激レアアイテム『ストーリー・チャート』(1)
何の素材で造られたのかも分からない、高くそびえる塔。
そこが、本日の俺たちが目指すダンジョンだ。
―――そびえる、という説明だけでは不十分な可能性もあるため、一応追加で解説をしていただこう。ティアラから。
「高さは2670メートル。階層数は856―――その頂上に、アイテム『ストーリー・チャート完全版』をドロップするモンスターがいるとか、いないとか」
ストーリー・チャートというアイテムの存在は、バグの申し子こと俺さえも知らなかった。
転移、周囲の散策を終えた転移直後の俺は、正規ルートたる他の道のりを避けて壁抜けをし、魔王城へと到達した。
しかし、ゲームのプログラムが感知した『俺のバグ使用』。全てをショートカットしようとした俺に対して、プログラムはミアというNPCをあてがうことで、おかしくなってしまったストーリーの辻褄を合わせようとしたのである。
そんな中で、不器用ながらも正規のストーリー開拓を続けてきたティアラ。彼女は、最短で最後のダンジョン『魔王城』へ向かった俺とは異なり、有意義な情報を幾らも入手していた。
時折、高い木の隙間からこちらを窺う謎の目線がチラつく森の中を歩く俺。その後方10メートルほどの位置を着いてくる魔法使いティアラ。
何故だか、低級装備、低レベル、そして低戦闘センスの三拍子揃った俺を、モンスターたちが襲って来ないのには、背後にいるティアラさんの存在が大きいのだろう。
基本的に壁抜けのみで、窮地を脱したり、かわしたりということを繰り返してきた俺とは異なり、ティアラには『ジョブ』が与えられている。しかも魔法使いだ。かっけー。
そのため、転移してからの10日余りでティアラのレベルは37にまで達していた。ちなみに、俺は11だ。
絶対に君の方が戦闘的な面で有利だよね。俺なんて、襲いくるモンスターを壁抜けすることくらいしかできないよ?
何しろ、今俺たちが歩みを進めているこの森とて『ダンジョン』の一部。開けた場所にあるものも、この異世界では『ダンジョン』判定らしく、場合によってはその辺にある通路やら道でさえも、モンスターの寝ぐらとして押さえられている―――ということもあるようだ。
俺が『ティアラ、君が前歩いてよ』と情けなく、男らしくもないことを言うと、魔法使いは『何言ってんですか』と、俺に刺すような視線をくれた。
「自分のアイテムストレージの中に何が入っているかも把握していないんですか? そんなんだから腹筋がへにゃへにゃなんですよ―――昨日、私と共有したおじさんのバグについて思い出してください。その話には……」
ティアラが怪訝そうにそこまで話すと、俺の脳内にあれの存在がよぎった。
―――すっかり忘れていた『火炎放射器(無限燃料)』の存在が。
そうだった。前回は色々あってバグ火炎放射器使えないでいたけど、今回は違う。




