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37話 サラマンダー


 カナが変身を解き、僕は自分のステータスを確認しながらこの魔導具についての話し合いをしていた。



「確かに凄い力だけど、これでルナも魔導具を使ったら、いくらあんたのMPが馬鹿みたいにあっても底が着いちゃうわね……まさかあんたのMPが切れる心配をする事になるなんて、想像も着かなかったわ」


「それは僕も一緒だよ。余裕がある時に慣れておかないといけないのは賛成だけど、あまり頼る癖が付かないように気をつけないといけないね」


「……なら次はルナの番なの」


「え!?」



 僕が言ったように切り札だとしても、ぶっつけ本番は幾らなんでも危険すぎる。その意見を理解した全員の視線がルナに集まっていた。



「………べ、別に私は…慣れなくても…」



 ルナ自信も僕の話には納得しているのだが、ただ恥ずかしいので出来れば遠慮したいようだ。



「……今なら私達しかいないの」


「そうよ。人前でそれを使う時が来るかもしれないんだから、今の内に少しでも慣れておかないと本番で動けなくなっちゃうわよ」



 2人の話は理解出来る。それでも踏ん切りがつかないようで困っている。



「2人共、あまりルナを追いこんだら可哀想だよ。大丈夫、ルナに危険が迫ったら僕が何とかするから」


「ハヤテさん……」



 僕は羞恥と理解の間に挟まれて困っているルナを見ていられなかった。



「…ルナはそれでいいの?」



 しかし僕の言葉に甘え、「ただ守られる存在になっても良い?」とゼロに言われてしまい、それではいけないと思ったルナは逆に変身する決意を固めるのだった。


 そして次の魔物の団体さんが現れたので、ルナは変身をして魔法を放った。



「わーお、圧倒的!」


「……でも顔は真っ赤なの」



 ルナは顔を真っ赤にし、ペース配分を考えず全力で魔法を放っている。使っている魔法はアクアスラッシャーだったが、その数は5つ同時であり、迷宮の奥から迫って来る魔物は避ける事も出来ずに一気に切り裂いてしまったのだ。運良く難を逃れた魔物も何匹かいたのだが、近づく事も出来ずに次の魔法であっさり倒される。その圧倒的火力によって、戦闘は1分も経たないうちに終了してしまった。



「う~恥ずかしいです…」


「ついでに空を飛ぶ練習もしておいたら?」



 魔物との戦闘が終了したので変身を解こうとしたルナだったが、そこにゼロの待ったが掛ける。



「飛ぶ練習ですか?」


「そう、飛ぶ練習よ。確かその魔導具は空も飛べるようになるって言ってたじゃない」


「…そうは言われましても、羽もないのに空を飛ぶイメージが全く出来ませんよ?」



 しかしその間もルナは恥ずかしそうに身を丸めている。僕はこんな時の為に家を出る前に毛布を一枚持って来ていたので、それを収納の腕輪から取り出し、そっとルナに掛けてあげた。



「!?……ハヤテさん、ありがとうございます」



 毛布を肩から掛けてあげたのでルナの服は周りから見える事がなくなり、真っ赤だった顔が歓喜の笑顔に変わる。



「……今度ココアの店に行ったら、ちゃんとしたマントを買わないといけないかもね」



 先程の戦闘もそうだったが、変身すると恥ずかしさからルナは一歩も動けなくなるのだ。最初はそれにも慣れてもらおうと思ったが、あまりに時間が掛かると判断したゼロは、諦めて身を隠す防具を買う事に決めたのだ。



「それで先程も言いましたが、空を飛ぶってどうすればいいのでしょうか?」



 ようやく平常時の落ち着きを取り戻したルナは、質問を聞き返した。



「そうね。上に引っ張られる感じ?」


「……私も分からないの」



 ゼロは適当なアドバイスでは、空を飛ぶ練習は必要と思い既に変身をしているカナも理解出来なかった。



「僕のイメージでは全身から魔力を下向きに出して、体を浮かす感じかな」



 そう僕のイメージは武〇術だ。あのアニメでも空を飛ぶ時は、体の周りに気と思われる物で覆われていた。颯のアドバイスもゼロと変わらないレベルだったが、普通の人間は自力で空を飛んだ事がないので仕方がない。



「下に魔力を放出して浮く感じですか……」



 そう言ってルナとカナは集中して魔力の放出を開始する。これは時間がかかると覚悟していた。



「あ!浮けました!?私、宙に浮いています」


「……私も出来たの」


「はやっ!?」



 それから少ししたら2人共簡単に浮く事が出来た。そして一度浮く事が出来れば空を飛ぶイメージが固まり、これ以降はとくに意識しないでも魔導具が勝手に補助をしてくれるようで、自由に空を舞う事が出来るようになった。



「とても気持ちいいです!これが鳥の気持ちなんですね!」


「……快適なの」



 2人共空を飛ぶ快感に興奮気味だった。迷宮の天井に触れたり、手をつないで飛んだりと時間も忘れて楽しそうに飛びまわっている。しかし…



「2人共、そろそろ僕のMPが拙いレベルまで減ってる。だからもう下りて変身を解いて」



 まだ空を飛び始めて数分しか経っていなかったのだが、僕のMPは20万近く消費している。流石、空を飛ぶのに毎秒300の消費量は半端なかった。なにしろ変身維持と合わせると毎秒400、そしてそれが2人分だから毎秒800も掛かり、1分間に48000の消費なのだ。



「あ!?すみません。つい夢中になっちゃいました。でも最高に気持ち良かったです」


「……最高の気分なの」



 つい時間を忘れて飛んでいた2人が地面に下りて変身を解いたも、まだ興奮は収まっていなかった。



「それにしても空を飛んでの戦闘だと、5分ぐらいが限界のようね。これは注意しないと、空中で変身が解けたら最悪だもんね」



 確かにゼロの懸念はもっともの物だ。何しろ一度変身が解けると再度変身するのには2000のMPが必要なる。その後空を飛ぶ事も考えると、数分間はMPの回復をおこなわないといけないので、空で変身が解けるのは命に関わるのだ。



「確かにそうですけど、今度は迷宮内ではなく青空を飛んでみたいですね……でもマントは必須です!」


「……私も大空を飛んでみたいの…」



 2人共空を飛ぶ事にはまったようで、少しウットリしている。



「確かに空を飛ぶのは気持ちいいものね」


「そっか、ゼロは一応女神だったから空を飛んだ事があるんだ」


「一応は余計よ!………まあいいわ。それより次が来たわよ」



 先程よりは少ない数だったが、次の集団が現れたのに気がついたゼロは魔物の方に振り向いている。ただ僕への一撃はしっかりと置いていったが……







「さてと、下への階段は発見したけどどうする?」



 14階層でかなりの魔物を短時間で倒したので、この辺の魔物の数が少なくなり今は落ち着いている。



「……帰るにはまだ早いの」


「そうよね………ちょこっと下の魔物を見て行かない?」



 どうやらゼロは新しい魔物を見てみたいようで、下に行きたくてウズウズしていた。



「少し見るだけなら良いかもしれないね。確かに次の階層に現れるサラマンダーは一度見ておきたいし」


「…様子を見る事は大切な事ですが……ハヤテさんもそう言うのであれば私は反対しません」



 サラマンダー…火を吐く大トカゲらしいのだが、その火は直撃を受けると命に関わる威力を持っていると聞く。それがルナやカナの魔法で防げるかだけでも見て、駄目なら防具などで対策をする必要がある。本格的に攻略する前に、下調べはやっておきたいのだ。



「それじゃあ全員納得ってことで、さっそく下に行きましょう!」


「……楽しみなの」







 そうして僕達は15階層に着いた。階段の終わり近くまで来た時に気が付いたが、この階層はかなり暑い。火を吐く魔物がいるのだから当たり前とも言えるのだが、体感温度で50度は余裕で超えているだろう。



「あまり長居は出来ない階層ですね……」



 既に皆の額には汗を流れ始めている。



「皆、きつくなる前に水を飲むんだよ。この暑さだと熱中症の危険があるからね」


「これはきついわ……水の補給はルナがいるからどうにでもなるとしても、連戦になると飲む時間がないかもしれないから、小まめに水を飲むようにしましょう」



 そう決めてからさっそく水を飲んで魔物を探し始めた。





「ん?…前方に3匹発見!先制でルナの魔法攻撃、最低1匹は残してサラマンダーの火力を見ましょう」



 サラマンダーの動きはそこまで早くはなかったので、近づかれるまでに魔法を放つ余裕はあった。だがいつもと違い、ルナの魔法の精度が落ちているようで狙った所に当てれなかった事に、首を傾げている。この階層の温度と湿度の高いために距離があると歪んで見えてしまい、正確に魔法を当てる事に苦労していた。

 しかもサラマンダーの鱗は魔法耐性が高いのか、ルナの魔法でもなかなか倒す事が出来ず2匹の接近を許してしまう。



「さっそく火を吐いてくるわよ!」


「……私が防いでみるの……シャドーウォール」



 サラマンダーの火に対してカナの魔法で前方に黒い壁を展開する。どうやらこの火には貫通力や勢いはあまりないようなので、カナの魔法で流れを変える事が可能だった。だが……



「こう連続で火を吐かれると、攻撃するタイミングがないわね……」



 そう…2匹が交互に火を吐いてくるのでカナも魔法を解く事が出来ず、僕達はその壁の後ろでただ火が止むのを待つ事しか出来ないのだ。



「このままではキリがないので、私が広範囲に広げた水を放ちます。カナちゃんはタイミングを合わせて魔法を解き、ゼロさんと一緒に攻撃に回ってください。1匹になれば挟み打ちで何とかなります」


「……了解なの」



 そうしてルナの放った水の壁に合わせて2人が進み、水がサラマンダーに当たると同時に1匹倒して通り過ぎる。その様子を見た残りの1匹が2人に向かって火を吐いたが、カナの魔法でそれを防いだ為にダメージはない。



「これで終わりです」



 後ろを向いた無防備なサラマンダーにルナが魔法を連続で放ち、ようやく倒す事が出来た。



「結構手間が掛かったわね…」


「そうですね……アクアスラッシャーが通じれば、もう少し楽に戦えたのですが…」



 開戦早々の先制攻撃でルナはアクアスラッシャーを放っていたのだが、サラマンダーの鱗の魔法耐性の高さに切り裂く事が出来なかった。この魔法は切れ味を良くするために水を薄くして回転を加えているので、対象が切れないほど硬かったり今回のように魔法耐性が強い相手には、ほとんどダメージを与える事がないのだ。

 その為ルナは水弾による攻撃しか出来ず、それも威力が減っているので倒すのに時間が掛かってしまった。



「効かないものは仕方がないわ。とりあえずこの戦い方なら何とかなる事は分かったし、今日は様子見だからもう少し戦ったら引き返しましょう」


「……次の魔物が来たの……数は1匹だけど少し大きい気がするの」



 カナが次の魔物を発見したが、確かに一回り大きい気がする。



「確かに大きいな…この迷宮で現れる魔物は結構同じ大きさが多いのに、長い時間生き残って成長した個体なのかな?」


「まあ、1匹なら二手に分かれて攻撃すれば何とかなるわね」



 さっそくルナの魔法で攻撃を仕掛けたが、やはり大きいのは見かけ倒しではなく魔法耐性も高かい。確かなダメージは与えれたのだが、今回は倒しきる事が出来ず、結局接近戦で倒す事になったのだ。



「………やっぱり僕達の弱い所は防御力の低さだね。攻撃力は高くて魔物を倒せる力はあるんだけど、同時に倒される脆さも持っている……」



 僕の意見に思う所があるので3人は考え込んでしまう。今まではその高い攻撃力であっさり倒していたので防御力は気にしないですんだが、広範囲に攻撃をする魔物相手に一撃で倒せないと一気にピンチになるのだ。



「せめてあの火に耐えれる装備があれば何とかなるんだけどね…。1匹だったら何とかなるんだけど、2匹以上を同時に戦うのは厳しいわ。もし挟まれたら最悪よ」


「ハヤテさんとの協力魔法を使えば大きな魔法を使えますが、それをすると杖が耐えきれないので多用は出来ません。近づけば口に向かって水弾を放てますが、その時には既に火を放たれていますので……」



 この階層の温度と湿度のせいで視界が揺れており、細かい的に魔法を当てるのは難しいのだ。



「 ?。……さっきの魔物の所に何か残ってるの」



 今後の対策を考えていても周囲の警戒を解く事はしていない。その周囲の様子を確認していたカナが、先程戦った一回り大きかった魔物の死体の位置に、レア素材が残っていた事に気がついたのだ。



「やっぱり大きかっただけあって、レア素材が残る可能性が高いのかもしれないわね」



 落ちていたレア素材の所に行くと、それはサラマンダーの鱗だった。それも結構な量が残っている所から見て、丸々1匹分の鱗が残ったようだ。一先ずこのレア素材が何に使えるか鑑定してみる。




サラマンダーの鱗 ・・・ 火耐性に優れた鱗。これをそのまま防具に付けても良し、加工して糸にする事で防具を作る事も可能。




「あ!?このサラマンダーの鱗を加工すれば火耐性の防具が作れるって!これを集める事が出来ればサラマンダー対策になるよ!」


「ほんと!?……でも中々いやらしい迷宮ね。サラマンダーと優位に戦う為にはサラマンダーを倒さないといけないなんて……。普通、1つ上の階層で必要な素材があって、それを装備すれば次の階層が楽に進めるものでしょうに」


「それはゲームの話だろ。現実はそんなに準備良く出来てないよ」


「分かってる。ただ言ってみただけよ」



 もちろんそんな都合の良い迷宮が存在する訳がなく、サラマンダーと知識なしで戦ったらチームが全滅してもおかしくない。僕達は現れる魔物の知識もあり、またルナとカナという魔法使いがいるから普通の装備で戦っても何とかなっているにすぎないのだ。



「……でも目標は決まったの」


「そうですね。挟み打ちに遭わないように気を付けないといけませんが、大きい個体を探して倒しましょう」



 火に対する対策は今後の探索には必要な物であり、必要な素材の出所が分かったので大型のサラマンダーを狙うという目標で決まった。


 そして時間が許す限りこの階層でサラマンダーを狩り続けた。この階層で戦う冒険者が少ないのか、大型に育ったサラマンダーと何回か出会えたので、レア素材が5回も手に入るという大成果を得る。





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