相部屋withてぃあら(2)
温かさをはらんだ水の粒がシャワーヘッドから流れ出る。
そして次の瞬間には、俺の冷え切った身体(防具『スケルトン・アーマー』は通気性が良すぎるため)を伝う。
本来であれば、お気に入りソングの一つ二つ熱唱したいところであるが……今の俺にそれは許されない。
今、俺のいるバスルームと薄っぺらな壁一つを挟んで、女魔法使いがリビング部分で茶を啜っているからである。
別に歌っても良い。良いのだが、なんか恥ずかしいじゃん。友達と旅行行って、個室の風呂場で響かせないでしょ? 歌声。それと同じだよ。
しかしこの風呂は良い。宿屋の個室風呂と言うから、どんな狭いシャワールームが出てくるかと心配していたのだが、杞憂に終わったようだ。
およそ6畳ほどのスペースに、一つだけの洗い場(つまり、これほどの広さを有したバスルームを一人で使うことが想定されている)があり、その隣にこれまた巨大な浴槽が。
もしかすると、この部屋自体が『人間用』ではないのか? 会ったことも見たこともないが、巨人みたいな種族がいたりするのだろうか。それならば、異常な高さの天井にも説明がつく。
身体を洗ってから湯船に入ると『効能:体力ゲージ全回復、筋力上昇』とのポップアップが出現。小気味良いサウンドが鳴るのと同時に、身体に力がみなぎる感じがして、つい『うおっ』と声が漏れてしまった。
「これは凄い。ゲームで言うところのセーブポイントみたいなモノか」
みなぎる力を抑えることができず、浴槽内で両脚を曲げ伸ばしてみる。凄い……目算で普段の2倍ほどのパワーが出るぞ。これがバフ効果というヤツなのか?
曲げ伸ばし動作を一定数行うと、マズいことが起きた。
身体全体が、ふわりと浮いたような感覚になり、浴槽から離脱し始めたのだ。
「な、何だこれ!? 新手のモンスターによる攻撃か!? 何が起きて……」
さっきまでしていた行動を思い出した。両脚の曲げ伸ばし運動……
あ、これ壁抜けバグ発生してるや。最悪だ。
俺の身体はするりと浴槽を抜け出し、薄い木製壁一枚で区切られたリビング部分へ移動した。
そこには、当然のごとく一人茶会に舌鼓を打つ魔法使いの姿が。




