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46話 記憶喪失

本日、二話目の投稿です。

 僕はすぐにゼロの下に駆け寄り、その凄惨な傷口に僕は悲しみが溢れ出た。だが止まっている訳にはいかないので、すぐに死霊術を使用する。





「…………あれ?…私は?」



 かなりの刺し傷があったので、生き返えるのに支障があるかもと心配した。だがどうやら杞憂で済み、ゼロは何事もなかったように体を起こす。


 ルナとカナの時はポーションの効果が遅れて発動したと思っていたが、どうやら死霊術の効果で生き返る時に体の傷も治してくれたようだ。



「良かった……少し時間が経ってたから失敗するかもって心配してたよ」


「本当に良かったです…」


「……良かったの」



 ゼロの事が心配で、足を引きずっていたカナに肩を貸してあげてルナもやってきた。



「カナも無事で良かったよ。あとはリーザだけだ」



 そして倒れいるリーザの方を見ると、胸が上下に揺れているのが分かったのでとりあえず一安心する。



「これで全員の無事を確認出来たね」



 僕は全員の無事が確認できてホッとしている。すると突然ベルフレアの死体が突然輝きだし、光の玉になった。



「な、なんなんだ!」



 そしてその現象に驚いていると、突然動き出し、僕の体の中に吸い込まれるように入り込んでしまう。



「ハヤテさん大丈夫ですか!?」


「……大丈夫なの!?」



 ルナとカナは突然の出来事に驚き、僕の周りに集まり心配をしてくれた。



「……とりあえず何ともなさそうだけど……」



 僕は自分の体に異常がないかを確認したが、とくに変化はなさそうなのでそう伝える。



「良かったです」


「……良かったの。……なら!」



 とくに異常がないと聞き、2人は安堵した。しかしカナは無事を確認すると獲物を見るような目になり、僕を見たと思ったら突然僕に倒れ込むように抱きつき……………口づけをする。



「!?。んーーーーー?????」


「カ、カナちゃん!?」



 僕もルナもこの行動は予想していなかった為、驚きのあまり何も出来ないでいた。



「……ルナだけハヤテとキスをするのはズルいの」



 数秒間口づけをし続けたカナは、満足そうに僕の口から離れる。



「そんな理由で!?」


「……私もハヤテの妻。だから遠慮はいらないの」



 カナは自分の唇に指をあて、可愛く微笑む。その仕草はとても可愛く、不意にその笑顔を受けた僕は心臓が跳ねあがった。



「確かにカナちゃんにも権利はありますね。……なら私ももう一度」


「なんで!?」



 僕はルナの言葉に驚いていた。そんな和気あいあいのムードの中、突然ゼロが立ち上がり……



「ゼロさん!?」


「……どうしたの急に?」


「んーーーーー??????」



 ゼロまでが僕に口づけをしてきたのだ。口を塞がれた僕は、抵抗も出来ず目を見開いて驚く事しか出来ない。普段の彼女なら絶対しない行動だったからだ。

 


「ちょ、ちょっとどうしたんだよ!?悪ふざけでやる事じゃないぞ!」


「駄目でしたか?。皆さんがご主人様に口づけをしていましたので、私もした方が良いのかと……」


「「「 え!? 」」」



 この場の空気とはずれた落ち着いた態度と、普段のゼロからは信じられないほど丁寧な言葉使いで、ご主人様など言いだしたゼロの方を見て驚いた。



「ちょっとゼロ。いきなりどうしたの?」


「ゼロ?それは私の名前ですか?」


「え?」


「まさか……」


「……記憶喪失なの?」



 自分の名前に対して、キョトンとした表情で問いかけてきたのだ。その状況から考えて、ゼロは記憶を失われているか、もしくは重度の混濁状態だと判断出来る。心なしか吊り目で気が強そうだったゼロの目が、少し柔らかく感じるほど穏やかな表情だった。



「冗談だろ……まさか死霊術を使うのが遅過ぎて、ゼロの魂が肉体から離れてしまったのか」


「そんな……」


「何をそんなに悲しんでいるのですか?それよりご主人様、私に命令をください」



 僕達が死霊術の失敗に絶望していると、ゼロはそんな僕達の気持ちを理解出来ないどころか、更に命令を要求してきたのだ。



「命……令?」


「そうです。私はご主人様の力で動けるようになった死人。貴方を満足させる為に動く者なのです」



 笑顔でそう言う姿を見ると、自分の意思がまるでなく僕の言う事だけを聞く死人……これが死霊術の本来の状態だと嫌でも気付かされてしまい、無性に悲しくなってしまう。



「そ、そんな………ちょっと、ほんのちょっとルナ達の時よりスキルを使うのに時間が経ってしまっただけじゃないか!それなのに!」



 僕は自分の中にあった甘えに後悔し、強く地面を叩きつける。死霊術があれば例え死んでも何とかなる。仲間と別れる事はない。そんな根拠のない考えを持っていた事に、やり場のない怒りで自分を責め続けた。



「ハヤテさん……」


「……ハヤテ…」



 2人も何と言えばいいのか分からず、ただ僕の名前を呼ぶ事しか出来ない。



「それで私は何をすればよろしいのでしょうか?」



 ただ、まるで機械的に命令を求めるゼロの声が、僕に更なる追い打ちを与えて来る。



「ゼロ……頼むから元のゼロに戻ってくれ……」



 僕は懇願するように頼む事しか出来なかった。



「元のと言われましても、元の魂は既に眠っておりますのでその命令には従えません。別の命令…例えばご主人様を守れとか、誰かを殺して来いなど私に可能な命令をください。この肉体を使って伽をするのも可能です」



 その言葉に僕は心臓を掴まれたようなショックを受け、息苦しくなる。もしかしたら今の命令で元に戻るかも…と、少なからず期待していたので、そのダメージはかなり大きかった。



「そんな命令を聞くだけの人形が欲しかったんじゃない!僕は、僕は………」



 ただ悲しかった。死んだ者が生き返る事がないのは当然の事だったはずなのに、それを忘れて死霊術に頼り、生き人形になってしまったゼロを見て悲しみが倍増してしまったのだ。



「どうして泣いているのですか?私の体で慰めてあげましょうか?」



 今はこの優しそうな言葉が逆に痛い。



「……そんな事をしないでもいいよ。無い胸の人形に抱かれても嬉しくないからね」



 僕は半分自暴自棄になって、ゼロの提案を冷たい言葉で払いのける。彼女に責任はない。ただ悲しんでいる僕を慰めようとしてくれたにすぎないのだ。しかしその僕の心ない一言で、ゼロは今までにない反応を見せた。



「無い、胸……」



 無い胸…昔そう言ってゼロを激怒させた僕の言葉を聞き、今までの人形みたいな笑顔の中に、一瞬だが確かに頬を引きつるような反応が混ざっていたのだ。



「ハヤテさん、今!」


「分かっている。確かに今の反応は人形には出来ないものだ。もしかしたら………」



 僕はこの時、さっきゼロが言っていた言葉を思い出す。……「元の魂は眠っている」、確かにそうゼロは言っていた。最初は既に死んで消えた事を想像してしまったが、今の反応から見て、彼女の肉体の中で魂が眠っているのなら。もし本当にそうなら叩き起こす事で元のゼロに戻るかもしれない。その希望が出て来たのだ。



「ゼロ……」


「はい、ご主人様。命令が決まりましたか?」



 今はもう人形の方のゼロに戻っている。だが、今は彼女の言葉は無視する。僕は笑顔で命令を待っているゼロを見つめ、大きく息を吸う。



「この寝ぼすけのロリ女神!さっさと目を覚ませ!そんなに寝ていても、無い胸は成長しないぞ!」


「な、何を…」



 突然の言葉に戸惑いを隠せないゼロだったが、僕は止める気はまったくない。



「大体いつも強い気で短気で暴れん坊のゼロが、こんなにお淑やかにご主人様なんて言ってきたら恐怖以外の何でもない!いつも無い胸を張って、皆を引っかき回したゼロは何処へ行ったんだ!」


「……………」


「まったく自分では大人の女性と言いながら、やる事は子供っぽいし怒りっぽい!その上この絶壁の事を言うと……」



 そう言って手を突き出したら、ゼロの胸に当たってしまった。ついでなので少し揉んでみる。



「あ!小さいけどちゃんと胸はあるんだ。だてに歳はとっていないって事か…流石ロリバ」


「人の胸に触っておいて、言いたい事はそれだけかーーーーーーーーーーーー!!!!!」



 突然目が輝き、怒りの表情を見せたゼロは、教科書の見本のような綺麗な弧を描いたアッパーを僕に叩きつけた。



「ギャーーーーーー」



 それはまるで小宇宙コスモを燃やす戦士達の必殺技を受けたように、僕は綺麗に上空に殴り飛ばされてしまう。



「誰の胸が絶壁なのよ!それに女性の胸を無断で揉むなんて最低よ!」


「確かに絶壁で無い事は確認出来たけど、それでもほとんど無い事に違わないじゃないか!」



 僕は地面に落ちた後、すぐさま起き上がり反論する。



「まだ言うか!あんたは出会った時から失礼な事ばかり言って!私の体のバランスから考えて、これぐらいがちょうど良いって何故分からないの!」


「それは子供っぽいって言う事で、貧乳の理由にはならないぞ」


「あんたはもう一回死ねーーーーー!!!!!」



 そう言ってゼロは僕を押し倒し上にまたがり、怒りの表情で何度も拳を振り下ろす。








「………なんで泣いているのよ…そこまでダメージは受けていないでしょ」



 すぐに弱くなっていった拳の連打に、僕は涙を流しながら黙って受ける。すでに殴るというより、手を当てているだけになっていた。



「別に痛みで泣いている訳じゃない。ゼロが……ゼロが帰って来てくれて、嬉しかったから泣いているんだ」


「……馬鹿ね…私はこの世界の住人を守って死んでも、元の女神の体に戻るだけで本当に死ぬ訳ではないのよ」



 ゼロの拳は止まり、僕の上から覆い被さる形で見つめ合っていた。



「それでもゼロと話せなくなるのは嫌だったんだ。これは僕の独り善がりで、ゼロにとってはいい迷惑かもしれないけど……」


「別にあんたが気にする必要はないわ。私もこの世界での生活は好きになってるし、あんたとの冒険も……嫌いではないわ」


「そうか…ありがとうゼロ。そしてこれからもよろしく」


「そうね。こちらこそ、楽しい時間を続けさせてくれてありがと」



 そう言ってゼロが立ち上がり、僕を優しく持ち上げてくれた。



「ゼロさん……おかえりなさい」


「……おかえりなの」



 2人も泣きながらゼロの復活を喜んでいる。



「心配掛けちゃったわね。2人共、ただいま」



 そうして3人は抱き合って、再会の喜びを分かち合った。




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