八十九話 プレゼント
「…教会の写真?…ですか…」
と、私は言った。
「廃墟の写真を撮っています」
と、歯切れが悪そうに彼は答えた。
私は、じっくりと写真を見た。
薄暗い森の中の荒れ果てた、教会…
そこに差し込む一筋の光…
少し寂しげな、静かな風景だった。
「変わってますね」
と、私は言った。
「変わり者だとよく言われます…心霊写真を撮っているのかと言われる事もなくあります」
と、彼は言った。
「あっ、私が言いたかったのは、貴方の事じゃなくて、写真の事で…普通なら、怖かったり、汚く見えるはずなのに、穏やかな…少し寂しく見えるけど…不思議な写真だなって思ったから…」
「…もし良かったらアーサさんに差し上げます」
「いいんですか?だってこれって、お仕事の…」
「いいんです…嫌われたり、怖がられたりするんじゃないかと思って…なかなか、言い出せなかったんです…」
「…」
「でも、心配するほどでもなかった…先まで心配していた自分が馬鹿みたいで…」
「わたし、ほら普通じゃないですから…心配することなんてないですよ…それなりに色々と経験も積んでますし…」
「そうですよね…」
「そうですよ…でも、素直に異性から『そうですよね』とか言われると、ちょっぴり傷つきますけど…」
「あっ!ごごごめんなさい」
「冗談ですよ…冗談、そんなに本気で謝られたら、こっちが恐縮してしまいます」
「恐縮だなんて…俺の方が悪いのに…」
「ありがとう…大切にしますね」
「えっ…は、はい」
「ふふっ」
わたしはつい笑ってしまった。
彼の返事がいつものように、頼り無さそうだったのが、なんだか嬉しかった。と、私は言った。




