44話 リーザの尋問タイム
ガーゴイルオーガを倒す為に圧縮された魔力を暴発させた跡地。そこの中心地に僕は埋まっていたので、すぐにゼロに見付けてもらえた。
「あー……何と言うか、今回は本気で死ぬかと思ったよ。何しろ残りHPが1万を切っているからね」
「無事で良かったわ。でも普通の人なら1万もHPが残っていたら余裕なのよ」
「それは分かっているよ。でも僕にとっては22万以上ダメージを受けているんだから、危なかったって気持ちになるんだよ」
今は普通に話しているが、僕を救出してくれた時のゼロの真剣な顔を見ているので、本心ではかなり心配してくれていた事を知っている。
「それにしてもハヤテさんが無事で良かったです」
「……凄く心配したの」
続いて近づいてきた2人は、今にも泣きそうな顔をしてこっちを見ていた。
「ルナもカナも心配させてごめん。でも全員無事に生き残る為には、この方法しか思い付かなかったんだ」
「分かっています。今度はハヤテさんが危険な賭けに出ないで済むように、一生懸命腕を磨きます」
「……私も頑張るの」
2人は自分の不甲斐無さを悔やんでいるようで、新たな決意を胸に宣言する。
「さ、せっかく最下層のボスを倒したんだからお宝探しをしましょう。これぐらいのご褒美を貰っても問題はないでしょ」
暗い雰囲気は好きでないゼロは、早速魔導具探しを開始する事を進言した。
「そうですね。ここまで魔導具が1つも見つかっていませんし、この場所に掛ける価値は十分ありますね」
「それじゃあ、お宝捜索開始だ!」
「「「おーーーーー!」」」
僕達の意見は一致し、迷宮探索の醍醐味。お宝探しを始める事になった。
「おー!、じゃありません!まずは私にも分かるように説明してください!」
そして別れてお宝探しをしようとした時に、一番最後に駆け寄ってきたリーザが、完全に蚊帳の外だったので説明を求めて怒鳴ってきたのだ。
「確かに説明は必要よね。分かったわ。ハヤテ、あんたが説明してあげなさい。その間に私達はこの部屋の探索をするからね」
「ハヤテさん、お願いします」
「……任せるの」
「ちょっと!僕1人で説明するの?皆、逃げないで一緒に説明しようよ」
しかし僕の叫びは届かず。3人はさっさと別れて探索を開始してしまった。
「………ハー…リーザ、聞きたい事はなんだい?」
僕は諦めてリーザと向き合う。
「と、その前にとりあえず座ってよ。身長差があり過ぎて話がし難い」
「それもそうですね」
そして迷宮の最下層に出来たクレーターの中心部で、2人は座って対面し話を始める。
「そんな事があったんですか…一概には信じれませんが、この目で見た事を考えると認めないといけませんね」
僕は他のユニークスキル使いと一緒で異世界にいた事や、その時の事故でこの世界に魔族として転生した事、ルナやカナに起こった事、ゼロの事情、そして僕のスキルの説明をした。
「とりあえず僕に人を襲うつもりはない事は信じてほしい」
「それは大丈夫です。今の話とルナちゃん達が信用している所を見る限り、貴方は信用に値する人だと思います。それにこんな事を口外しても、私の頭がおかしくなった思われて誰も信用しないでしょうしね」
リーザは苦笑しながらだが、今まで起こった事を思い出して納得していた。
「僕の目的はルナ達を死人の呪いから解く魔導具探しと、僕の人間に戻る魔導具探し、あとはルナが探している治療用の魔導具探しだ。おそらく他の神の代理人との戦闘にも巻き込まれるだろうけどね」
「目的の魔導具を見付けるのは大変ですよ。なにしろ迷宮で見つかる物は運ですし、目的の魔導具がオークションなどで出ても大金が必要ですし……」
前に見つかったランクの低い魔導具も大金で買い取られたので、もしランクが高く需要も高い魔導具だったら、いったいどれだけの大金が必要か想像もつかない。
「死人の呪いを解く魔導具以外はそんなに急いでいないから、地道に迷宮を回って気長に探すさ」
「迷宮を回るって、この町を出るんですか!?」
「すぐに出る訳ではないけど、この迷宮では魔導具が生まれるのに時間が掛かるんでしょ?なら他の迷宮町に行って魔導具を探しに行かないといけないからね」
「それはそうですが……出来れば他の有能な冒険者が育つまで、この町に留まってほしいのですが…」
もう僕への警戒心はなくなっているが、リーザは何やら困ったような顔をしていた。
「ん?なんでリーザがそんなに困った顔をしているの?」
「実はですね……各迷宮町にある冒険者ギルドは国に魔石の納品の義務があるんです。ですが最近は3等級の魔石を取りに行ける冒険者がいなくて困っていたんですよ」
「国への魔石の納品か…そう言えば武器屋のグラムもそんな事を言っていたな。ギルドで買い取った3等級の魔石は大半が国に買い取って、ほとんどオークションに出回らないから値段が高騰しているって」
「そうなんです。貴方達が魔石を持って来てくれるまでは、町の防衛隊長であるウェルダーさんの所に行って兵士を出してもらっていたんです。それでも大人数で挑んでもらって少量の魔石しか持ち帰れませんでしたし、予算がかなり掛かってしまい大変でした。それで貴方達に出て行かれたら、ちょっと困ってしまうんですよ」
冒険者ギルドの維持費は国からの援助もあるようで、納品のノルマを達成出来ない支店は、最悪町からの撤退もあり得るとの話だった。
ただ冒険者は自己責任で自由に動ける存在だ。その事をリーザは理解しているので、あまり強く言えないのだ。
「今回の魔石をギルドに売ってくださればかなり助かりますが、それでも1年ぐらいが限界ですね」
「つまり次の有能な冒険者が育つまでの魔石を稼いで欲しいと言う事だね。でも有能な冒険者か………、僕が出会った中で優秀なのは、カレンとリリカかな。でもカレンは火の魔法使いだから、15階層以降は相性が悪いし、リリカは慎重な行動をするから下層に挑むまで、相当時間が掛かると思うしな…」
「そのお二人はチーム弱者の盾と行動を共にしていますよね。確かカレンちゃんが一人前になり、しっかりとした仲間を見付けるまでの護衛兼仲間との依頼で」
「まだまだ子供だけど、カレンの魔法があれば中層ぐらいなら余裕になっただろうから、一番最初に下層に行けるのはそこかな。ま、そうは言っても他の冒険者の実力をそこまで知らないんだけどね」
いつの間にかに事情の説明からギルドの運営に関わる話に変わっていた事には気がついていたが、僕も気懸りを残して町を去りたくないので相談に乗る事にする。
「すみません……残念ながらこの町にいる冒険者のチームで、貴方達を除けば弱者の盾の皆さんが一番です」
もしかしたら僕の知らない強いチームがいるのでは?と期待していた事を分かったようで、リーザのせいではないのに申し訳なさそうな顔をして謝ってくれた。
「僕はすぐにこの町を出るつもりはないけど………ゼロは結構飽きっぽい所があるから、ただのお金稼ぎでの繰り返し作業は嫌がると思うよ」
僕もそうだが、変化がない繰り返し作業はやる気が出ないのだ。目的の魔導具がオークションに出た時の為にお金を貯める必要はあったが、出るかどうかも分からない物の為に頑張るのは無理だ。それ以外に僕達はお金を貯めても、とくに使い道がない。
「………ならお金を貯めて移動出来る家を建てるのはどうですか?」
顔を少し下げて少し考えていたリーザだったが、何やら思い付いたようで勢い良く顔を上げる。
「移動出来る、家?」
「そうです。治療所とも言っていいかもしれませんが、ルナちゃんの目標である魔導具による治療。それを行う治療所兼自宅を建てるのです。そしてそれは貴方の収納の腕輪に入れておけば邪魔にもなりませんし、違う町に行った時も住む所に困りませんよ」
「……なるほどね」
僕の話を聞いて、リーザは目標を作る事によって迷宮で魔石を集めてもらおうと考えた。しかも自分達では家を作れないので、換金したお金は町の職人に回るのだ。
しかもどうせ作るならと、僕達がこだわって大金が必要になるのは目に見えている。
「僕達の性格を考えての良い案だね。確かにそれならゼロや僕もやる気が出るから、リーザの望む結果になりそうだよ」
「それでは!」
「ああ、ルナ達にはそれとなく僕から話をするよ。もちろん絶対とは言えないけど、たぶん成功するから安心していいよ」
「ありがとうございます!」
こうして1時間近くの話をしていると、お宝探しをしていたルナ達が笑顔で帰って来る。
「とりあえずこれらの魔導具が見つかったわ。それとあの魔物のいた所にこんな魔石と鉱石もあったわ」
ゼロが言ったとおり、僕の前には3つの魔導具と魔石と鉱石が置かれた。
「へー…これって1等級の風の魔石だよ。やっぱりあれだけ強ければ、魔石も良い物が手に入いるんだ。それと……」
ガーゴイルオーガの角 ・・・ 『高硬度の魔法金属。加工は鉄よりも高温度の火力が必要だが、比較的加工しやすい金属。武器にしても防具にしても高い性能を持つ。ただし一度加工すると熱に強くなり、再利用は出来ない』
空気壁の指輪 ・・・ 『使用者の魔力を使い、半径2メートル以内の任意の場所に空気の塊を1つ作れる。塊の大きさは30センチ角』
魔石鑑定レンズ ・・・ 『このレンズを通して物を見ると、簡単な魔石の鑑定が出来る』
伸縮棒 ・・・ ランク8『使用者の魔力を使い、5センチから2メートルまで長さを変えれる』
「だ、そうだ」
僕は持ってきた物を鑑定して、その内容を皆に説明した。
「………けっこう微妙な効果の魔導具ね…」
「使いやすいのは魔物の素材ですね」
ルナとゼロは、魔導具の期待外れの効果にガッカリしていた。
「それより1等級の魔石ですよ!?1等級の魔石なんて初めて見ましたよ!」
リーザは魔導具よりも1等級の魔石の方に興奮していた。魔導具の方に触れない所から考えて、リーザも微妙だと思っているのだろう。
「……私は伸縮棒が欲しいの。……これをグラムの所に持って行って、ハンマーに改造してもらうの」
「長さを変えれるハンマーか…それは結構使いやすい武器になるかもしれないね。なら伸縮棒はカナが使うとして、空気壁の指輪はゼロが持つべきだ。これを使えば空中で方向転換が出来るかもしれないから、さっきみたいな時に助かるよ」
「なるほど。使い方次第では魔物の行動も制限出来るかもしれないわね」
「それじゃ、ゼロに指輪を」
そう言って指輪をゼロに渡してあげる。
「あ、これってサイズ自動修正の機能がついていないから、無理なく入る指にはめてね」
「利き手にはめると邪魔になるから左手ね。………人差し指は駄目と……中指も駄目…………小指には大き過ぎる……………」
そう言ってゼロは動きを止めてしまった。
「どうしたの?入る指がなかった?」
「……………」
ルナとカナは何か思う事があるようで、ジッとゼロの方を見ている。その視線の力強さに、ゼロは冷や汗がダラダラ流しているのだ。
「いえ、まだサイズがピッタリ合うとは限らないわ!………えい!」
良く分からない気合いを入れて、ゼロは左手の薬指に指輪をはめてみる。
「ピッタリですね……」
その様子をジッと見ていたルナはそっと呟いた。その言葉の通り、ゼロの指にピッタリ合っていたのだ。
「ちょっとルナ!勘違いしないでよ。これは偶々だから、偶然だから、深い意味はないんだからね!」
ゼロは少し顔を赤くして、突然ルナの方に振り向いて弁解を始めた。
「………分かっています。が、正妻は私です。例えゼロさんでもこれだけは譲れません」
「……妾1号は私なの。……ゼロは2号」
そこにカナも加わって、2人はビシッとゼロに指を差して宣言する。
「全然何も分かってないわよ!お願いだから話を聞いて、完全に誤解なんだってばーーー!」
ゼロは一生懸命誤解を解こうと説明しだした。
「ま、そんな3人は置いといておこう。それで魔石鑑定レンズは渡したい人がいるから、リーザの分け前は1等級の魔石でどうかな」
「え!?ほとんど役に立っていない私が、分け前を貰う訳にはいきませんよ」
突然揉め始めたルナ達を見て呆気に取られていた所に、1等級の魔石をくれると言われてリーザは驚いていた。3等級と2等級の間にはかなりの差があり、2等級と1等級にはそれ以上の差がある。現存する中でかなり数が少ないので貴重品だ。
それこそ下手な魔導具より使い道が広い為に、欲しがる人や国が多く、価値も高くなっているのだ。
「今はリーザもチームの一員だから貰う権利があるよ。でも見付けた鉱石はカナの武器に使いたいから、他に分けれる物がないんだ。なんならここに来るまでに手に入れれたレア素材も付けるけど」
「だからそんな貴重な物を貰う訳にはいきません。私としてはここまで来る時に手に入った3等級の魔石を、少々貰えるだけで十分です」
「そうはいかないでしょ。3等級の魔石は僕を抜いて頭割りにするから、当然受け取って貰う事になってるし」
「だからそんなに貰えませんってば~~~」
全然話を聞いてくれないリーザは、いまだ駄々を捏ねていたが、
「駄目だよ」
「貰っておけばいいじゃない」
「リーザさんも受け取る権利はありますよ」
「……貰うべきなの」
ようやく揉め事が終了したのか、ゼロは疲れた顔をしてこっちに来た。
そして全員一致の声に負け、リーザは渋々ながら受け取る事で折れる。
「まったく、いきなり貴重品を貰ってもどうしろって言うのよ……」
どうやら急に手に入った貴重品の扱いに困っているようで、ブツブツ何かを呟いていた。
「さてと、お宝探しも終わった事だし地上に帰りましょうか」
「そうだね。今回の探索はかなり疲れたから、家に帰ってゆっくりしたいよ」
「私もそろそろ帰らないと、仕事が溜まって大変な事になってしまいます」
「……美味しい物を食べに行きたいの」
「それでは帰りましょう」
全員の意見がまとまったので、僕達はボス部屋を出ようとする。
だが、僕達がそう簡単にこの迷宮を出る事は出来なかったのだった………。




