八十七話 こぼれた言葉
「無理をさせてしまって…ごめんなさい…」
「……」
突然の彼からの謝罪に私は困惑した。
「仕事の後に無理をさせてしまって…」
言葉を濁してはいるが、彼と会う前にわたしがしていた事を、彼は知っているようだった。
「仕事と言っても…」
そこから先の言葉が出てこなかった。
確かに人前で堂々と言えるような仕事ではないかも知れなかった。
でも、誇りと言うか…少なくとも、気概を持って仕事に挑んでいる、自信があった。
ただ、金や欲でやっているつもりもない。
ましてや、投げやりになったり、周りに流されるままに、仕事をやっている訳でもない。
まったく、後ろめたさが無いと言ったら、嘘になってしまうけど、…
ある意味自分をさらけ出して、見せつけて…
…見てもらって…此処に自分がいるんだと…何処の誰ともわからない、画面越しの彼等に…自分の活きている姿を見てほしくて、聡美ではなく…あさみ…として、普段の自分では考えられないほど、積極的に…受け身ではない、自分に酔った。
生きている…いや…活きている姿に酔っていたのかもしれない。
あさみ、という演じている部分が、少しずつ聡美の臆病で怖がりで、引っ込み思案なところを無くしてくれているような気がしした。
強がりとか、虚勢ではなく、ありのままと言うには少し、おかしいけれど、世間体として、良くない事を、本心と演技の混ざりあったぐちゃぐちゃした歪な…大空あさみは、わたしの活きている姿そのものだ。
だから、尚更言葉にできなかった。
AV 女優としての自信と、それでもやっぱり捨てきれない後ろめたさの中で、言葉を選択している自分が少し嫌になった。
「ただ、のAV だから…」
そんな本心とも、強がりでもない…自分でも理解出来ない言葉がふと、こぼれ落ちた。




