七十八話 シャワー
彼が、ゆっくりと扉を開く…ドアの向こう側には極々普通の客室があった。
オフホワイトを基調にした落ち着いた雰囲気、ラブホテルとは違って、特別な装飾は一切無い…
彼が何故此処を選んだのか…彼は何をわたしに望んでいるのか…
アーサさんとわたしを呼ぶ…少し格好良くて、少し不器用で、不思議な雰囲気を持つ…そんな彼…
キスはしたけど…何処か他人行儀で…まだ、手を握ってもいない…
そしてわたしは彼に何を望んでいるのだろうか?
そもそも、わたしは彼の何にこんなにひかれてしまったのだろうか…
考え事をしながら部屋の中を見回しいたら、彼が小さなデスクの脇の布張りの椅子に腰を下ろすのが見えた。
そして、胸元を濡らしていることを思い出して、
少し恥ずかしくなった。
そう…恥ずかしい…裸をさらすような仕事をしておきながら、わたしは目の前の男性に普通に恥ずかしがっている…事に私自身、今更ながら気づいてしまっていた。
わたしは彼を静かにじっくりと見てしまっていた。
恥ずかしいけど、見ていたい、いや…そうじゃなくて、見られたいのかも…きっと、わたしは彼に私自身を見て欲しいと…そう思って…そう願って…アーサだけじゃ物足りない、聡美を私自身を、私の全部を見て欲しい…
彼ならきっと見てくれるはずだから、わたしの知らない私を見つけ出してくれると、何故だかそんな事を考えていた。
「シャワー浴びてくるね」
わたしは服も脱がずにそのままバスルームに入った。
勝手に高鳴る心臓が、わたしの心のなかの期待と不安を私自身に伝わってくる。
わたしは服を着たまま、シャワーのレバーを思い切り回した。




