四十六話 隣の席
「戻るの面倒だから隣に座っていい…?」
自然と出た自分の言葉に私は少し驚いた…まぁ、確かに隣の席に戻るのは少し面倒には感じた。
そしてまた、彼が逃げ出すのではないかと少し不安にもなった…
「随分と大きなパフェだね…」
そんな事をいう彼は、座って良いとも悪いとも言わず、だからといって逃げ出す訳でもなく…
彼の手はサクランボへと伸びていた…
「あっ、一緒に食べようって言ったけど、いきなり手を出さないでよ!これ私のだし…!」
「あっ、ごめん…」
「で、座っても良いかしら?」
「あっ、うん…あんまり、近くなれば…恥ずかしくなるから…」
私は彼のそんな言葉に、ファミレスでの出来事を思い出した…
「はっ、あっ…いや…あっ、、あの時は仕方ないでしょ!貴方が頭をガラスに激突がしたのが心配だったの!」
「そう…ありがと…」
その言葉に私に対する、軽蔑や嫌悪感みたいなものは感じれなかった。
それから私たちは、何とも噛み合わない会話をしながら、互いの顔を見ないように気を付けながら、黙々とパフェを食べ続けた。
端から見たら体裁の悪い罰ゲームの類いに見えたに違いなかった…
私は時々跳ねる心臓の鼓動に戸惑いながら、同時にそれを楽しんでいる自分を隠すように、照れ笑いが絶えなかった…
成り行きとはいえ一つのものを二人で分けあって食べるのは、とても久しぶりで…甘く刺激的だった。
身体を重ね会うような仕事をしている自分がこんな些細な事に、狼狽えたり、よろこんだり、照れてみたりした。
時に感情が入り交じり、確かな自分の心の形を把握することが出来ない事もあった。
それでもただ…一つだけ確かな感情が沸き上がってきていた。




