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四十一話 幻のパフェ

「あっ…ほら…鉛筆の文字が今にも消えそうじゃない…」

私は早苗を見ないように、カウンターの向こう側の棚を見ながら言い訳みたいな言葉を言っていた…

「そっ、そうですよね…私って、ほら、あわてんぼうですから…」

「とりあえず、預かっておくわ…」

私はハンカチを取り出して彼からの手紙を包み込んでバックの中にそっとしまった…

「よかった…」

早苗が小さな声で呟いた…

「えっ…何がよかったの?」

「何でもないです…あっ!いけないバイトに行かなくちゃ!」

「えっ…まさか、早苗…」

「先輩私行きますね」

早苗は早口にそう言って会計もせず、足早に店を出ていった…

「ちょっと早苗!」


「ありがとうございました」

「てっ、ママ…あぁ、もういいわよ!私が払うわよ!ママいくら?」

「あら、もう少しゆっくりしていったら?」

「ママ…いつから、そんなに呑気になったの?早苗の分も私が払うわ」

「要らないわ」

「へっ?」

「てっ、言うか…もう貰っているのよね…貴女の分も」

「はっ?私の分も」

「そうよ、何だったらアップルパイをお持ち帰りする?」

「えっ?…あっ…アップルパイ?」

「いつも帰りにお買上頂いてるじゃない?」

「ママ?早苗…いくら置いていったの?」

「ナイショ…」

ママは控え目に自分の左指にキスをして、クスッと笑った。

「そんな色っぽい仕草をしたからって…ねぇ、ママ・お・し・え・て…」

「流石に現役は艶っぽいわね…でも、残念ね、色仕掛けは同性にはあまり効果的じゃないのよ…それより早苗ちゃん…大人っぽくなったわね…演技も上手だし、現役復帰もありかもね…」

「ママもそう思うって…早苗、演技って?」

「…」

ママは一瞬、大きく眼を見開いて両手で口元を隠した。

「ママ?何か私に隠し事をしてるでしょ!」

「さて?何の事かしら?あら、いけない明日の分のチーズケーキ仕込まなくっちゃ…」

「ママ、教えてくれないと、フルーツパフェ注文しちゃうわよ」

「フルーツパフェね…ちょ〜と待っててくれる?」

「嘘…明日は雨かしら…」

いつもなら、苺を切らしているとか、言い訳を言って、メニュー載っているのに、一度も作って貰えなかった。

なのに、今日に限ってスンナリと注文が入った。

ママはカウンターの横にある厨房に消えていった。


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