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36話 変身はチート




 結局この依頼を受けた冒険者の中で、最初に僕達が町に着いたのだった。遠回りはしたが、後ろを歩いていた冒険者はおそらくクレーターの様子を見る為に立ち止まっているだろうから、当然と言えば当然の結果ではある。



「ちょっと、持ってきた木材はどこに置けばいいの?」



 最初に着いた為、まだ一本も木がないので置く場所が分からず質問する。



「木はここに置いてくれれば構わんが……いったいどこに置いて来たんだい?」



 どうやら町の中ではそこまで騒ぎにはなっておらず、ちょっとした揺れがあった程度の認識で済んでいる。だが、町の防衛隊長であるウェルダーぐらいは忙しく動いているだろうから、少し申し訳なく思っていた。



「ここに置けばいいんだって。さっさと木を渡して仕事を終わらせるわよ。……ちょっとあんた、驚くといけないから少し後ろを向いていなさい」



 どうやらゼロは森での周りの視線に気づいていたようで、今回は後ろを向かせてショックを和らげようとしたのだ。

 そして強引に後ろを向かせている間に、僕は収納の腕輪から木材を取り出す。



「さ、もういいわよ。鑑定よろしく」


「な、な、な……」



 驚かせないように後ろを向いてもらったのだが、やっぱり突然5本もの木が現れれば無理があった。その様子を見てゼロは、「やっぱり駄目だったか」と可愛く小さく舌を出していた。



「驚かせてすみませんが、鑑定をお願いします」


「……あ、ああ……これは確かに北の森の木だ。それに切り口も綺麗だからそのまま使える、と言うより大工が加工するよりも綺麗ってどういう事だ?」


「とくに特別な事はしてませんが、それは魔法で切ったからでしょうか?」


「ほー魔法を使ったらこんなに綺麗に切れるのか………今度リーザに頼んでみるかな…」



 ルナが切った所を触っておじさんは惚れ惚れしている。



「そんな事よりさっさと鑑定しなさいよ」


「あ、すまん。………ほれ、これが鑑定の結果だ。これをリーザの所に持って行けば報酬を受け取れるぞ」


「ありがとうございます。それでは行きましょうか」



 そして金額が書かれた紙を受け取ったルナは、軽く頭を下げてお礼を言ってリーザの所に向かった。







「リーザさん、依頼は両方とも無事に完了しましたよ」



 冒険者ギルドに入ってリーザの前に着いたルナは、とても含みのある笑顔で話しかけていた。その衣服の汚れとルナから溢れ出る迫力を感じて、なんとなくだが何があったと悟ったリーザは…



「……やっぱり変な事になった?」


(やっぱりって……)



 ルナ達の様子に、リーザは頬に汗を流しながらぎこちない笑顔で問いかける。



「魔法少女、魔法少女と言われながら変な恰好にさせられました」



 ルナは笑顔のままだが、その雰囲気から今だ怒りが収まっていないのが分かる。



「……聞いていた以上の変人だったの」


「よくあんな変人を師匠にしたわね」



 2人はそこまで怒ってはいないのだが、言動などを思い出して呆れ顔をしていた。



「私が命を助けてもらった時には既に成人していましたから、魔法少女とは言われませんでしたが………なにやら生エルフ、生エルフと興奮していました。ただ性的に何かをされる事もありませんでしたし、言動が変な人だっただけですから……」



 どうやらリーザも被害者の1人のようで、恩人である為にある程度の言動には目をつぶって我慢していたようだ。



「それに魔導具を作る腕と魔力を操作する技術が凄かったので、そのまま弟子入りしたのです。あそこを出る時にエルフは貞操を守る物だと言って身を守る魔導具を貰いましたが、何かエルフに対して特別なイメージを持ってる感じでしたね……。

 なのでルナちゃん達が魔法少女と言われたのなら、それに関する魔導具をプレゼントされたのでは?」



 リーザが貰った魔導具は魔力を流すと見えない壁を発生させる物だった。おかげで冒険者として迷宮に潜っていた時はかなり助かったらしい。



「確かに魔導具を貰いましたけど………リーザさんが羨ましいです…」



 リーザの質問にルナは徐々に声を小さくしながら答えた。魔導具の性能だけを言うなら、明らかにルナ達が貰った物の方が優秀で規格外の効果を持っている。ただその時の姿に納得がいっていないだけなのだ。



「あの変人からルナ達はかなり高性能な魔導具を貰ったわ。でもね~……」


「?。何か不都合な事でも?」



 言いだし難そうにしているゼロに、いったい何を貰ったのかと不思議がっているリーザ。



「……私は構わないから見せれるの。……でも見せるなら誰もいない所でないと駄目なの」


「?。なら地下訓練所でもいきますか。今なら誰もいませんし」



 そう言ってリーザとカナは地下に下りていき、しばらくしたら申し訳なさそうな顔をして戻って来た。





「………ルナちゃん、すみませんでした。私の師匠が迷惑をおかけして……」



 どうやらカナの変身を見せてもらい、ルナの姿も言葉で説明されたようで謝ってきた。



「うう……」



 リーザに謝れる事でやはりに恥ずかしい事だったと思ってしまい、ルナは今にも泣きそうな顔をしてしまっている。



「まあ使用MPの関係上、長くは使えないけど効果は破格だし、護身用とするならこれ以上の魔導具はないわよ」


「……確かにそうですけど…」



 ゼロの言いたい事は理解は出来るが納得は出来ない、そんな複雑な気持ちになってしまったルナだった。



「そんなに凄い効果なのですか?」


「……ステータスが2倍になるの」


「そ、そんなに!?……確かに見た目はあれですけど、その効果は優秀ですね」



 カナの説明では足りなかったのでゼロが補足すると、リーザはその破格な性能に驚く。元々かなり高いステータスを持っているのに、更に倍に出来るのだから驚くのは当然だった。



「それに変身する時は魔法で壁を作れば良い訳ですし、正体がばれないからと割り切れば大丈夫ですよ」


「それでも本人が恥ずかしいのは隠せませんよ……」


「…それはそうですが……」



 いくら周りがルナと認識出来なくても本人は見られているので、恥ずかしいものは恥ずかしい。その気持ちはリーザも理解出来るので、これ以上何も言えなくなってしまう。



「……よし!こうなったら迷宮に潜ってスッキリしましょう!服もちょうど汚れているし、体を動かせば気持ちも晴れるわ。それにステータスが上がれば魔導具に頼る必要もなくなるんだしね!」



 このまま話をしていてもルナの気持ちが晴れる事はないと思ったゼロは、迷宮に潜る事でストレス解消を進めたのだ。



「そう…ですね。このままジッとしていても、気持ちが落ち込む一方です。リーザさん、これ木材運搬の修了書です。換金をお願いします」


「ストレス解消に迷宮に潜る人はいないんだけどね………まあ、ルナちゃん達の実力を考えれば大丈夫でしょう」



 そう言って困った顔をしたリーザは、ルナから木材の買い取り表でもある修了書を受け取る。



「な!?……………そうよね、そうですね。貴女達ならこれぐらいの事はしますよね」



 その内容を見て一瞬目を見開いて驚いていたが、ルナ達は非常識なのは今さらなので、これぐらいと勝手に納得して報酬を渡してくれた。


 そして報酬を受け取ったので、僕達は迷宮に向かって行く。


 もちろん既に余裕で昼を過ぎている時間だったので、中層でストレス解消として魔物を倒しているとすぐに凶暴化の始まってしまった。別にこのまま粘る理由もないので、今日は素直に引き返す事にする。






 翌日は朝から迷宮に潜り、下層に着くまで戦闘は極力避けていったので時間に余裕が出来た。



「さあ今日は新しい階層に足を踏み込むわよ!」


「……一気に最下層まで向かうの」


「リーザさんとの約束もありますし、一気に最下層を目指すのは……」



 2人はやる気になっていたが、ルナは約束があるので一応止めようとする。



「そう言えばそんな約束をしたわね。なら14階層までにしておきましょう」


「へー、律儀に約束を守るんだ。てっきりゼロの事だから約束なんて無視して暴れたがると思っていたよ」


「…なるほどね。あんたの中の私ってそんなイメージなんだ……」



 そうしてゼロの手が僕の顔を掴み、力を込める。



「私はこれでも女神なんだから極力約束は守るわよ。まったく……どれだけ乱暴者だと思っているのよ」


「痛っっっ……まったく、そのセリフは僕に攻撃した段階で説得力がないけどね!」



 僕は握られてる顔の痛みに耐えながら文句を言う。



「気のせいよ!さ、変態はほかっておいて下を目指すわよ」



 が、ゼロはあっさり僕の拘束を解き、言葉をまるっきり無視して先に進んで行った。


 そして魔導具を探しながら魔物と戦って行き、14階層に着いてもそれを続けていく。しかしこの階層には新しい魔物が現れないので、ゼロに不満が溜まっている。



「…なんかせっかく新しい階層に来たのに、変わり映えのしない所ね……」


「……拍子抜けなの」


「そうは言っても、パワータイプのミノタウロスと素早いグレートウルフに、空から襲ってくるキラービーの波状攻撃はなかなか脅威だと思うよ」



 明らかにつまらなそうにしている2人だが、いまだ魔物の攻撃は続いていたのだ。結構な数が連続して襲ってくるので、なかなか先には進めないでいる。



「ハヤテさんの言うとおりですよ。しばらくはこの階層で鍛えた方が良いです。なにしろ忙しいほど魔物が来ますから、リーザさんの言っていたチームでの連携などいろいろ試せますし」


「……確かに、色々試してみるの……変身」



 そう言ってカナはペンダントを握り変身してしまう。



「……慣れておかないと、万が一の時に使えないの」



 カナが変身したら戦況は一気に傾いた。なにしろ防御してきたミノタウロスですら、その上からの攻撃で容赦なく吹き飛ばしてしまえたからだ。

 流石に一撃で倒す事は出来なかったが、もう立ち上がる事も出来ないぐらいのダメージを受けたようで、壁にもたれながら動く事が出来ないでいる。ミノタウロスですらそうだったのだからグレートウルフなんて目ではなかった。

 しかしカナは一撃で倒せなかった事に納得がいかなかったようで、



「……攻撃に魔法を混ぜてみるの」



 そう言うと持っていたハンマーが黒く染まっていき、先端がまるで杭のように尖がっていたのだ。カナの闇魔法、シャドーウォールを利用してハンマーの形状を変えたようだ。



「……凄いの……今まで以上に魔法が強く、使いやすくなってるの」



 魔法制御の力が上がっている事に驚いていたカナだったが、すぐに魔物の方に視線を戻し攻撃を始める。元々の力に魔法の力が加わった事で、先程までは何とか生き残っていたミノタウロスもその形状のせいで衝撃を逃がす事が出来ず、ほぼ防御不可能な攻撃になり壁に激突した後は消えていった。


 地上の敵をカナが1人で引き受けてくれたので、ルナはキラービーだけに集中して魔法を放つ事が出来た。なので一区切り着くまでに、そこまでの時間は必要がなかった。



「……やっぱりこの魔導具は優秀なの」



 視界に入る魔物を全て倒したので、カナは満足そうに変身を解く。



「でも僕のMPはごっそり持って行かれたけどね…」



 カナが変身していたのは5分少々だったが、その間に僕のMPは35000程消費されていたのだ。僕のMP自動回復のスキルが発動しているので、既に10000ぐらいのMPは回復しているが、それでもこの魔導具を長時間使い続けるのは不可能なぐらい燃費が悪かった。




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