表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

53/70

51話 やり過ぎた結果……

 本日3話目。次の話が書き終わるかは微妙です。明日からまた仕事だから早く寝ないといけませんので……



 翌朝から復興作業の手伝いをするにあたり、僕達は二手に分かれる事にする。


 まずはギルドにはルナとゼロが行き、木材運搬の依頼を受ける。そしてカナは復興拠点で正式に登録を済ませ木材の納品場所に待機してもらい、届いた木材の加工をその場でやってもらう。

 これだけだったらそこまで作業は進まない。ゼロが本気を出すと言ったからには、今まで以上の成果を出す方法を考えていたのだ。




「またお前達が来てくれたのか。なら今日は忙しくなるな」



 北の森に着いた僕達を見付けた伐採場所の指揮者は、復興が進む事を喜んで歓迎してくれる。



「まあね。でも、下手すると今日でこの作業は終わっちゃうかもしれないけどね」


「ハハ、いくらお前達が一度に大量の木を運べるとはいえ、流石に今日で終わらんだろ……」



 前回この依頼を受けた時は一日で20本もの木を運搬して驚かしたが、それをやっても一日で終わらないのを知っているようだ。現に軽く笑って聞き流している。



「あんたは腰を抜かさないように気を付けておきなさい」



 今回はカナがいないので、ルナが根元で木を切ったら倒れる前に収納の腕輪に入れる。その様子は突然木が消えたようにしか見えないが、これは前回に少し見せているので指揮者は驚かない。


 そうして収納の腕輪に木を10本入れた所で一度作業が止まるが、今回はこれで終わらないのだ。



「これで10本ですので、一度町に戻りますね」


「ええ、次の木の枝を掃っておくわ」


「それでは行ってきます」


「なにーーーーーー!!!」



 その声と共に僕を抱いたルナはこの場から一瞬で消えてしまったのだ。その様子を目の前で見ていた指揮者は、目を見開いて大声で叫んでしまった。



「ちょっと、いきなり大声を出さないでよ!ビックリしたじゃない!」



 突然近くで叫ばれたので、ゼロはその声にビクッと体を震わせ驚いた。



「ビックリしたのはこっちだ!なんであの子は消えたんだ」


「この前迷宮で見付けた魔導具の効果よ。今頃町で木材を渡しているわよ」


「……そんな物が…」









「…カナちゃん。木材を持ってきましたよ」


「な!?突然人が!?」



 カナと話をしていた納品所のおっちゃんは、突然現れたルナに驚いて固まってしまった。



「……待ってたの。査定が終われば、すぐに加工するの」


「それではここに置きますね」



 ルナは驚いているおっちゃんを無視して木材置き場に歩いていき、僕が収納の腕輪から木材を取り出して置く。



「それではまた森に戻ります」


「……私もがんばるの」



 そう言ってルナはまた姿を消した。






「…ゼロさん。ただいま戻りました。次の木はどれですか?」


「あ、もう帰ってきたのね。それじゃあ、これとそれをお願い。ほら、早く次の木を教えなさいよ!」



 消えたルナが帰ってきた事で、また茫然としていた指揮者をゼロが声を掛けて急かした。その声で我に帰ったが、まだ少し呆けているのは仕方がないことだった。


 この作業は他の新人冒険者が森に来てからは、出来るだけ目立たないように木の影に隠れてから転移する事にしている。送還の魔導石はゼロとカナが持っているので、森での指揮者と納品所のおっちゃんにはどうせバレると言う事で、最初に見せたのだ。







 この作業を20往復ぐらいして納品所にルナが着いた時、納品所のおっちゃんがリーザを連れてストップが掛けられる。



「貴女達は…………どうして手加減って言葉を知らないんですか!周りをよく見てください!もう木材でいっぱいじゃないですか!」



 ルナが現れるのを待っていたリーザは、やり過ぎだと怒ってきた。どうやら納品所のおっちゃんがリーザに助けを求めたのだ。



「でも復興には木材が必要ではありませんか?」


「確かに木材は必要ですけど、1日で何本納品するつもりですか。もう崩れたら命が危ないレベルになっているではないですか。……まったく、後から来る新人冒険者が木材をどこに置けばいいか考えないといけませんよ……」



 2日前に一緒に迷宮に潜って、ルナ達の非常識さを確認したばかりだったが、もう問題を起こしたかと額に手を当てて疲れた顔をしている。ただ、周りから見れば非常識で手加減を知らずの行動だが、やっている事は復興作業で、しかも作業の流れが格段に速くなるので怒りきれない葛藤もあるのだ。



「で、でもカナちゃんが木材を加工していますから、どんどん減っていきますよ?」



 ルナの言うとおり、復興拠点から人を1人呼んで、その指示で今も木材を次々加工している。普通なら1人の為に復興拠点から人を割く事など無いのだが、オルクの説明とカナの加工のスピードを知った為に、的確に指示した方が作業がより進むと人を回してくれたのだ。

 もちろん来てくれた人もルナの転移やカナの魔法に驚いていたが、それも何度も見せられたので今は平然と指示をしている。



「それも分かっています。それでも今日はこれ以上の運搬は止めてください。今も北の森でゼロさんが作業を継続しているでしょうから、急いで戻って止めて来てください!」


「は、はい」



 リーザにそう言われて僕達は北の森に跳び、ゼロに事情を話して一緒に戻ってきた。





「うわー…。こうやって見ると、ずいぶん運んじゃったわね。向こうにいると全然分からなかったわ」



 納品所に戻ってきたゼロは、山のように積まれた木材を見てリーザが怒鳴ってきた理由を理解した。



「うわー、じゃありませんよ……。またこの依頼を受けてくれたと思ったら、まさか転移の魔導具まで使って作業するとは………完全に失念していました」


「だってこの町の復興が終わるまで、私達の拠点作りは出来ないって言われたのよ。だからさっさと復興を終わらせようと頑張っただけよ?」


「それはそうでしょうけど……」



 リーザは自分の考えの甘さに反省していた。確かにルナ達の家を建てるのは、復興が完了するまでお預けになるとは予想できた。ただその待ち時間は迷宮に潜って資金稼ぎをすると思っていたが、これには魔石を集めて来てほしいという願望が入っていたので、考えが偏っていたのだ。

 少し考えれば復興の方に力を入れる可能性も十分あり、その時は全力を出してやり過ぎになるのは当然の流れとも言えた。



「……皆。木材はこれだけあれば十分らしいの」



 リーザがどうやって説得するかを悩んでいると、カナがMPの回復をする為に休憩を取りにこっちに来て、木材はもう十分なので取りに行かないでいいと報告する。



「それなら私も加工に回りますね」


「……私は休憩なの」


「私は……加工済みの木材を復興拠点に運ぼうかしら。ルナ、魔導具を交換とそいつを貸して」


「ゼロさん……転移するなら、せめて人目につかない場所でお願いしますね」



 リーザはせめて騒ぎがこれ以上大きくならないようにしてくれと、疲れたような顔で頼んでくる。それに対して、ゼロが元気よく「任せておいて」と言うのを聞いて、リーザの不安は更に高まった。

 そしてもう一騒ぎぐらいはあるだろうと、遠い目をして諦めて見守る事にしたのだ。





「それではルナさんはあれと同じサイズに木を加工してください。そしてゼロさんはこの木材を北の復興拠点に運んでください。それと木材は10枚づつロープで縛っていますので、一度に100枚運べますね」



 復興拠点から着てくれた男、名前を<ゼクイクス>と言うらしいが、この人は最初はルナの転移やカナの魔法に驚いていたが、すぐに冷静になり指示をしていた。そしてカナから収納の腕輪の効果を聞いていたので、木材を縛って1つにする作業も進めていたのだ。



「あんたは結構冷静ね。普通は他の奴らみたいに驚いて、冷静な判断なんて出来なくなるのに」



 ゼロもゼクイクスの落ち着いた態度に感心していた。



「今は町の役所で働いていますが、私は元々は冒険者だったのです。ですので不思議な魔導具を貴女方が使っていても、そういう物もあるんだ、という程度で済ませれるのです」


「へー、私達を見てそう思えるなんて、あんた中々の実力者ね。今、強い冒険者が不足しているらしいから、現役復帰すればルドルやリーザに歓迎されるわよ」



 今まで出会った人はゼロ達の見た目で判断し子供扱いか、良くて新人冒険者扱いだったのに対して、ゼクイクスと言う男はカナの魔法を見ただけで実力を判断し、対等の冒険者として見てくれていたのだ。その態度にゼロは気分を良くしていた。



「私は現場を離れて結構経ちます。なので今更現役復帰をしましても、周りの足を引っ張る事になってしまいます」


「私にはそうは見えないけどね。ま、実力を隠したいならこれ以上言わないわ」



 そう言って木材を収納の腕輪に入れて、指定された復興拠点に走って行く。







「…あの人、現役復帰は無理って言ってたけど、絶対嘘だよね」



 納品所から離れて、周りに声が聞こえない場所に来たので、僕はゼロに話しかけた。



「ええ、間違いなく現役ね。私の武器の間合いギリギリで立ち止まって話掛けて来たもの。それに服で隠しているつもりだろうけど、無駄な脂肪とかなさそうだったしね。…ていうか、あんたの事だからあいつのステータスを覗いたんでしょ?」


「あ、やっぱり分かった?僕の鑑定眼で分かるのはHPとMPとスキルだけだけど、HPは300以上あったし、スキルに長剣技ってのと王国剣闘術があった。王国剣闘術は後から手に入れたスキルだったから、この町の住人じゃなくて国の剣士が何らかの理由で来ているってのが、妥当な線かな」



 ゼクイクスのスキルを見て分かったのは、スキルには生まれた時から持っている物と、厳しい訓練の結果手に入るスキルがあるようだ。そして王国剣闘術はまさに後者で、効果は国の為に同じ仲間と共に戦う時、ステータスが10パーセントアップという物だった。



「国の人間ならいろいろ地理に詳しそうだか、あとで次の迷宮の場所の相談でもしようかしら」


「ギルドマスターの情報力も侮れないだろうからルドルにも聞くとして、情報源は沢山あった方が、選択肢が広がりそうでいいかもね」


「なら今日の作業が終わったら、さっそく聞いてみましょう。あいつが何時までこの町にいるか分からないからね」



 そうこう話をしているうちに指示された復興拠点に到着し、100枚の木材を置いた後、さっさと建物の裏に移動して転移を行いルナの所に帰る。もちろん突然現れた木材に驚いていたが、一々構っていられないので無視した。





 そんなこんなで復興資材の用意は手早く行なわれ、他の新人冒険者戻って来るまでには何とか置き場を確保出来たのであった。


 そしてカナのMPが回復してからは作業のペースが更に上がり、ただの木だった山がみるみる復興資材の山へと変わっていったのだ。そうなると流石の僕達でも運搬が追い付かず、木を運んできた新人冒険者が追加依頼料を貰えるとの条件で、運搬作業に駆り出される事になった。










「皆さんお疲れさまでした。あとは職人がこの資材を使って家の修復を行うだけになりました。長い間冒険者の方々にはお世話になり感謝します。今日をもちまして木材運搬の依頼は終了となります。皆さん、本当にお疲れさまでした」



 今日はこの依頼を受けていた新人冒険者のほとんどがこの場に残り、引き続き運搬作業を行っていた。なのでゼクイクスがこの場の代表として、冒険者への依頼の終了を告げたのだ。


 いつもの作業に続いての運搬作業なので疲れから帰る人もいると思われたのだが、追加の運搬作業の依頼料が高かった為に、予想に反してほぼ全員が継続作業をしていた。


 そして他の冒険者が帰っていくと、ゼクイクスが僕達の方に歩いて来て話掛けてきた。



「今日は本当に助かりました。まさか貴女方が参加してくれただけで、ここまで作業が進むとは想像もつきませんでした」


「別にあんたがお礼を言う必要はないわ。私達は自分達の目的の為に依頼を受けて仕事をこなしたにすぎないんだからね」


「それはそうでしょうが、ギルドに出した依頼は北の森から木材の運搬。この場での加工作業は依頼にはありませんから、完全にタダ働きなんですよ」


「それはそうだけど、私達の新しい拠点を作ってもらう為には、町の復興をさっさと終わらせる必要があったのよ。…あ!?それよりあんたに聞きたい事があったんだわ」



 作業に集中し過ぎてゼクイクスに聞く事があるのをすっかり忘れていたゼロは、その事を思い出し聞き始める。質問内容をルナ達には話していないので、2人はキョトンとしていた。



「私に…ですか?」


「そうよ。あんた王国の剣士なら、この町の近くでお勧めの迷宮って知らない?私達、次の目的地を決めていないから、参考程度に教えてほしいのよ」


「な!?」



 今まで冷静沈着な態度だったゼクイクスが、初めて大きく動揺を見せる。



「ゼクイクスさんって、王国の剣士さんだったのですね。どおりで強そうな方だと思いました」


「……実力を隠すのが下手なの」



 どうやら2人にも実力者だとバレていたようで、ゼクイクスは「まいったな…」と頭を掻いていた。



「実力はともかく、どうして王国の剣士だと分かったのかが気になりますね。それにあまり詮索はしないと言っていませんでしたか?」


「別にあんたの素性なんか興味もないし、詮索もしてないわ。私が聞きたいのは、次の目標となる迷宮の情報だけよ」


「…なるほど、確かにルドルさんが言っていた通り、少し常識から外れた方々だ」



 興味もなく詮索もしていないのに素性を見破る。つまり一瞬で見抜く何を持っていると言う事を理解し、ゼクイクスはそんなルナ達を見て、少し笑いながらそう呟いていた。



「なによ!ルドルってば、私達を非常識の集団だって言い回ってるの!」



 ゼロはその話を聞いて、失礼だと怒っている。



「あながち間違いではないと思いますよ。現に貴女達は一日で200本以上の木を運搬して、更に加工まで行なっているのですから……。普通の冒険者の枠から考えると、完全に非常識な集団です」



 そこにやって来たのは、様子を見に来たリーザだった。



「私達のどこが非常識なのよ!」


「行動の全てです。そして貴女達には悲しいお知らせをお持ちしました」



 ゼロの問いを全否定して、他に誰もいなくなったこの場所でリーザは静かに告げる。



「今回の貴女達の活躍で、復興作業は急速に進みました。それこそ30日以上掛かると思われた作業を1日で終わらせるほどにです。それで数多くの注目を浴びた結果………」


「ま、まさか……」



 リーザの話を聞いて、ゼロだけでなく、ルナとカナも何かを思い出したかのように、頬に冷たい汗が流れ緊張が走る。リーザはわざとらしい笑顔を見せて…



「おめでとうございます。貴女達、チーム幼女達の集いの名前は一気に有名になりました。復興作業をしている職人はもちろん、拠点で働いていた人、運搬をしていた新人冒険者、そして修復を待っていた町の住民からの口コミで、町中にその名を知らない人はいないほど有名チームになったのです」


「「「 またやっちゃったーーーー! 」」」



 リーザの話を聞いて、3人は顔を見合わせ絶叫した。そしてこんな話をしていたリーザも、実は一生懸命名前が広がらないように努力していたのだ。しかし本人達が全てを無駄にするような活躍をするもんだから、半分自棄になって笑顔でいたのだった。



「だから言ってんです!もう少し自重してくださいと!私がいくら誤魔化しても、聞いた事がある冒険者からドンドン話が広がって行って、一般の人に話が伝わると口から口へと爆発的に広がってしまったんです」


「………これはもう、一刻の猶予もないわね。ゼクイクス!さっさと迷宮の情報を教えなさい!」



 完全にやつあたりと言ってもいい態度で、ゼロは問い詰め始める。



「チーム名は幼女達の集いですか…見た目通りの名前ですね。私も仕事が終われば国に、将来有望なチームがあると報告しましょう」


「しまった!ここにも情報を広げる火種があったわ!…情報源を失うのは惜しいけど………」



 ゼクイクスの立場を考えればそれも可能とゼロは理解し、元女神のくせにまるで暗殺者のような顔をして彼を見る。



「ここで私を消しても無駄ですよ。今のリーザさんの話では既に町中に広がっているようですし、町から町への行商の耳にも入っているはずです。貴女達の名前が広がるのは時間の問題だと思います」



 そのゼロの表情から先読みして無駄だと断言する。



「ゼクイクスさんの言うとおりです。ここまで皆の興味を集めてしまった以上、おそらく他のチームと比べてどうかと言う話になると思います。そして今のこの町で実力的にはナンバー1とすぐにバレて、更に周知の事となるでしょう。既に手遅れなんです」



 そしてリーザにも駄目押しされてしまった。



「なんて事なの………」


「うう…ハヤテさん…お二人が私達をいじめてきます…」


「……ハヤテ、助けてなの」


(無茶を言わないでくれ!ここまで話が広がってしまっては、どうしようもないよ!)



 ゼロが悔しがり、2人が僕に泣きついて来たが、この状況を改善する方法を僕は思い付かない。



「フフ、こうなったら町中で大爆発でも起こして、全てを有耶無耶にするしかないわね」


(まずい!ゼロが壊れ始めた!)



 泣きつく2人に、下を向いて怖い事を笑いながら言いだすゼロ。そして動けない現状に……いや、例え動けたとしても、完全に自業自得で自分達の首を自分達で絞めた状況を助ける方法などなかったのだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ