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六十九話 弱い自分
「アーサさん」
彼の声、足音、近寄る影…
あわてて私は立ち上がった。
「何でもないわ…ちょっと、足がもつれただけよ…」
出来るだけ平静を装うつもりが、声が微かに震えた。
「大丈夫なわけ無いじゃないですか…車に乗って…」
と、彼が私の体を触れようとするのを感じた。
「さわらないでよ…そんなことされたら惨めになるだけだから…」
「でも…」
「でもってなによ!降りろって言ったの貴方の方じゃない…ただ、転んだくらいで…ちかよらないでよ…私は…何でも…なんでも…なん…う、う、うあぁぁぁぁぁぁぁぁ」
私は顔を両手で覆い泣いてしまった。
彼にすがり付きたくなる衝動を必死にこらえた。
彼に甘えようとする弱い自分に負けたくなかった。
それでもきっと、彼が抱き締めてくれたなら、…
私は彼の事を許してしまう。
認めたくないが、結局、私は弱い存在でしかなかった。




