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58話 暗殺者との戦い

 カレンとの争いも終わり、僕の事を少し認められたようなのでそろそろ迷宮に戻ろうとするが、すでに深夜に差し掛かっていて人通りがほとんど無い時間にも関わらず、前から3人の男達が歩いて来た。


 僕達はあまり目立つ行動はしたくないので、別の場所で転移しようと歩いて男達とすれ違う瞬間……突然腰から剣を抜いて僕達を狙って突き刺そう向かって来る。3人が僕達1人1人を狙っているのは間違いがなかった。



「な!?ルナ、カレン下がって!」



 僕は突然の事だったのでゴーストハンドも出せず、ルナとカレンを後ろに押して庇う事しか出来なかった。その為、僕の魔力の体には3本の剣が突き刺されてしまう。



「チッ!1人しか仕留めれなった。…まあ良い、ガキが残っただけだ」



 僕が刺された直後に手を振り回したので、男達はすぐに剣を手放して後ろに下がる。



(拙い!この体を傷つけられた。傷を塞がないと町中で大爆発が起こってしまう!)



 相手の剣は僕の体に刺さっているので封じたが、急いで傷口を塞がないと危険な事は変わらない。



「あ、あ、あ、あ、あ」



 ルナは置き上がった後、僕に刺さった剣を見つめながら、急に何かに怯え出すように自分の体を抱きしめるようにして震えている。



「あんた達!いったい何が目的なの!」



 そんな中、カレンが立ち上がり男達を睨みつける。



「別にお前達に恨みはない。ただある人からお前達みたいな存在の暗殺を依頼されただけだ」



 男達は懐から短剣を取り出し、いまだこちらに向けて殺気を出している。人を1人刺しても動揺しない所を見ると、それなりに経験のある暗殺者なのだろう。



「そう簡単に私がやられると思わない事ね!これでも魔法使いなんだから!」



 そんなカレンを男達はニタニタ笑いながら見ているだけで、少しも警戒をする様子は見えなかった。



「子供だからって舐めないでよ!………あれ?」


「どうした?魔法を使わないのかい」



 男達は余裕を持ってゆっくり近づいてくる。カレンは自分の突き出した手を見て、不思議そうな顔をして徐々に慌て始める。



「なんで魔法が使えないの!?」


「ククク、今、この周辺の魔法は封じてある。この魔法封じの指輪でな」


「……うそ……」



 男の指には宝石が1つ付いた指輪が光っていた。そして魔法を封じられた事を実感したカレンは、この状況に絶望を感じてしまう。何しろカレンとルナは魔法使いなので、魔法が封じられると普通の人とそんなに変わらないと思っているのだ。

 本来ならルナのステータスから考えて魔法を使わないでも戦えるはずなのだが、何故か座り込んで動けないでいる。



「状況が掴めた所で、悪いが死んでもらおう」



 そう言って男が短剣を振り上げた時……



「嫌ーーーーー!また、また私の大切な人がいなくなってしまう。そんなのは嫌ーーーーー!!!!!」



 ルナは涙をポロポロ流しながら絶叫する。表情は何かに怯えており、明らかに錯乱していた。



「ちょ、ちょっとルナ!落ち着いて!」



 あまりの異常な怯え方に、カレンは自分の身を心配するよりルナの事が気になってしまった。



「ハヤテさんが!ハヤテさんが!ハヤテさんが!」


「うるさい奴だ。こいつはもう駄目だよ。剣には毒も塗ってあるからな、もう助からない!」



 そう言って男の1人が、いまだ立ったまま傷口を抑えている僕を蹴りとばす。



「嫌ぁぁぁぁぁ!?」



 その様子を目の前で見た時、ルナは膝を抱えて丸まって震えだしてしまった。その目からは絶えず涙を流し続け、「ごめんなさい、私のせいで……」と呟き続けて……。



「たく……大声を出しやがって。おい!さっさと片付けてこの場から離れるぞ」



 男達は人が集まる事を嫌がっているようで、短剣を持ってルナに向かって来る。座り込んで動こうとしないルナを、カレンは逃げるように声を掛けるが耳に入っていないようで反応がない。だからと言ってルナを置いて逃げる事が出来ないカレンは、覆い被さるように抱きついてルナを守ろうとする。



「怨むなら、突然実力をつけた自分達を怨むんだな」



 そう言って男はルナを守ろうと覆い被さっているカレンと一緒に、持っている短剣で突き刺そうと振り下ろす。



「っ!?」



 カレンは死の恐怖から目を力強く閉じ、最後の瞬間を震えながら待つ事しか出来なかった。











 だがその瞬間はいつまで経ってもおとずれない。



「くそ!?なんでまだ動けるんだ!」



 男の動揺した声が耳に入り、カレンはようやく誰かが助けてくれたと理解して目を開ける事が出来た。



「……僕がルナを傷つけようとする行動を、黙って見ていられる訳がないだろ」



 カレンの目の前の光景に声も出せずに魅入ってしまう。体に剣が刺さった状態なのに颯が自分達の目の前に立ち、男の短剣を素手で受け止めていたのだ。ただその短剣を握りしめている手は黒く染まっており、闇夜と同化しているようだった。



「さっさと離せって言ってるんだ!」


「危ない!?」



 ルナ達にトドメを刺そうとしていた男は動けないと判断し、残りの2人が僕の無防備な横腹に短剣を突き刺す。男達はこれで終わりだとニヤリと口端を吊り上げるが、この体にいくら攻撃をしても魔力が漏れるだけでダメージはない。



「ようやく捕まえた」


「何なんだよコイツは!?なんで平気なんだよ!」



 男達は僕の異常性に恐怖し、すぐに距離をおこうと後ろに飛び跳ねようとする。



「がっ!?……なんだ?首が……絞められる!?」



 しかし男達が颯から逃げる事は出来なかった。後から攻撃をしてきた男達は、ゴーストハンドによって首に指の形だけを見せて苦しんでいたのだ。何もない筈なのに何かに首を絞められる恐怖、振り払おうとしてもすでに指も入らないほどガッチリ絞めている為、どうしようもない絶望感。焦りによる混乱でパニックになり、ただその場で立ったままもがいている。



「お、おい!どうしたんだお前達!さっさと離れるか攻撃をしろ!」」


「がっ……ぐぐぐ」



 颯に剣を押さえられている男には何が起こっているか理解出来ない。周りから見れば立ったまま手足をバタつかせて苦しんでいるようにしか見えないのだ。



「いったい何が起こっているの……?」



 それはカレンも同じで、剣に刺されている僕の心配もあったが、それ以上にこの異常な光景に戸惑う事しか出来なかった。



「この……化物が」



 男はこの状況を作っているのが颯だと理解し、掴まれている短剣を手放して逃亡をはかる。しかし男が逃げる事は適わなかった。



「……スチームブレス」


「な!?」



 その魔法を唱える声が聞こえると同時に、僕は急いで拘束している男達を放しカレンを持ち上げる。



「キャッ!?な、何が起こってるの?????」



 突然見えない何者かの手に体を持ち上げられたカレンは、小さな悲鳴を上げながら周囲を見回して状況を理解しようとする。

 しかしそこで見えたのは持ち上げられた理由ではなく、襲って来た男達の足が何もない状態で焼焦げていくのだ。



 ルナが立ち上がり、杖を構えている事から何らかの魔法を放った事は分かる。だが何をしているかは分からなかった。



「ギャーーー、足が、足がーーーーー!!!」


「なんで魔法が使えるんだよ!?この魔導具があれば魔法を封じられんじゃないのかよ!」


「あ、熱い!?なんで?何もないのに何で足がぁーーーー!!!」



 逃げようとしていた男も含めて3人とも足が焦げ爛れ、その痛みで涙を流し、膝の関節も動かないようでその場に蹲っている。



「ル、ルナ……もう大丈夫なのか?」



 しかし僕の声に……いや、僕の姿そのものが見えていないようで、倒れて苦しんでいる男達を睨んでいる。その足取りは不安定で今にも倒れそうだったが、一歩づつ近づいて目の前で杖を向ける。



「……スチームレーザー」



 ルナの杖から不可視の何かが放たれ、男の片腕が焼き焦げて魔法封じの魔導具も砕け散ってしまった。


 この魔法はルナに氷の魔法を教えた時に同時に覚えた物で、水を限りなく高温にして水蒸気にして放っているのだ。数百度になった水蒸気は目視出来ず、だが確かに質量があるので男達は火傷を負う。 



「貴方達のような存在がいるから、お父さんは死んで、今度はハヤテさんまで………」


「腕がーー、足が動かねーーー」



 そう言って男達は3人共もがき苦しみ、話す言葉は苦痛に対する嘆きだけだった。



「ルナ、正気に戻れ!……くそ、時間がない!カレン、今すぐルナを連れて迷宮に飛ぶ」


「急にどうしたのよ!それに跳ぶって?」


「とにかく言った通りだ!説明している時間はないんだ!」



 カレンへの説明が必要なのは分かっていた。だが未熟な僕のスキルでは、これ以上自分の体の暴発を抑える事が出来そうにない。なので僕は慌ててルナ達の下に走っていき、転移の魔導具を使う。








「あら、お帰りなさ……いったいどうしたのその体は!?」



 僕達が転移して帰って来た事に気が付いたゼロだったが、剣が5本も突き刺さった状態の僕の姿を見て、顔が一気に真剣なものになる。



「説明は後でする!それとルナの様子がおかしいから頼む!」



 ルナは男達が目の前から消えた事で体から力が抜け、座り込んで茫然としている。だが、僕はすぐにでも誰もいない所に行かないといけないので、残りはゼロ達に任せる事にする。



「分かったわ。こっちは任せてあんたはさっさと下に行きなさい!」



 細かい事は言わなかったが、ゼロは現状で最優先しないといけない事を理解してくれた。



「後は任せた!」



 僕はそんなゼロに任せて、急いで18階層に向かって走って行く。


 ゼロはいまだ茫然として「お父さん、ごめんなさい…」と呟いているルナを見て、とりあえず外傷がない事を確認する。



「全員聞きなさい!今すぐカナの後ろに集まって衝撃に備えなさい!」



 突然男が剣を刺された状態で現れたと思ったら、まるで何事もないように慌てて下の階層に走って行ったのだ。

 それだけでも十分混乱する状況で、更にゼロの言葉の意味がまったく分からない。だがゼロのその余裕のない表情と言葉に、アラド達は素直に従う事しか出来なかった。



「……私は壁を張るの」



 そしてもう1人状況を理解しているカナが一歩前に出て、変身の魔導具を使い、爆発に備えてシャドーウォールを下の階層の方向に複数枚張る。



「な!?」



 カナを中心に魔法陣が浮かび上がり、突然服装が変わった事をゼロ以外の全員が驚いていたが、



「来るわよ!」



 ゼロのその声と同時に、轟音と激しい衝撃が襲ってきた。カナが出した黒い壁がビリビリと激しく揺れ、その衝撃のほとんどを負担してくれていたが、それでも体が浮くような衝撃をアラド達は感じた。そして壁の外は砂などを巻き込んだ爆風により何も見えない。そんな状況を横目に、この爆発の規模の大きさを実感する。


 そして一定の間隔で何かが割れる音が聞こえて来る。



「……やっぱりハヤテの爆発は凄いの。……このままじゃ耐えきれないの!」



 カナのいつもの無表情の顔だったが、頬に汗を流しながら苦悶の表情をしていた。その表情だけでもこの爆発の凄さが分かる。



「もう少し踏ん張ってちょうだい。ルナがこんな状態だから、今はカナだけが頼りなのよ」


「……分かっているの……でも」



 カナも次々と新しい壁を内側に出していっているが、割れる速度の方が早かった。そして徐々に迫って来る壁に、全員が緊張と恐怖心で目を閉じて身を固める……







「……耐え……きったの…」


「よくやったわ」



 カナとゼロの声を聞いて、目を開けて周りを見てみると……いつも以上に静寂な迷宮に戻っていた。


 しかし、カナが変身を解いて前方に張っていた壁も消すと、その先はいまだ土ホコリが撒き上がっており1メートル先も何も見えない状況だった。




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