表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

68/70

66話 モンスタートレーナー


 炎の精霊イフリートとの戦いもようやく一段落した僕達は、弱り切った相手を見て今後の相談をしていた。



「どうやらミライも気にいったようだし、これも一応護衛役として捕まえようか?」


「そうね。明り役にもなるだろうし、はぐれた時の目印にもなりそうだからね」



 せめて出会った時のイフリートだったら戦闘にも使えたのだがと思いながらも、僕は死霊術を使いながら右手で火の玉を掴み、トドメを差した。


 肉体があるなら死体になってから死霊術を使えばよかったのだが、精神体の魔物はトドメを差したと同時に消滅してしまうので、今回のように死霊術を使いながらトドメを差してみた。その試みは成功したようで、一度消えた火の玉はすぐに再生して形を形成する。



「イフリート、君の役目はミライの指示に従う事と彼女の護衛だ。あと、むやみに人を殺す事も駄目だ」



 僕は蘇ったイフリート(火の玉)に命令を出す。すると、



「まさかこの迷宮から解放されると同時に、また縛られるとはのう。まぁ、ここよりは退屈せんで済むか……。お主の命令、確かに承った」


「「「「「 …………… 」」」」」


「む、どうしたのじゃ?そんな得体の知れない者を見るような目をしおって」



 突然普通に会話をしてくるイフリート(火の玉)に驚き、僕達は見つめるだけで何も言えなくなってしまった。



「それでお嬢ちゃんが主のミライじゃな。ワシはイフリート、この迷宮で死しては蘇る魔物として縛られていた者じゃ。今後は主の為に力を振るうから、安心するがよい」



 驚きのあまり何も喋らない僕達をほかって、ユラユラとミライの所に移動して挨拶を済ませる。



「よ、よろしくお願いします」



 ミライは目の前で話された事で、何とか頭を下げて返事を返した。



「なら早速ワシはその魔導具の中で休ませてもらうとするかのぅ。年寄りはもう疲れたぞ」



 そう言ってイフリート(火の玉)は、さっさと自分の意思でミライのブレスレットの中に入って行った。


 完全に取り残された僕達が、いつもの調子に戻るのは暫くしてからだった……。






 落ち着きを取り戻した僕達は、イフリートの存在について聞こうとしたが、ブレスレットの中で寝ているようで返事はなかった。おそらく相当の魔力を消費してしまった為に、今は体を休ませているのだろう。


 予定より大物?の護衛役も手に入れたので、これ以上下の階層にはいかずに引き返す事にする。











「いろいろありましたが、ミライちゃんの冒険者登録をしに行きましょうか」



 地上に戻って来た僕達は、戦う戦力を得たミライを冒険者登録する為にギルドに向かう。リーザには迷宮にミライを連れていく許可を貰う時に出会ったので、無事に帰って来た事の報告は済んでいる。



「と、言う訳でこの子の冒険者登録をお願いするわ」


「何が、「と、言う訳」ですか。見た所戦えるようには見えないけど、本当に大丈夫なんですか?」



 朝に顔を出したと思ったら、夜にまた来て少々オドオドしている小さな女の子を冒険者にしたいと言いだしたのだ。もちろん詳しい説明は何一つしていないので、リーザがそう疑問に思うのも当然の事だった。



「ミライ本人に戦う力はないわね。でもこの子はモンスタートレーナーなのよ」


「モンスタートレーナー?そんな名前の職業は聞いた事がありませんね」


「簡単に言えば、魔物使いね。さっきまで迷宮にいて、気にいる魔物を捕まえに行っていたのよ」


「……方法は想像がつきますが、なぜそこまでしてこの子を冒険者に?」



 リーザはアラド達を鍛えた時の方法を知っている。なので魔物に言う事を聞かせれるとすぐに納得できた。だがわざわざ戦えない子を冒険者にする必要性が理解出来なかった。



「いろいろ私達の事情を知っているあんただから教えるけど、この子は一応魔王の1人なの。実はあの時に起こった転移はこの子がやったんだけど、そのせいでハヤテの奴隷になっちゃったのよ。そして戦える力がないのに命が狙われている事を知ったこいつは、この子を守ると決めて、身を守る術を身につけさせる為にモンスタートレーナーとしての腕を磨かせようとした訳よ」



 ゼロは簡単に魔王という言葉を使ったが、人間と魔族が争っている現状で目の前に魔王がいるのは非常識過ぎるのだ。リーザは散々非常識な目に遭って、少しは免疫がついているので頭を抱える程度で済んでいるが、もし他の人なら騒ぎ出して町にいられない状況になっているだろう。もちろん、そんな人にここまで事情を話す事はないのだが。



「……分かりました。ですが少々お待ちください」



 そう言ってリーザは2階に上がって行き、ルドルを連れて戻って来た。



「それでは私は下の訓練所に行くので、その間受付の仕事をお願いします」


「お、おう。分かった……」


(やっぱりこのギルドで最高の力を持っているのはリーザだな。完全にギルドマスターを使っているよ)



 詳しい話は当然ルドルにもしていない。なのに何も言わずにリーザの指示に従っているルドルを見て、僕は女性は強いなーと感心する事しか出来なかった。









「……………」


「またあんたなのね」



 地下の訓練所に着いた僕達の目の前には、いつもの試験官が諦めた表情で立っていた。



「それで今回は誰なんだ?……と言っても、見た事がないのは1人だけか。はー、益々小さい子が来たな。それにリーザもいるって事は、その子も問題があるんだな」


「なによ。私達のどこに問題があるっていうのよ」



 確かに問題は何も起こしていない。いや、ルドルの像を壊しているのだから、少しは問題を起こしている。だがその事をすっかり忘れているゼロは首を傾げて不満そうにしていた。



「まあいい。それで今回試験を受けるのはその子で合っているのか?」


「は、はい。精一杯頑張ります」



 そう言ってミライが一歩前に出る。



「やる気は良いが、武器はどれを使うんだ?」


「ぶ、武器はいりません。この子がいますから。…おいで、コロマル」



 そう言ってミライのブレスレットが小さく輝き出す。



「……嘘だろ……」



 試験官は茫然としていた。突然目の前に現れたグレートウルフに。



「よりにもよって、下層の魔物を従えたんですね」


「おいリーザ!あれは本物なのか!って言うか、お前はこの事を知っていたのか!?」



 呆れて額に手を当てているリーザに驚いている様子は見えない。それに気付いた試験官は、この魔物の存在が本物かどうかを慌てて聞いて来た。



「その子はモンスタートレーナーと言って、捕まえた魔物を自由に使役出来る力を持っているらしいです。なのでもちろん本物ですが、実力は本物以上と言っていましたよ」


「それじゃあコロマル。あの人を動けなくして」


「ちょっと待ってく……」



 動揺している試験官の開始合図を待たずに、ミライはコロマルに指示を出す。元々実力的に勝てない魔物に、さらに心構えも何もない状態で試験官が出来る事などなかった。


 勢い良く突進してくるコロマルの迫力に押されて尻餅をつく試験官を、怪我をさせないように優しく前足で押さえ込む。もちろん優しく押さえこんだので怪我はしていないのだが、試験官がどんなに頑張ってもその前足はビクともせず、目の前に大きな口がある恐怖にパニックになっていた。



「ミライちゃん、まだ試合開始の合図がありませんでしたので、一度その子を引かせてもらえますか」



 完全に不意打ちだったので、リーザが下がるように言う。ミライも「あ!?」と小さな声を出して気付き、急いでコロマルを自分の所まで下げさせる。






「すみません!すみません!すみません!」



 ミライは立ち上がった試験官に何度も頭を下げて謝った。しかしその隣では今もグレートウルフが試験官を睨んでいる。まるで自分の主に頭を下げさせている男に苛立つかのような目で……。



「も、もういいから、そんなに謝らないでくれ。試験も合格だ。不意を突かれなかったとしても、俺程度じゃそいつに勝てないからな」


「まあ、そうでしょうね。ルナちゃん達のチームに入る人が、普通の人材の訳がありませんし」


「ならもうわざわざ試験なんかしないで、お前の一存で合格にすればいいだろうが!」


「そうもいきませんよ。一応、規則ですので」


「いやいや、毎回こいつ等の相手をさせられる俺の身にもなってくれよ!」


「……諦めてください。さあ、皆さん。上に言ってギルドカードの発行を済ませましょう」



 いまだ勘弁してくれと言っている試験官を無視して、リーザは僕達を連れて上に上がっていく。流石にあの試験官が気の毒に思えたが、これはギルド内でも問題なので僕には何も出来る事がなかった。









 受付に戻るとすぐにルドルは2階に帰ってもらおうとしたが、ルナ達のチームの新メンバーに興味があるようでギルドカードの登録を見る事になった。




キルミライ   ランク 1


HP    28 /  28

MP    52 / 319


力      8

耐久力   10

素早さ    7

魔力   122




「良かった。結構普通の子だったのね」

「見た目の割にこの子のステータスも高いな」



「「 え? 」」



 ミライのステータスを見たリーザとルドルは、お互いの感想の違いに顔をあわせて声を出してしまう。



「…キルミライだったな。君はいくつになったんだ?」


「わ、私は13歳です……」



 ルドルの姿は怖いのか、ミライはルナの後ろに隠れながら答える。



「リーザ、13歳の女の子でこのステータスはかなり高いぞ?ルナ達の異常なステータスを見て来たからと言っても、もう少し世間一般で言う普通を思い出さないと、ギルド職員として依頼の斡旋が出来なくなるぞ」



 ルナ達の400オーバーなステータス、ハヤテの馬鹿みたいな6ケタHPなどを見て来たリーザは、多少ステータスの驚く基準が高くなっていた。その事をルドルに言われ、確かにと納得して頷いている。


 もちろんそうなった原因は僕達にあるのだが、それをわざわざ言って責任を負う必要はない。



「まあこれでキルミライもチーム幼女達の集いの一員だ。最近は弱者の盾も急成長してくれたから、この町のギルドも安泰だな」


「でも私達はそろそろ次の迷宮に向かって旅立つわよ」


「……なに?」


「だって目的の魔導具も見付けれなかったし、他の迷宮にも興味があるし、リーザに頼まれてた後継者も育てたからね。新築が出来ると同時ぐらいに、近くの迷宮街キャルビに向かおうと思っているわ」


「そうか、それは残念だが冒険者は自由が信条。その行動を止める事は俺には出来んな。それで後継者ってのは……」


「詳しい事はリーザにでも聞いて、私達はもうお腹が空いたから帰らせてもらうわ」



 ルドルの問いに、ゼロは全てリーザに丸投げしてギルドを出ようとする。お腹が空いて来たのは全員一緒のようなので、誰もその行動を止めようとはせず後ろをついて行く。ただ突然話を振られたリーザだけを残して……。



 






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ