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56話 新築の為の素材集め

本日、二回目の投稿です。



 翌朝、僕達が冒険者ギルドに着くと、カレン達は雑談をしながら既に待っていた。



「今日は妹の為に迷宮に潜ってくれると聞いた。まだ早いがありがとう」



 ギルドに入ると、ルナ達の姿を見付けたアラドが声をかけて来た。



「あれ?アラド達も来て良かったの?」


「護衛対象であるカレンも潜るんだ。当然チーム全員でいくさ」


「そう言えばそうよね。…でもこれだと結構な大所帯になるわね」



 僕は人化を行っていないのでルナに抱かれている状態だが、ルナ達3人にアラド達の6人で、9人で迷宮に向かう事になる。おそらく半数しか戦う事が出来ないが、それはローテーションでなんとかすれば済むのでそこまで問題にはならない。


 ただ今までの3倍の人数になったので、戸惑っていただけだった。




 そして僕達はぞろぞろと迷宮に向かって行った。その様子を興味がないように誤魔化した視線で観察されている事に気がつかずに…







 迷宮に入ったが上層での戦闘はリリカとカレンに任せ、経験を上げさせる事にした。本当は僕も戦えば良い経験を得られると思うのだが、こんな大人数の前で人化をする訳にはいかないし、アリサと顔を合わせるとまた質問攻めに遭いそうなので諦めた。



(あんまり公にしたくないからな…)



 だが所詮は上層の魔物が相手なので、2人でも十分お釣りがくるぐらいだった。







 そしてなんの苦労もなく、10階層に到着した。


 今回の目的は10階層でのストーンゴーレムと、17階層のレッドバタフライ、18階層のフレイムゴーレムの素材だ。なのでここでチームを二つに分ける。



「ここから先は私達のチームで進むわ。アラド達はここでストーンゴーレムの砂を出来るだけ多く手に入れてちょうだい」


「それはいいが、今の時間から下層に向かうと合流は出来そうにないな」



 リリカとカレンの訓練も兼ねての進行だったので、10階層に着いた時には昼を過ぎて結構時間が経っていた。



「それは大丈夫よ。ハヤテをそっちに預けていくから、適当な時間になったら合流してね。それじゃ、よろしく」



 そう言って僕をカレンに預けてさっさと先に進んで行ってしまう。



「いや、そんな説明じゃ全然分からないよ」



 アラドが慌てて呼び止めたが、ゼロ達の耳には届かなかった。



「…まあ、ゼロ達の事だからどうにかなるんでしょ?さあ、気にしてもどうしようもないから、私達は私達の仕事をこなしましょう」


「確かにそうだな。皆、油断せずに行くぞ」



 カレンの言葉にアラドも納得し、気を引き締め直してストーンゴーレムとの戦いを始める。


 弱者の盾は元々ストーンゴーレムと戦えるだけの実力は持っていた。そこにカレンが加わったので、遠距離からの攻撃力が上がり、よりスムーズに倒す事が出来るようになっている。


 アラド達の戦い方は、カレンのファイヤーボールで体勢を崩した所に、一斉攻撃を行うという力技だ。だがこの戦法は動きの鈍い魔物には有効な手段だった。



(それにしてもカレンのファイヤーボールもだいぶ威力が上がったな)



 カレンは魔法使いなので、僕を片手で持って戦っている。なので魔法の腕が上がっている事をしっかり確認出来た。




 そうやって数体と戦っていると、休憩なのかリリカがこっちにやって来る。



「私達も結構力をつけたと思ったけど、ルナ達は相変わらず飛び抜けて成長していたわね」



 リリカもこの階層を抜ける時のルナ達の戦いを見ていた。ストーンゴーレムを顔や胸を一撃で貫通させてしまうルナの魔法、ハンマーの一振りで粉々にしてしまうカナ、相性の悪いハズの短剣で首を切り裂いてしまったゼロ。3人が3人とも中層の魔物を敵として見ていなかった。



「そりゃ一気に有名になったわよね。チーム幼女達の集い…」


「カレンの耳にまで入っているの?……まぁ、あれだけ派手な事をすれば仕方がないわよね」


「町の復興を30日分ぐらい、一気に短縮させたんでしょ。冒険者じゃなくても知らない人はいない程の活躍だもの、私の耳にだって入るわよ」


「でもルナ達は名前が広がるのを避けているみたいよ。絶対に無理だけど」


「あの一度火が付いたら止まらない3人組が、自分達の力を抑えて行動し続けるなんて不可能だもの。焼け石に水とはまさにこの事ね」



 そう言ってゼロ達の行動を話しながらも、ストーンゴーレムとの戦いは続いていく。

 






 その後もアラド達はストーンゴーレムを倒していき、得られた素材の量もだいぶ溜まっていた。



「さて、頼まれていた素材も大量に集まったが………これをどうやって持ち帰るんだ?」



 そろそろ引き返さないと日が落ちてしまう時刻まで来た時、山のように積まれたストーンゴーレムの砂を目の前にして、アラド達は困っていた。



「それについてはルナから聞いているわ。………これに入れてほしいって」



 カレンが軽く僕に魔力を流す。その行動は少しくすぐったかったが、僕はカレンの魔力に合わせて、砂用の素材箱を収納の腕輪から取り出した。

 何もない所から急に大きな箱が現れたので、アラド達は驚いてはいたが……。



「なんでもこれが装備している魔導具の効果で、道具を出し入れ出来るらしいのよ。便利よね。これで魔石とかも運んでいるらしいわ」


「…そうなのか…流石と言うべきか、これは驚いたな」



 実際は僕の意思で出し入れしているが、ルナがカレンが魔力を流せば箱が出ると説明していた。



(初めて箱を取り出したのに、全然カレンは驚かないか。見た目通りの年齢の割に、しっかりしているな…。やっぱり権力者の子供は、教育に力を入れているのかな?)



 そう思っている間に、手に入れた素材を箱に移し終わったので収納の腕輪に戻す。





 そうなると今度の問題はどうやってルナ達と合流するか…となってくる。



「…さてと、これ以上ここに留まっていると、日が暮れて凶暴化が始まってしまう。いったい彼女達はどうやって合流するつもりなんだ?カレン、何か聞いているかい?」


(あ!?これは説明し忘れてた)



 当然何も聞いていないカレンは知らないと言う。そうしてどうするかと一カ所に集まって悩み始めた。



(…しょうがない)



 僕はゴーストハンドを使い、カレンの背中まで伸ばして軽くトントンと叩く。



「え!?何?」



 その行動に驚いて後ろを向いたカレン。この行動のおかげで僕の姿はアラド達には見えなくなる。



(今の内に転移しちゃうおう)



 僕は転移の魔導具を取り出して、問答無用に転移を始める。



「え、なに?」



 そのカレンの驚くような声はアラド達も聞こえたが、その瞬間全員の視界が歪み、今までとは全然違う真っ赤な世界が目に入り高い気温が襲ってくる。



「あ!?皆さんこちらに来られたんですね。ゼロさん、カナちゃん、そろそろ日が暮れる時間だそうなので、次の階段で今日の探索は終了にしましょう」



 ルナは僕達が転移してきた事で時間を知り、2人に教えていた。もちろんその間もルナの魔法は魔物に向かって正確に放たれ続けている。



「もうそんな時間なの?アラド達も合流した事だし、無理はせず次で夜が明けるのを待ちましょう」


「……すぐに終わらせるから待ってるの」



 そう言ってカナのハンマーがフレイムドックの頭を殴りつけて倒す。



「ちょっと待ってくれ、ルナ!ここはどこなんだ?それにどうやって私達はここに来たんだ?」



 全員が混乱する中、当然の疑問をアリサが代表して聞いて来た。もちろんアラド達全員が驚いている原因であり、その回答に注目する。



「あれ?合流する方法を話していませんでしたか?…すみません、説明し忘れていたようです。実は皆さんが一カ所に集まって合流する事を考えたら、転移の魔導具が発動してこっちに来るように設定していたんです。ここはまだ17階層ですので、あそこに見える階段で一度落ち着きましょう」



 もちろん今の話は事前に決めていた作り話だ。 


 しかし説明の真意を確認するすべもなく、実際に違う階層に移動した以上アリサ達は信じる事しか出来なかった。そしてルナが魔物の方から視線を外さないでいつも通りの話し方だったので、アリサ達も少し落ち着く事が出来た。が、



「ルナ!?後ろから真っ赤な犬が来たわよ!?」



 カレンが後ろを振り向くと、1体のフレイムドックが後ろから襲って来た。初見の魔物で強い威圧感に驚いて腰が引けながら慌ててしまう。アラド達のチームの盾要員であるガルは、自分の役割をこなす為に一歩前に出て攻撃に備えるが、力強い突進を目の前にするとその顔は不安の色を隠しきれないでいた。



「任せてください!アイスランス」



 その言葉でルナが振り向き、魔物を確認したらすぐに高速で氷の槍を放ち、串刺しにして倒してしまう。



「そのまま後ろの警戒をお願いします」



 そう言ってルナはまた前方の魔物に視線を戻す。



「え?今の魔法って氷だったわよね?」


「…確かに氷だろ…だって…」



 ルナの放った魔法に驚いているカレンの質問に、アリサがいまだ残っている氷を指差して答える。


 さっきの1体以降は後ろから魔物が襲って来る事はなかったが、アリサ達の緊張感は解ける事がなかった。そうして目の前の魔物の群れを倒し終わったルナ達が、魔石や残っている素材を回収しだす。



「ちょっとハヤテ、さっさと箱を出してよ。袋に入れて運ぶのは疲れるのよ」


(はいはい。了解っと)



 僕は既にルナに抱かれているので、魔石用の箱と素材用の箱を取り出した。








「さてと、ようやく一息つけれるわね」



 戦利品の回収を終えた一行は、18階層への階段で腰を下ろして休憩を始める。



「それでストーンゴーレムの砂は手に入った?」


「あ、ああ、用意されていた箱いっぱいには手に入れる事が出来たよ」



 安全地帯で休憩を始めたが動揺を隠せないアラドは、聞かれた質問に答える事しか出来なかった。



「それは良かったわ。たぶんまだ足りないだろうけど、何回か回数を分けないと素材が出にくくなるだろうからね」


「皆さん、今夜の食事の用意が出来ましたよ。順番に受け取ってください」



 そう言って僕が取り出した食料箱から、ルナは作っておいた晩御飯を全員に順番に配る。そして食事をした事でアラド達も落ち着きを取り戻し、ようやく現状の説明と今後の予定の話をし出した。





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