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八十一話 涙
「先輩…その…大丈夫何ですか?」
早苗は不安そうな顔で私を見つめてきた。
しかも、かなりの至近距離で…彼女の息がわたしの鼻の頭にあたりくすぐったかった。
つい、くしゃみが出そうになった。
「クシュ…顔近いから…」
「心配したんですから!裸で緊急搬送されたと聞いたときから、興奮…心配したんですから…」
「興奮…心配?」
「私の先輩に酷い事をしたんじゃないかと心配で心配で色々考えすぎて、興奮しちゃったんですから!」
「早苗…なに考えてるの?」
「えっ?だって!男と女が同じ部屋にいたら、男が獣になるは必定!しかも、女が先輩ともなれば、私だって…」
「私だって?」
「美味しく頂きます!」
「食べんでよろしい!」
わたしがそう言った、次の瞬間、早苗の顔が少し崩れた。
「…酷い事をされたんですか?…」
早苗は優しく、でも何処か影を含んだ顔をして、静かに微笑んだ。
「…何もなかった…のよ…大丈夫だから…」
「本当ですか?」
「何もなかったから…」
一瞬の静寂…早苗の小さな手が…細く長い指が私のまぶたに触れる。
彼女の指の温もりに心まで温まってるのを感じた。
そして、わたしのまぶたからゆっくりと優しく離れて行く指先に一滴の輝く物が見えた。
…わたし…泣いていたんだ…
涙が…他人事のように感じる…自分で泣いている感じがしなかった。




