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四十四話 空席
「ママ?本気なの?」
「嘘に決まってるでしょ!私は今の仕事が楽しくて仕方ないもの」
「よかった…ママが復帰何てしたら、私の仕事がそれこそ無くなりそう…」
「あら何?私の事ライバルとか思ってくれてるの?ありがと♪」
「ライバルと言うより脅威でしかないけど…」
私は現役時代のママを思い出して…体が僅かに震えるのを感じた。
「あっ♪チーズケーキ仕込まなくっちゃ♪フフ♪パフェ溶けないうちに召し上がれ♪」
上機嫌になったママは鼻唄を歌いながら店の奥へと消えていった…
ママに言われてパフェを見てみれば…確かにアイスクリームが溶け始めていた…
しかも、話込んでいたせいか、はたまたパフェが大きすぎるせいか…溶けてしまう前に完全制圧するのがかなり厳しい状態だった…
このまま無理して一人で食べ続けたら…お腹を壊すかも…
冷たいもの食べすぎて腹痛になるなんて…子供みたいな事はしたくないし…
嘘かホントか知らないけど、早苗はバイトで帰ったし…
私と健二さんしかいない店内…
静かに流れるエリックサティ…ジムノーなんとかの調べ…
溶けかけのパフェ…
私と健二さんの間にはさっきまで早苗が座っていた空席が一つ…
何だか少し気恥ずかしい…
でも、ちょっと心地いい…
私は早苗が座っていた席を、また見つめた…
『先輩こっち!』
そんな早苗の声が聞こえた気がした。




