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50話 建築家オルク

 本日2話目。そして今度こそ本当に4章のスタートです。


 翌朝から始めたのは、家を作るに当たっての意見要望を出し合いだ。



「入口は二つほしいですね。治療所と私達の家とで」


「……ベットは大きい方がいいの」


「移動中にも使うだろうから、野生の魔物に襲われても大丈夫なように外壁は頑丈にしたいわね」


「治療所は受付と待合室、処置室があれば良いです」


「……ベットの上で汗をかくからお風呂も欲しいの」


「食糧庫もほしいわね。あと、ポーションなどの保管庫もいるわね」



 3人の意見を聞いて忘れないように纏めていたが、1人だけ気になる発言を繰り返してる子がいた。



「いろいろ意見は出たけど………カナだけ何か目的が違わない?」



 僕の言葉を聞いて、カナはキョトンとした顔をしてこっちを見て来る。



「……私はハヤテとの子供が欲しいの。だから愛の巣に必要な物を要望するの」


「カナちゃん。1人だけ抜け駆けは許しませんよ」



 カナの話を聞いて、ルナが慌てて話に入って来た。



「……独り占めはしないの。夜の相手は3人で順番なの」


「ならいいです」



 順番と言う事を聞いてルナはホッとしていたが、そうはいかない人が1人いた。



「ちょっと!3人って、なんで私も数に入っているのよ!」



 当然のように数に入っていた事に、ゼロは顔を真っ赤にして怒鳴ってくる。



「?。……ゼロは伽をしても良いと言っていたの。それにハヤテの事を嫌ってはいないの」


「あれは記憶が無い時の話でしょ!!!……そりゃ、嫌いって訳ではないけど………」



 そう言って否定していたゼロだったが、最後の方は声が小さくなって手が落ち着きなく動いていた。



「私はゼロさんも家族と思っていますよ。3人で夫であるハヤテさんを支えていきましょう!」


「だから私まで妾の1人にしないでよー!」


(だいたい僕のこの体を見て、どうしてそんな事を考えれるんだよ………。それに家の話は何処に?)



 この後は家の話に戻る事はなく、ゼロが誤解を解こうと奮闘し続けるのであった。









 意見は纏まりきってはいないが、とりあえずギルドの紹介で家を建てるプロに話を聞きに行く事にした。



「すみません。ギルドの紹介でここに家を建てる職人がいるとお聞きしたのですが……」



 貰った地図の家に着いた僕達は、さっそく声を掛けてみた。



「あ、お客さんですか?すみません、今主人は仕事で留守にしているんですよ」



 中から元気な声と共に出て来たのは、中年のおばちゃんだった。



「そうなんですか。実は私達の新しい家を建ててもらおうと思い、ここに来たんです」


「そうなの?……失礼だけど、主人が家を建てるのは子供の遊びじゃないのよ?」



 やはり見た目が子供にしか見えない3人で来ても、真面目に話を聞いてくれない。



「言っとくけど、私達はこれでも冒険者で大人よ。この紹介状だってルドルに書いて貰ったんだからね」



 そう言って一枚の紹介状を見せた。家を建てる依頼をするにあたり、リーザがこうなると予想して予めルドルに紹介状を書かせて渡してくれたのだ。



「………これは…本物のようね。しかもギルドマスターに紹介状を書いて貰えるなんて、貴女達は将来を期待されているのね」


「ま、そう言う事よ。それで家を建てるのにシロートの私達の意見や要望は集まったけど、実現可能かをプロに聞きたくてここに来たのよ。で、主人は何処にいるの?」


「その事なんだけど、今は町の復興で忙しいのよ。だから貴女達の依頼をすぐに受ける事は出来ないわ」



 紹介状を見てお客だと認識してくれて、ギルドマスターの頼みでもあるので引き受けたいと思っているようだが、町の復興を遅らせれないと申し訳なさそうに話してくれる。



「それは仕方がありません。町の復興は大事ですものね」


「なら答えは簡単ね。復興の手伝いをすればいいのよ。そうすれば、私達の依頼を受ける時間が早くなるわ。そう言う事だから、本人に話を聞いて手伝えれる事をするわよ」


「貴女達に何が出来るかは分からないけど、主人は北地区の復興拠点に行けば会えると思うから、そちらに行って話を聞いてちょうだい」



 お客とは認められたが、僕達の実力は知らないのでおばちゃんは「この子達に何が出来るのか?」と半信半疑の表情で居場所を教えてくれた。




 今この町の復興の為に、3か所に復興拠点を設けられている。そしてそこに職人が集まり、復興場所の指示を受けて作業を開始しているのだ。この復興指示と資金は町からでており、冒険者ギルドも材料の確保などの依頼を町から受けている。

 前にルナ達が受けた木材運搬の依頼もその1つだ。





「すみません。建築家の<オルク>さんがこちらの指示で復興に回っていると聞きました。どこに派遣されているか教えてくれませんか?」



 聞いていた復興拠点はすぐに見つかる。町の人の意見がすぐに聞けるようにと、分かりやすい案内板が複数建っていたので迷う事もなかった。ちなみにオルクとは先程家に行った建築家の主人の名前だ。



「ああ、オルクさんは向こうに300メートルぐらい歩いた所にある、半壊した家の修復を行なっているよ」


「ありがとうございます。さっそく行ってみます」





 教えて貰った場所に行くと、そこには1人の男が木を加工していた。



「ちょっと聞きたいんだけど、あんたがオルク?」


「なんだ突然。確かに俺の名前がオルクだが、今は忙しいんだ。遊びならよそでやってくれ!」



 修復する家が多いのか、この家を担当するのはオルク1人のようだ。とりあえず手伝いとして、この家の家族が手伝いをしているが男手は子供しかおらず、シロートなのでほとんど役に立っていない。



「手を止める必要はないから、耳だけこっちに向けてちょうだい。実はあんたに私達の家を作ってもらいたいのよ。それで私達の意見が製作可能かを聞きたいの」



 仕事が忙しいのはゼロも理解しているので、手を止めさせないで話だけする。



「手を止めさせないのは褒めてやるが、例えお前達が金を持っていても今は復興の方が優先だから、仕事は受けん」



 ゼロの仕事を優先させてくれる姿勢は気に行ってくれたが、仕事を受ける気は全くなさそうだ。



「それも理解しているわ。だから私達が仕事を手伝うから、とりあえず相談に乗る時間を作ってほしいのよ」


「ほう…偉く自信があるようじゃないか。いったいお前達みたいな小娘に何が出来るっていうんだ?」


「そうね…あんたは今、家の壁用の木を切っているようだけど、同じサイズの木材ならすぐに切る事が出来るわ。カナ」


「……私に任せるの」



 今オルクが行っている作業を見て、これぐらいならとゼロはカナを指名した。その意図を理解したカナは自信満々に一歩前に出る。



「おいおい」



 オルクが呆れて見る中、カナはまだ加工していない木を軽く縦に持ち上げて、そのままシャドーエッジを使い、木を下から切り裂いた。



「……終わりなの。必要な長さはお前が決めるの」



 持っていた木をカナが横にして置くと、バラバラになって綺麗な木の板が出来あがっている。その様子を見て、オルクは言葉を失う。



「これで少しは相談に乗ってくれる時間が出来たかしら?」


「………今のは魔法だったのか?いや、それより助かる。このペースなら予定より早くこの家を直せるぞ」



 しかし出来あがった木材を見て、嬉々としてオルクは作業を再開してしまったのだ。



「あれ?私の話は?」


「そんなのは後でも出来るだろ。それより手伝ってくれるなら、ドンドン木を切ってくれ!」



 話をする為の時間を作る為の手伝いだったが、ゼロの予定とは違いオルクが更なるやる気になってしまった。そしてこの後も作業の手伝いをやらされる羽目になったのだ。



 そして僕達の目的である家の相談は、作業が終了した夕方まで待つ事になった。








「いやー。お前達が手伝いをしてくれたおかげで、今日は予定の5倍以上作業が進んだぞ!まさか用意していた木材が先に無くなるとはな」



 本来ならまだ復興作業をしている時間だったのだが予定以上に作業が進み、用意していた木材が無くなったので本日の作業は終了した。そしてそこまで作業が進んだ事で、手を掛けていた家には人が住める状態になり、家の持ち主はもちろんオルクも上機嫌になっていたのだ。


 今はそんなオルクの家に招待され、食事をご馳走になっている。



「それで、お前達は家について相談があるんだったな。どんなんだ?」


「実はね……」



 ルナは今まで出た意見を全部話す。そのほとんどが可能だと言われたが、いくつか普通の材料では無理だと言われる。普通ならルナ達の容姿から真面目に話を聞く事はないだろうが、作業を手伝った時に見せた実力の一端を間近で見た為、冒険者と聞いて素直に納得してくれたのだ。



「お前達が言ったような風呂を作るなら、熱を持つ鉱石が必要になるな。それと魔物の攻撃に耐えれる外壁となると……単純に強度だけを求めるなら鉄で良いが、外で使うと錆びるからな……」


「やっぱり外壁が問題よね……。錆びない金属で知ってるのはミスリルだけど、聞いた話じゃ採掘量が少ないらしいし、そんな貴重な金属を家に使ったら何を言われるか分からないものね」


「ミスリルって……お前達はとんでもない事を言いだすな。そんな金属で家を建てる奴は、どこにもいないぞ。………そうだな、お前達が冒険者なら迷宮に現れるストーンゴーレムの砂を見た事がないか?」



 外壁の素材で何か思い付く物があったようで、オルクが問いかけてきた。



「ストーンゴーレムの砂ですか?」


「そう言えば倒した後に消えないで、崩れるように砂になった奴が何体かいたわね。!?。もしかしてあれもレア素材だったの!」



 その話を聞いて心当たりがあったゼロは、何か勿体ない気がして後悔していた。



(石の魔物を倒して砂になっても、全然違和感がないから疑問にも思わなかったな……)


「レア素材って呼び方かは知らんが、その砂を利用したブロックは強度も耐久力も普通の砂を利用した物と比べて、格段に強い物が出来るんだ。それを集めてブロックを作れば、普通の魔物の攻撃ぐらいなら難なく耐えれるだろう」



 外壁が要望に近い物が出来る事が判明して、3人は手を取り合って喜んでいた。



「だが、俺は他の仕事があるからお前達の家を作る事は出来んがな」


「「「 え? 」」」



 しかしオルクの話を聞いて、3人は時間が止まったように動きを止めてしまう。



「何を驚いているんだ?俺は復興作業があるって言っただろ?」


「だってさっきの家はもうほとんど直したじゃない」


「あの家だけが被害を受けた訳じゃないんだ。俺が担当していた所が終わった以上、他の所の手伝いに行くに決まっているだろ。この町にはまだ、自分の家に住めずに困っている人が多いんだぞ」


「クーーー……確かにそうだけど。………仕方ないわね。2人共、明日もオルクの手伝いをするわよ」



 ゼロはオルクの正論に負けて、復興作業をさっさと終わらせる事にする。その案に不満はなく、ルナ達も頷いて了承していた。



「そうなると……まずは復興拠点に行って正式に登録しないといけませんね」



 モグリで作業の手伝いをしても構わないのだが、本気でやるからには登録しておいた方が後々面倒がなくて良いのだ。



「なんだ?明日も手伝ってくれるのか?」


「ええ、手伝うわ。手伝って早く復興を終わらせないと、私達の家には手が回らないんでしょ?」


「それはそうだが、まだ修復が終わっていない家は30軒以上あるんだぞ?」


「分かってるわよ。新しい木材の入手運搬から加工まで全部手伝うからね。覚悟しなさい!私達が本気で手を出す以上、あんた達は駆け回る事になるからね!」


「それは願ってもない事だが……いったいどうするつもりだ?」



 確かにルナ達が手伝った事で今日の作業は予定以上の進捗を見せた。しかしゼロがここまで言いきれる訳が分からず、オルクは首を傾げる事しか出来なかった。


 しかしそう言ったゼロの目はやる気に満ちていた。



「今は理解出来なくていいわ。明日になれば分かる事よ。明日になればね」



 そう言ってゼロはニヤリと笑う。






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