二十七話 久しぶり
カラン…
私は喫茶店のドアを開けた。
珈琲の香り漂う店内は、ダークオークを基調とした古めかしく落ち着いた雰囲気を醸し出していた…
まるで二十数年前から時が止まったかのような、静かでどこか懐かしいその空間は私のお気に入りの場所…
そして、カウンターの一番奥で珈琲を飲む一人の女性の姿があった。
「さっちゃん(早苗)お待たせ…まった?」
私はそう言って彼女の隣の席に腰をおろした。
早苗は私の方を見ながらお前は幼稚園児か?と思いたくなるくらいの無邪気な笑顔で私を迎えてくれた。
「全然待ってません!今来たところです先輩」
「ここに来るのも久しぶりね…ねぇ、煙草一本もらっていい?」
「いいですけど…」
彼女は不思議そうな顔をしながら、煙草の入ったソフトケースの頭を人差し指で軽く数回叩く…
引力に逆らう様に一本だけフィルター部分が飛び出す。
その箱を彼女はそっと私に差し出した。
久しぶりに口にした煙草は、懐かしさと同時に…
「ケッホッ」
「先輩大丈夫ですか?」
「ご免なさい…久しぶりに吸ったものだから…」
「えっ?先輩煙草止めたんですか?」
「止めてないけど…私、仕事の後しか、煙草吸わないから…」
「そうだったんですか…私といる時、先輩いつも煙草を口にしていたから、てっきりヘビースモーカーだとばかり…」
「それは、あれよ…さっちゃんと会うのが仕事の後が多いからよ…」
「そう言われれば…」
「最近…仕事がすくなくって…ここ半年ぶりかしらね…煙草も仕事も…」
「えっ?嘘…先輩が…」
「六年もやっていれば、そんなものよ…」
「そんなことないです!」
「えっ?早苗?ちょっと声大きいわよ…」
「ご免なさい…でも、先輩…私、先輩の演技というか…艶があって好きです…」
「ありがと…私の場合、演技というよりありのままさらけ出しているだけよ…ママ!アイスコーヒー濃い目で…」
私は苦笑しながら、カウンターの向こう側にいる女主人にアイスコーヒーを注文した。
「…魅力的です…」
「は?」
「先輩はいまでも魅力的です…男たちの見る目が無いだけです…私が男だったら放っておきませんよ」
「あら…さっちゃんにそう言われるとお世辞でも嬉しいな♪」
「お世辞じゃないです…それこそ口説きたくなるくらいです」
「ちょ、ちょっと待って…私…さっちゃんの事好きだけど…流石にそっちは…」
「大丈夫です!私も男の方が好きです…現に彼氏いますし…」
「そっ、そうよね…で…彼とはいつ結婚するの?」
「そっ、それは…」
そう言うと、早苗は少し暗い顔になった。




