうでもいいですけど…月島さん何か思い当たるところがありそうですね…」
「一ヶ月前私の誕生日で…二人っきりでゆっくりできたらいいねって私が…淳史さんに言ったの…でも、DVDは?」
「店長…まだ捨てて無かったんですか?」
「…すまん…あまりに綺麗で…」
「えっ?」
「俺があげたんです!店長に…店長が月島さんとつき合う少し前に…俺知ってたから…あの時は、俺黙っていたけど…月島さんを少し軽蔑してたし…店長に月島さんについて相談されて…DVD渡しました…見ればわかるからって…渡したんですけど…翌日、目の下に隈のある顔で店長言ったんですよ…俺は過去より未来を信じるって…月島さんとつきあいだしたのはその後だったと思いますよ…」
「両刀使いは?」
「両刀使いかどうか俺は知りませんけど…雪だるまみたいなメタボ中年にそんな…恋人なんてできないと…月島さんなんで俺を睨むんですか?」
「私の淳史さんを悪く言わないで!」
「えっ…あっ…店長…助けて…」
「どうせ俺は雪だるまだよ!」
「折角、助けてあげたのに…それは無いですよ…」
「誰も頼んでないし…」
「そんな…」
アルバイト店員は壁に持たれて天井を見上げた。




