二十話 絶句
早苗の細く長く白い指の先に小さな紙があった。
「これは?…」
彼は、彼女に確認するように声をかけた。
「先輩に渡してください」
「はぁ…ってこれメアド…なんで俺に…」
「仕方ないじゃないですか…先輩店の外にさっさと出ちゃうし…私、仕事中だし…」
早苗は俯きながらこたえた。
「彼女なら…外に居ますよ…」
そう言って彼は駐車場の方を指差した。
「えっ?」
早苗は彼の指差す方に眼をやった。
すると、そこにはキョロキョロしながら、駐車場で挙動不審に立っているアーサの姿が目に入った。
「すいません!そこで待っててください!」
「はい?」
足早に早苗はレジを離れ、店の外へと出ていってしまった。
「ちょっ…ちょっ…ちょっと…えっ…えっと、とりあえず待っていれば…いいのかなぁ…」
そう言って彼は困惑気味に笑みを浮かべた。
早苗が小さな紙を渡して足早に店の外へと出ていく姿を見た厨房の二人の男性は絶句して固まっていた。
「なんだ?何が起きた…」
「月島さん紙を渡して足早に去っていきましたよ…あれじゃ…どう見ても…」
「恋文を渡した女子高生…知美…俺のどこが悪かったんだ…」
「店長…俺…店長だから諦めたのに…こんなのって、無いっすよ…」
「どういう事だ…」
「あ…何でもないです…独り言っす…それより店長、月島さんを呼び戻して下さいよ」
「…」
「店長…?」
「無理だ…」
「店長?」
「俺の体は知美が居ないと…動けないんだ…」
「店長!だったら尚更追いかけてくださいよ!」
「わかっている…わかっているんだが…足が動かん!」
「じゃ、俺が行きます!」
「まて!俺が…俺が行く!お前ごときに先を越されてたまるか」
そう言って、店長は早苗の後を追って…外に出ようとドアノブに手をかけて固まった。




