十話 待ちくたびれて
私の前にはほぼ食べ終えた白いお皿があった。
ただまだイチゴパフェはテーブルの上にはなかった。
デザートを食後にまわしたのは、きっと、早苗が変に気を回したせいだろう。
仕方がないので少し待つことにした。
しかし、なかなかデザートは来なかった。
「少し遅いわね…まさかイチゴ切らせて買いに行ったとか?…」
私はそんな一人言を呟いた。
「かもしれませんね…」
彼が私の一人言に応えてきた。
私はなんだか少し苛立ちを覚えた…
「きっと、苺を摘みに行ったのかも知れませんよ…」
「へっ…突然なに言い出すんですか?」
「いや、そう考えた方が少し楽しいでしょ?」
「そんな馬鹿な話…」
「馬鹿馬鹿しいかもしれないけど、イライラしているより楽しい方が良いでしょ」
「そうかも知れないけど…もし、それでも来なかったら…」
「それはきっと、牛の乳を搾りに行っているんですよ」
「はっ、そんな下らない…」
「でも、何も考えずに待つよりは楽しいでしょ」
私は彼にそう言われて、少し苛立ちを覚えている自分に気が付いた。
そして、その苛立ちが幾分か薄らいで行くのも感じ始めていた。
これと言って話す話題がない私にとってある意味好都合だった。
少し彼を試すように不機嫌な顔をしながら、この下らない話につき合う事にした。
「それでも、来なかったら?」
「砂糖を作るために砂糖大根を植えているんですよ」
「それでも来なかったら?」
「きっと、イチゴジャムを煮詰めているんですよ」
「出来立てのイチゴジャムって…それはそれで美味しそうね」
「そこに摘みたてのイチゴと新鮮な牛乳から出来た生クリームが入っているんですよ…きっと」
「なんだか、イチゴパフェが来るのが楽しみね」私は自然と笑っていた。
それから三十分たってもイチゴパフェは来ることはなかった…
さすがに待ちくたびれた私は厨房に向かった。
カウンター越しに早苗に声をかけた。
「すいません!パフェまだですか?」
「あっ…先輩…パフェですか?…あっ!すいません直ぐお作りします!」
「お願いね、こっちは牛の交尾までして待ってたんだから…」
「え?牛の交尾って…?」
「なんでもないわ…気にしなくていいのよ」
それから数分後にイチゴパフェが届いた。
不思議と苛立ちはなかった。
しかし、念願のイチゴパフェを食べ始めると、私のスプーンを持つ手が止まった。
「アーサさんどうしました?」
彼は心配そうに私の顔を見てきた。
「なんでもないわ…ただ…」
「ただ…」
「牛の交尾を想像しちゃうと…食欲が…」
「あっ…すいません…」
「貴方は別に悪くないわ…今は食べにくいだけだから…こんなことなら…あんみつにでもしておけば良かったわ…
そう言って私は彼に微笑んだ。




