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39話 リーザの怒り



 ようやく落ち着きを取り戻した僕達は、今後の為に集まって反省会を行っている。このチームの悪い所は、作業を始めると全力で行動しだしてしまう所だ。そして周りが見えなくなり、成果だけを求めてしまうので、どうしても飛び抜けた成果を出してしまう。それ自体は良い事なのだが、時と場合と限度が問題なのだ。



「それで明日も依頼を受けますか?町の方から木材が予想以上に集まったって好評なんですよねー」



 確かに大概の新人冒険者が台車を使っても一日に3本ぐらいしか運べないのに、僕達は20本も運んだのだから量が一気に増えるのは当たり前の事だ。



「これ以上目立つのは拙いから、ちょっと依頼を受けるのは控えるわ」


「そうですよね~。…それでは明日は迷宮ですか?」



 リーザもこうなるとは分かっていたので、あまり驚かずにやっぱりねって顔をしていた。



「その事なんだけど、3日に1階層の制限を解いて欲しいんだけど……」


「もうですか!?あれからまだ数日しか経っていないじゃないですか…」


「そうなんだけど、14階層の魔物は数が多いだけだったのよ。それに防具屋に火トカゲのマントを作ってもらっているから15階層以降も行けると思うし」


「火トカゲって……まさかサラマンダーの事ですか!?………最近サラマンダーの鱗が市場に出たって話は聞いてません。つまり貴女達は15階層に足を踏み込んでサラマンダーと戦い、その鱗を手に入れたって事ですよね?鱗を残すのは極稀ですので、相当数狩ったって事ですよね?」



 最初は驚いていたリーザだったが、後半は淡々と質問している所を見ると、実は結構お怒りなのが分かる。しかしゼロ達はその事に気が付かず……



「……そこまで多くは倒してないの。……一回り大きい個体が目安だったから、5つ集めたけど楽だったの」


「それに15階層は下への階段を探していないから、実質攻略したのは14階層までよ」


(ゼロ……それはかなり無理があるへ理屈だ)


「……………」



 リーザは2人の話を聞いて笑顔のまま何も言わない。元々美人のエルフなので、その笑顔はとても眩しいものだったのだが……言葉では言えない迫力を感じる。


 僕は知っている。これはたまにルナが見せる怒りの笑顔だ……



「……明日は泊り込みで迷宮に籠るの。……目標は最下層なの」


(カナもそろそろ気付いて!そしてこれ以上火に油を注がないでくれぇぇぇ!)


「確かにこの調子なら最下層も不可能じゃないかもね。サラマンダーは相性が悪かったけど対策は出来たし、ロックゴーレムはカナとの相性が良いから何とかなるだろうしね」



 カナの言葉にゼロも調子に乗って大きな事を言いだす。唯一リーザの様子に気が付いているルナは、ただオロオロする事しか出来なかった。



(ルナ……もう爆弾が落ちるのは確定事項だから諦めよう…)


「……皆さんちょっと着いて来てください」



 リーザはそう言って突然立ち上がると、さっさと2階に上がって行ってしまう。



「? 良く分からないけど、着いていけばいいのね」


「さあ、黙って着いていきましょう。おそらく行けば分かりますよ……」



 着いて行く理由が分からす首を傾げているゼロとカナに、ルナと僕は諦めたような顔をして着いて行くように促した。


 リーザの向かった先はギルドマスターの部屋だった。どうやら1人では説得出来ないと判断して、ギルドマスターのルドルに協力をお願いするようだ。




「……なるほどな。既に15階層でも戦えるほどの実力を持っていたか…」



 部屋に入るとリーザがルドルに何かを話していたが、どうやら3人の実力を話してしまったようだ。



「ちょっとリーザ!私達の事は内緒だって言ったじゃない!」


「……約束を破るのは酷いの」



 2人はリーザに向かって怒っていたが、ルナと僕は怒る事は出来なかった。なにしろ最初に約束を破ったのはこっちだからだ。その事を理解しているので、ルナは黙って下を向いているだけにしている。



「皆さんの行動は私では抑える事が出来ませんでしたので、ここはギルドマスターに判断してもらう事にしました」



 今もルドルの後ろで怒りの笑顔のままで対応しているが、そのプレッシャーはルドルも感じているようで、かなり困った顔をしている。



(まさかこのギルドで一番力があるのはリーザなのか?完全にルドルが使われている形になってるぞ)


「あー…簡単に話をまとめると、ルナ達は迷宮を攻略しようとしていると。そんな感じなんだな?」


「ま、まあ、そんな感じよ。15階層の魔物までなら倒しているから、行ける所まで行くつもりよ」


「………だが、ほんとにお前達にそこまでの実力があるのか?ルナなんてちょっと前までは養成所に入っていたぐらいで、俺が担当していたが魔法の腕は凄かったが、とてもじゃないが下層の魔物の攻撃に耐えれるとは思えないぞ?」



 ルドルが担当していた時は、ルナはまだ死霊術に掛かっていない。急成長したのは僕の魔力を多大に受けてからなので、ルドルが知らないのは無理がないのだ。


 ただ魔物の集団を倒したのはルナ達と知っているので、特徴的だったルナの魔法の腕だけが飛び抜けていると思っていた。



「その事ですが……ルナちゃんも含めてこの3人のステータスは飛び抜けて高いです。理由は分かりませんが、魔法使いのルナちゃんですら中層レベルの冒険者の力を上回っています」


「そんな馬鹿な事があるか……少なくとも養成所でのルナが杖を振る速度を見ていても、そこまで力があるようには思えないぞ?」



 迷宮に潜る時や、カレンを護衛していた時は背中に大盾を装備していたので、それを見ればルナの力が強いと分かるのだろうが、今日は木を運搬する依頼を受けていたので装備していない。



「まあ、それもギルドカードを見れば分かるか。あれを不正に表示する事は不可能だからな」


「………どうしても見せないと駄目?」



 あまり目立たないようにと決めてすぐなので、ゼロも含めて全員がギルドカードを見せるのに気が引けている。



「迷宮は危険な所なのです。ですので、これ以上下層に潜ると言うのならギルドマスターの許可を取ってもらいます。嫌だと言うのなら……」


「分かった、分かったわよ!見せればいいんでしょ!ただし、私達は名前を売るつもりは全くないから、ステータスを見ても公表しないでよ!」



 リーザの迫力がドンドン上がるので、ゼロは諦めてギルドカードを見せる事にする。



「それは約束しよう。冒険者のステータスを公表なんてしたら、お前達が危険に巻き込まれるからな」


「……約束よ」



 そう言って3人は渋々ギルドカードを見せる。




ルナ   ランク  4


HP   198 / 198

MP   412 / 466


力    134

耐久力  118

素早さ  114

魔力   250




ゼロ   ランク  2


HP   181 / 181

MP    55 /  55


力    154

耐久力  130

素早さ  230

魔力    70




カナミティー ランク 1


HP   236 / 236

MP   118 / 118


力    228

耐久力  152

素早さ   98

魔力   158




「前回の更新からまだ数日しか経っていないのに、また成長してる……」



 リーザも3人のステータスを見て、その成長速度に呆れていた。



「………なるほど…理由は分からんが、俺の知っているルナではないようだな。それにリーザの反応からして、成長速度も飛び抜けているようだ……。

 ……結論から言ってこのステータスなら下層で戦っていても不思議ではないな。それどころか、今は町の外に依頼で出ているこのギルドの最高チームに匹敵している。いったい何をすれば新人がここまでの力を得られるんだか……」



 ルドルはルナの想像以上のステータスに驚きを隠せないでいる。



「そんな事よりどうなの?私達は火トカゲのマントも用意しているから、15階層のサラマンダーは敵ではないわ。それにあの階層の暑さも、ルナの水魔法があるから水の補給には困らないし」


「確かにそこまで準備しているなら15階層や16階層も大丈夫だろう」


「ちょっとルドルさん!?そんな簡単に許可を出さないでください!ルナちゃん達は強くてもまだ新人なんですよ!」



 どうやらルドルに説得を頼んでいたようだが、あっさり許可を出そうとしたので怒ってしまう。



「そうは言ってもな………リーザだって冒険者なんだから分かると思うが、この仕事は全て自己責任だ。例え迷宮内で怪我をしようが死んでしまおうが、誰も恨まず実力が足りなかったと諦めるしかない」


「それは…そうですが……」



 ルドルの言葉。それは冒険者なら誰もが最初に説明されて分かっている事だ。もちろんリーザも新規登録者にはそう説明している。だからこそルドルの言葉に何も言い返せなくなっていたのだ。



「確かに冒険者に死んで欲しくはないから、実力が足りないで無謀な事をしようとする者は止めるが、ルナ達のステータスを見る限りでは決して無茶ではない。

 ……リーザは少し入れ込み過ぎているんじゃないか?過保護過ぎてもルナ達の成長の妨げになるぞ」


「でも……」



 リーザも頭では分かっている。分かっているのだが、仲の良いアリサの妹であり、自分にとっても妹みたいな存在なので、危険な事は出来るだけやってほしくないと思ってしまう。



「………そんなにルナ達が心配なら、一度一緒に迷宮に潜ったらどうだ?」


「え?」


「だからお前自身の目でルナ達の実力を見て、今後も下層に行って大丈夫かを判断すればいいと言ったんだ。お前達はどうだ?」



 そう言ってルドルは僕達に聞いて来た。



「私達は構わないわよ、ねぇ?」


「私も構いませんよ」


「……問題ないの」


「ルナ達は構わないと言っているが、リーザの方はどうなんだ?」



 今度は全員の視線がリーザに集まる。



「………分かりました。確か明日は迷宮に行くと言っていましたね。それに同行させてもらいます」



 リーザも決意を固めたようで真剣な顔をしていた。



「なら明日の朝にギルドに寄るから、そこで合流しましょう。久しぶりの迷宮だろうけど、私達が守ってあげるから安心してね」


「……大船に乗ったつもりでいるの」


「明日はたくさんお弁当を用意しますね」



 しかしリーザとは違い、ルナ達はまるで遠足に行くような気楽さで笑っている。そのせいで場の空気は一気に軽くなってしまった。



「ハハハハハ、こりゃ大物かもしれないな」



 その様子を見ていたルドルも大笑いしだす。



「もー、ルドルさんまで………。ハァー…私だけ気が張っていたのが馬鹿らしくなっちゃいますよ…」



 リーザもこの空気に、ため息を吐いて気が抜けてしまった。



「よーし、この勢いでそのまま最下層まで目指しましょうか!」


「ちょっと待ってください!?私は冒険者と言っても、下層に行く前に受付の仕事を初めてしまいましたから、そこまで行く実力はありませんよ!」


「問題ないわ。リーザは魔法使いなんだから、後ろから私とカナの援護をしてくれれば大丈夫よ」


「それに火トカゲのマントは、私の分をお貸ししますから安心してください」


「……1体も魔物を後ろに通さないの」


「そこまでしないで良いですから!…それより本気で最下層に行く雰囲気を感じるのですが……ルドルさんも笑っていないで、何か言ってあげてください!」



 ルナ達は完全に行ける所まで行こうって雰囲気になっており、火トカゲのマントが貸すと言う事は最低でも15階層は確定している。その様子を笑って見ているルドルに泣きついたのだ。



「ハハハ、確かに無理なく行ける所まで行くのは構わない。だが、最下層の扉の中に入る事は許さん!あの扉の先に入った者は今まで誰も帰ってきてない。20階層まで行ける腕を持っていても誰も帰って来れないんだ……。

 だからその扉に入らないと言うのが、俺から出す条件だ。どうだ?」


「一先ずそれで良いわ。私達の一番の目的は迷宮攻略ではなく、目当ての魔導具を手に入れる事だからね」


「出来ればお前達の急成長の理由を教えて欲しいんだがな」



 陽気にリーザをからかっていたが、どうやらルナの急成長の秘密に興味があるようで聞いて来る。



「私はある意味、この世界に生まれてからこのステータスだったわ。詳しい事は説明出来ないけどね」


(確かに嘘は言っていないよな。ゼロがこの世界の住人として来た時には、今に近いステータスだったし)


「それにルナ達の成長の秘密も教えれないわ。教えたからってどうにかなる物じゃないし、ルナ達の人権にも関わる事だからね。

 ただ、無理に聞こうとしない事ね。もし強行したなら私はもちろん、カナやルナのお守りみたいな奴も黙っていないだろうから、最悪この前の魔物の襲撃以上の災害が訪れるわ」



 ゼロはそう言いながら笑顔でルドルに指を差している。しかしその目は本気だと語っていた。



(完璧な脅しだけど、言ってる事は間違ってないな。…僕が人化してルナを助けようとして、何かの衝撃で魔力漏れを起こしたら………町に多大の被害が出るのは間違いないし)


「ルナのお守り?アリサの事か?」


「違うわ。そいつが動けばルナも動く、ルナが動いたらそいつも動く……そんな関係なのよ。ま、ルナ達が町を破壊するなんてしないだろうから、違う町に引っ越すぐらいで終わるだろうけどね。聞いた話じゃ迷宮がある町はここだけではないから、私達が無理して居座る理由はないもの」


(………確かにそうなるかもしれないな。仲良くなった人達や、馴染みの店との別れは寂しいけどね)


「誰の事かは分からんが、これ以上の詮索は止めとこう。高ランクの冒険者が外に出ていない今、お前達までこの町を出ていかれると困る。この前みたいな魔物の群れが襲って来た時に、お前達は切り札として期待しているからな」


「ま、分かってくれれば問題ないわ。それじゃあリーザ、明日の朝に向かえに来るから装備を整えて待っててね」


「はい。出来る限り準備を整えて待っていますので、そちらの都合の良い時間になったら来てください」



 少々力が入り過ぎている気がしたが僕達は冒険者ギルドを後にし、ココアの店で火トカゲのマントを受け取って家に帰った。




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