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43話 魔力大爆発




 ガーゴイルオーガの攻撃をカナは受けて吹き飛ばされてしまった。だが起き上がってポーションを使っていたので、何とか無事だったようだ。



「そんな………」



 そんなカナの様子を確認した後、僕は変身が解けてしまった原因を探す為に自分のステータスを確認してみる。すると僕のMPはほとんど0になっていた。変身以外の何にMPを使ったかと思い返してみると、1つの原因が思い付く。



「ルナ!すぐに自分のMP残量を確認してくれ!」


「は、はい!……………そ、そんな…私のMPは戦いが始まる前からほとんど減っていません!」


「……やっぱり…」



 僕の推測、それは変身中に使っていたルナの魔法だ。約10分間、ルナは今まで以上に強力な魔法を使っていたはずなのに、全然疲れる素振りを見せなかった。本来ならMPが少なくなって、精神的に疲れが見え始めてもおかしくはなかったはずなのに……。

 つまり変身中に使うMPは、変身の魔導具を通して全て僕が消費してしまうのだ。しかも消費MPが半端なく上がっていたのだろう。だから予定より早くMP切れが起こってしまい、変身も解けてしまったのだ。

 

 その事と、次に攻撃しようとしていた事をルナの口からゼロに説明をする。



「…………確かにそれしか方法がないわね」


「でも限界までMPを使っていますから、すぐには……」



 2人の変身が解けるまでMPを消費したので、今はほとんど0になっている。そして人型になる魔導具を使うには5万のMPが必要で、その分を回復するには20分少々の時間が掛かるのだ。



「その時間は私が稼ぐわ!ルナには最後に爆発を防ぐ壁を作ってもらわないといけないから、MPを温存しながら適度に援護してちょうだい。……そしてリーザ!これから起こる事は他言無用よ。もし約束できないようなら貴女を見捨てないといけなくなるからお願い!」


「分かりました。冒険者が隠しておきたい切り札を持っている事は良くあるので、ギルド職員として他言しない事を約束します!」



 リーザにとっては秘密の魔導具程度の認識なのだろうが、約束してくれた事にホッとしてゼロが行動し始める。しかし厳しい状況なので、ゼロの表情もすぐに厳しいものに変わる。


 最初の元気な状態のガーゴイルオーガだったら、20分も時間を稼ぐなんてとてもじゃないけど出来なかっただろう。しかし変身中の2人の攻撃が響いているのか、その動きに最初のようなキレはなくなっている。


 それでも攻撃を受けたら即死亡の状況なので、肉体的にも精神的にも凄い勢いで消耗しているのが分かる。なにしろゼロの動きがドンドン悪くなっているのだ。

 カナも援護する為に何度か参戦して防御に徹していたが、ゼロみたいに攻撃を避ける事が出来ないのでダメージを何度も負い、既にポーションも切れてしまったので時間稼ぎに参加出来なくなっていた。今はリーザが肩を貸してあげて、敵の注意の外で逃げ回っている。



「ルナ!このままではゼロが凌ぎきれない。……僕をあいつの所に投げてくれ!」



 このままではゼロが危ない。そう思えた以上、ジッとなんて出来る訳がなかったのだ。



「でも!………いえ、例えハヤテさんが追われる事になっても、私は最後まで着いていきます。だから頑張って来てください」



 それをするとリーザに颯の存在がバレてしまい、最悪はこの土地にいれなくなってしまう。そう懸念したが、すぐにルナも決意してくれて僕を投げてくれた。








「ハァハァ…まったくしんどいわね……でも、だからこそ退屈しないでいいわ」



 今まで何とか凌いでいたゼロだったが既に肩で息をしており、MPが尽き、体力的にも限界に近い状態だった。敵の攻撃を大きく避ける事が出来なくなっており、振り回される剛腕の巻き起こす風で、体力と少しづつダメージも負っている。すでに出来る事は軽口を叩いて、自分を奮起する事だけだった。


 そんな限界のゼロに地を這うような横からの攻撃が来る。疲れから視界が狭くなっていたのも原因で反応が遅れ、攻撃を避ける為に安易にジャンプして避けてしまった。その瞬間、ゼロは致命的なミスをしてしまった事に気がつく。



「…あっちゃー…これは酷いミスをしちゃったわね………出来れば後数分、時間を稼ぎたかったけど……ごめん。あとは何とか時間を稼いで生き残ってね」



 通常ならこんな誘いの一撃を上に逃げるなんて選択はしない。だが今それを言っても何も変わらない。既にジャンプして空中にいる状態のゼロは、次の攻撃をかわす事が出来ないのだ。

 そしてまさに叩き潰そうと腕を振り上げているのを見えた時、ゼロはここで終わりだと悟る。



「……じゃあね、皆。楽しかったわ」



 そしてゼロは目を閉じて、静かに最後の時を待つ。










「普段強気のロリ女神が、急にそんな事を言っても全然似合わないぞ!」


「え?」



 僕は諦めて目を閉じているゼロに向かって明るく声を掛ける。


 そして左手のゴーストハンドを使ってガーゴイルオーガ頭を掴み、右手に持っている漬物石(魔重石)を重くして脳天に一撃を加える。この一撃のダメージは大した事無かったが、その重さでバランスを崩し倒れる。



「きゃ!?」



 その巨体が倒れる衝撃を、空中にいたゼロはまともに受けてしまい、バランスを崩した状態で地面が近づいたので小さく悲鳴を上げてしまう。



「はは、ずいぶんかわいい声を出すんだな。もしかしたら初めて聞いたかもしれないよ」


「な!?」



 そんなゼロの下に行き、僕はゴーストハンド使って優しく受けとめて抱きかかえてあげる。



「あ!?お姫様だっこだ。………ゼロさん、羨ましいです…」


「……私もやってほしいの」



 離れた所にいる2人が羨ましそうにこっちを見ていて、リーザは僕が動いている事に驚いて固まっている。だが今はそんな事を気にしている暇はない。



「悪いな。1人に負担をかけちゃって。ここから先は僕が引き受けるから、ゼロは後ろで待っていてよ」


「……その前にこの姿勢をどうにかしてくれない?かなり恥ずかしいんだけど」



 ゼロはそう言いながら顔を真っ赤にしていた。どうやら恥ずかしいのは本当のようだ。



「でもそれでいいのね?リーザに正体がばれちゃったわよ」



 最初の予定では人型になってから行動するつもりだったので、ぬいぐるみの僕が動く所を見られる心配はなかった。ゼロもそれを避ける為にに1人で頑張ってくれたのだが、



「構わないよ。正体を隠して大事なゼロが死んだら、悔やんでも悔やみきれないからね」


「な!?大事って!」



 落ち着いた瞬間に僕の言葉を受けて、また顔を真っ赤にしてしまう。



「え!?、あ、ああ、大事な仲間、そう僕達はチームだから全員大事な仲間って事だからね」



 僕は自分のセリフが言葉足らずだった事に気付き、仲間を強調して言って落ち着かせようとした。



「わ、分かってるわよ!私みたいな超絶な美女は、あんたみたいな平凡な男には相応しくないわ」


「平凡って…確かにそうだったけど。ま、ゼロが元気になって良かったよ。そんな強気なセリフがあってこそゼロだもんね」



 そんなゼロの様子を見て、僕はホッとしたように安堵し喜んだ。



「…馬鹿………まあいいわ。私は疲れたからルナ達の所で休むから、死なない程度に頑張りなさい」



 また少し顔が赤い気がするが、足取りはしっかりしていたので安心して見送る。



「さて……と、今のMPは大体4万ちょい。時間にして後5分ぐらいか……」



 ゆっくりだが、起き上がったガーゴイルオーガ。その体格差は明らかだったが、ビビって逃げる訳にはいかない。

 今まともにこいつと対面出来るのは俺しかいない。何とかして時間を稼ぎ、MPの回復をしないといけないのだから。



「そうは言っても、僕の戦い方自体は変わっていないんだよな……」



 つまり避けれない攻撃は、漬物石を利用して吹き飛ばされないようにするだけ。HPが多い事を利用して、ただ耐えるだけの我慢作業なのだ。


 ただ避けれない攻撃とは言っても、ゼロでも苦労するような攻撃を僕がかわせる訳もなく、8割ぐらいの攻撃はこの身で受けるはめになったのだが…。



「…これはかなり効くな……ミノタウロスの一撃が可愛いく感じるほどだよ」



 最初は痛みでショック死してしまうかもと考えたが、痛みに慣れてきたのか、何とか耐える事の出来る範囲に収まってくれた。

 その後もガーゴイルオーガから繰り出される強力な拳の一撃を、その身で受け止め続ける。それでもただの受け身に回ると、すぐにルナ達を狙おうと動き始めるので、僕の方から攻撃を仕掛けないといけないのがキツイ所だ。

 その鈍い音の度にルナ達は心配そうな顔をするので、僕は苦しい顔を見せずに耐えなければならない。そうしないとルナは飛びだしてきそうだし、ゼロやカナも参戦できない事で責任を感じてしまうからだ。



「いつもは着いて行くだけのお荷物なんだから、皆がピンチな時こそ僕が頑張らないとな。こんな姿になっても、一応は男だし!」



 僕は自分で自分に言い聞かせ、この激しい猛攻に耐え続けて行く………









 そんなキツイ作業に耐えた僕は、ついに必要なMPが回復した。



「皆!MPが回復したから、今から魔力大爆発を使う。皆して扉の方に行って、ルナとカナは爆発に備えて魔法の準備を!頼むから耐えてくれ!」



 前に爆発した時は大きなクレーターを作るほどだったので、最悪天井が崩れる心配をしたのだ。せめて扉の傍なら、階段に逃げ込む事で助かる可能性が上がると考えた。そして爆発に巻き込まれてルナ達が死んだら……それだけが恐怖として僕に圧し掛かる。



「私達の事より、あんた自身の事を考えなさい!この作戦が失敗したらどのみち後がないんだからね」



 ゼロがそんな僕の気持ちを読んで、声を掛けてくれてた。



「全力で魔法壁を張りますので、私達は大丈夫です」


「……あとでまた話をするの」



 ルナとカナも明るく答えてくれる。それだけで僕の心は軽くなり、安心して最後の攻撃を仕掛ける事が出来る。



「ありがとう。…それじゃあ最後の攻撃だ。行くぞ!」



 僕は漬物石をしまい、5万のMPを使って人型になる。



「これで、終わりだ!!!」



 そしてガーゴイルオーガの懐に入り、防御もせずにあえて攻撃を受ける。


 その瞬間、僕の周りに纏っていた魔力が大爆発を起こす。









「ルナ、カナ!爆発が来るわ。出来るだけ大きくて強固な壁を作って!」



 僕の爆発に合わせてゼロが壁を出す指示を伝える。



「わ、私も手伝います」



 ガーゴイルオーガの立っていた位置から激しい爆発が広がって来るのを見て、リーザも「微力ながら」と風の魔法を使って爆風を遮る壁を作り、師匠から貰った魔導具も使って更に守りを固める。


 ルナが水の壁を二重に張って前方に放ち、目の前にはカナの黒い壁がそびえ立ち、その間にリーザの風の壁がある。ここまで複数の壁でガードしてもその衝撃を全て防ぐ事は出来ず、壁は軋み、地面は激しく揺れ、その圧力を全身で感じた。




 一瞬だが長く感じる爆発に、全員何とか耐えきる事が出来たのだった。









「近くでこの爆発を受けるは初めてだけど……流石、5万もの魔力を使った爆発ね。威力が半端ないわ。でも、今回はちょっと心配ね…」


「そうですよね、ハヤテさんは大丈夫でしょうか……爆発する前にも結構なダメージを受けていましたし…」


「……心配なの」



 爆発の影響でボスの部屋はかなり損傷を受けていたが、崩れるような感じはまったくなかった。そして3人の心配の対象は僕の安否に集中している。



「……それにしても……この爆発の威力はありえませんよ。……あれ!?もしかして町の北側に出来た穴って、これが原因じゃないんですか?」



 ルナ達がいた所以外は壁を抉ったり、地面が吹き飛んだりして原型を留めていない。そんな爆発跡を見て、リーザは町の近くで起きた現象と繋ぎ合わせた。



「そんな事よりさっさとハヤテを探しに行くわよ。あの時ですら体半分埋まっていたのに、こんな限られた空間じゃ、全身埋まっていてもおかしくないわ!」


「そうです。急がなくては!」


「……急ぐの!」



 疑問をぶつけて来たリーザを無視して、3人は爆心地に走って行く。



「ちょっと待ってくださいよ!あとでハヤテってぬいぐるみの事も合わせて、全部説明してもらいますからね!」



 そう叫んでいたリーザも、1人取り残されるのは嫌なので急いで着いて行った。





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