三十二話 無防備
久しぶりの先輩との会話…
先輩の表情が面白いように変わっていく…
隠そうとしても伝わってくる彼に対する思い…
先輩自身が気付いていない可能性を色濃く感じるけど…
半分は気付いているようにも思えるし…
グラスの中の溶けかけた氷をストローでクルクル回している…
大人びたその容姿とは、違う子供のようなその仕草が先輩を更に魅力的な女性に見せる…
「先輩…それ…ズルイ…」
私はつい独り言を溢した…
「先輩…それ…ズルイ」
早苗がそんなことを言ってきた。
「えっ?ズルイ?って…ちょっと、さっちゃん…どういうこと?」
「それっ…ズルイです!」
そう言って早苗が私のストローをもつ手を指差した。
「これ?」
「それ!」
そう言われて…私は、ストローをグラスの中で一回りして見せた。
「そういう可愛らしい仕草は何処で覚えてくるんですか?そういうの無自覚にやっちゃうから…はぁ、もう!可愛らしいじゃないですか!先輩!もっと自覚してください!」
「自覚?」
「そうです!」
「何の?」
「ご自身の容姿と仕草をよく見ていればわかります」
「急に怒ってどうしたの?」
「別に怒って無いです!大切な事を大きい声ではっきりと相手に伝えてるだけです」
「大切な事って…?」
「先輩…どうして…仕事以外だとこうも…まったくスイッチというか…、他人の眼をもっと気にしてください!」
「だから何の話なの?…」
「先輩!無防備すぎます!」
「だから早苗…話が見えないのだけれど…」
「口元だって…たまに半開きになって、どこまで無防備で隙だらけ何だか…」
「無防備、無防備って、私そんなにガード緩くないわよ…だいたい何に対しての無防備何だか?」
「そんなの決まってるじゃないですか!他人に対してです!」
「へっ?私が?」
しばらく、彼どころか、異性との接点すら少なくなっている私が想像すらしていなかった言葉を早苗が言った。
「先輩!ちゃんと自覚しないと!世の中の男性を歩くだけで傷つけていく魔性の女になっちゃいますよ!」
「早苗そんなたちの悪い冗談は止してよ…」
「冗談なんかじゃありません!」
早苗が真剣な眼差し私を見つめた。




