四十三話 ママは清純派
「………」
私は言葉を無くした。
自分の想像を越える事態に陥ると、人の思考は停まってしまうのだと、私は認識した…
「偶然…そこであったんですよ…」
早苗が辿々しく言った。 「ほんとに偶然なんですよ…」
「そっそっそうなんです」
早苗の話に合わせるように彼が言葉を発した…
私はその話を無視するようにカウンターに眼を向けた。
「早苗…手伝ってくれる?」
私は柄の長いスプーンを鷲掴みにすると、味わう事なく、ただ黙々とフルーツパフェを食べ始めた。
「えっ?は、はい!」
一瞬、早苗は複雑な表情を浮かべた。
そして、何のためらいもなく彼女は私の隣の席に腰をおろした。
「ママ、私にもスプーンを下さい」
「ちょっと待ってて…」
ママは少し慌てた仕草で早苗にスプーンを渡した。
「ほら、ぼ〜としてない!隣に座って!早く!」
早苗はスプーンを握りながら、健二さんに隣に座るように言った。
無言で彼は席についた。
私は叫びたい思いを押さえつけるように、口のなかにパフェを放り込んでいった。
「ママ!スプーンもう一個!」
早苗がそんな事を口にする…
そして、早苗はパフェを掬うとそのスプーンを彼に渡した。
「ちょっと、早苗!何してるの?」
「えっ?折角ですから皆で食べましょうよ♪先輩」
「これは、私と早苗で食べるの!何であなたが居るわけ?」
「だから、偶然ですって…」
「あれっ?早苗バイトは?どうしたの?」
「いや…それはって…あっ!そうでした!私!バイトに行きますね!バイト!ファイト!!では、お先です!」
早苗は何ともわざとらしい素振りで店を足早に出ていった。
「ママ!」
「何かしら?」
「あれの何処が演技が上手な訳…まったく…」
「演技って?…何の事かしら…」
「…ママに聞いた私が悪かったわ…」
「あれ…あさみちゃん…しらないの?」
「知ってるわよ!元清純派アイドル系AV女優でしょ…」
「わかってるならよろしい♪」
「私も復帰しようかしら?」
「はっ?」
私は思わずスプーンを落としそうになった。




